「せんせい」の旅行術~小学校教員のための授業に繋がる旅のススメ~ 【マスターヨーダの喫茶室】

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山田隆弘
マスターヨーダの喫茶室~

1学期を終えて、夏季休業に入ります。この休みにちょっと疲れた羽を休めましょう。休みを利用して旅をするのもいいし、コロナ感染予防で遠距離を避け、近場に出かけるのもいいでしょう。それも難しい場合は、シミュレーションで仮想の旅を考えたり、将来のために旅行プランを立てたりするのもいいですね。いずれにしてもちょっとした旅を楽しんでほしいです。

ところで、わたしが学生時代に教育実習で指導していただいた先生は、社会科教育に熱心な先生でした。最後は県の社会科教育の推進リーダーになられました。実習期間中、いろいろなお話をお伺いしましたが、その中で特に印象に残っていることがあります。先生は、こんなことをおっしゃいました。

「わたしはね。社会科の授業で扱うところは、必ずこの目で確かめないと気が済まないんだよ。家族には悪いんだけど、わたしのペースで計画して、家族と一緒に授業で扱うところに旅に出かけることにしているんだ」

わたしは、なんてすばらしい考えなんだと思いました。

どうせ出かけるなら、ただのレジャーやリフレッシュだけでなく、教材研究も兼ねることができれば一石二鳥です! 「せんせい」の旅というのは、「あしたの授業に結びつく旅」というのがポイントです。これを頭の隅においておきましょう。

今回は、旅のどストライクの社会科とは別に、国語の授業に関連する旅を考えてみます。

1 教科書に出てくるところへ

①国語の教材研究

国語の物語教材の授業をするとき、作者の来歴や背景などをきちんと把握しておかないと、深い読みができません。しっかりした授業をするには、徹底的な教材研究が必要です。国語を自分の教科として重点的に取り組んでいる「せんせい」は、よく「作者研究」をやります。教科書に掲載されている一作品だけの教材研究をしても主題がよく把握できないからです。作者の育った環境、置かれていた環境、前後の作品などを研究していきますが、文字情報だけではなかなかわかりません。そこで、ぜひ、作者のゆかりの記念館などを訪れたり、生誕の地の環境などを感じたりしてほしいと思います。作者の情報がたくさんつまった記念館では、作者に関する研究資料なども購入することができます。絵はがきやカードなどの小物は、授業の「つかみ」に利用することができます。半日くらい記念館にじっくりいて、多くのことを吸収してほしいです。

光村図書出版の教科書から、記念館のある作者のゆかりの地で旅先を考えてみました。

【6年生】
○『やまなし』(宮沢賢治)
 宮沢賢治記念館(岩手県花巻市)
○『海の命』(立松和平)
 宇都宮市立南図書館 立松和平文庫(栃木県宇都宮市)

【5年生】
○『たずねびと』(朽木祥)
 関連する場所;広島平和記念資料館・平和記念公園・原爆ドームなど(広島県広島市)
○『からたちの花』
 北原白秋記念館(福岡県柳川市)
○『やなせたかし ― アンパンマンの勇気』(梯久美子)
 やなせたかし記念館(高知県香味市)
○『大造じいさんとガン』(椋鳩十)
 椋鳩十記念館・記念図書館(長野県下伊那郡喬木村)
   椋鳩十文学記念館(鹿児島県姶良市)
 椋鳩十さんは、生まれが長野県、生活した場所が鹿児島県です。

【4年生】
○『ごんぎつね』(新美南吉)
 新美南吉記念館(愛知県半田市)

【3年生】
○『わたしと小鳥とすずと』(金子みすゞ)
 金子みすゞ記念館(山口県長門市)

②「○○○めぐり(地名・エリア)」を計画する

授業で扱ってみたい単元(作品)を一つ決め、主となる旅先を決めます。さらに旅の期間を決めたら、あとは付随的にどんなところを見ていけばいいか周辺部を考えていきます。

例えば、6年生の国語で、『やまなし』を授業するために、宮沢賢治について研究することをメインテーマに考えてみます。必然的に東北地方を旅することになります。動線を考えて宮沢賢治やサトウハチロー、土井晩翠を訪ねてみることにします。つまり、北から南への動きをします。松島では、松尾芭蕉などの足跡にも触れることができます。伊達政宗が創建した瑞巌寺などで歴史を感じるのもいいですね。そうすると、題して「南東北太平洋沿岸文学めぐり」といったちょっとかっこいい旅ができそうです。

<モデルプラン>
【一日目】 居住地 → 岩手県花巻市 → 宮沢賢治記念館 → 花巻温泉(宿泊)
【二日目】 花巻 → 北上 → サトウハチロー記念館 → 仙台へ移動 → 仙台駅 → 晩翠草堂 → 青葉城 → 仙台駅 → 松島温泉(宿泊)
【三日目】 松島観光 → 居住地へ

このようにとりあえず目的地と宿泊地を決めれば、あとはその骨格にどんなことを付加していけばいいかですね。「○○○(地名・エリア)めぐり」を考えるのはとても楽しいです。

2 まずは行ってみたいところ(目的地)を一つ決めて

わたしが小学生の頃、小学生向けのクイズ番組がありました。なぜか、頭に残っています。細かいことは覚えていませんが、再現してみると次のようなものでした。

4人の友だちで出かけます。
A地点(居住地)からB地点(目的地)へ移動します。
○電車を利用すると480円で15分ですが、駅からB地点まで10分歩きます。
○バスを利用すると600円で20分でB地点の近くまで行き、バス停から3分歩きます。  
○タクシーを利用すると18分で、B地点まで直行で行けます。2000円かかります。
どんな方法で行くのがいいでしょうか?

わたしはこのクイズを見た時、電車で行けば安い!絶対電車だと思いました。まあ、時間的にはバスもありかなあ、歩く距離もないし…、と思いました。でもでも、答えは「タクシー」でした。なぜ?なぜ?と思いました。

それは、4人で行くというところがキーポイントでした。2000円を4で割れば、500円です。しかも18分でかなり早く着くことができます。それに気づきませんでした。小学生でも4人の力を合わせれば、タクシーにも乗ることができるんだ!

このクイズのおかげで、以降の人生においてかなり旅行プランづくりに興味をもつことになりました。

旅の計画の大きな視点は、

時間 …どれだけの時間が与えられているか
経費 …どれだけの経費が使えるか
快適さ…どれだけストレスなく旅ができるか

の3つです。

どれを優先するかでルート、交通手段や宿泊先、または見学地、体験地が決まります。わたしたち教員は、なかなか長い期間の旅ができません。ある程度の旅の資金はあってもそんなに大名旅行はできません。そして、まだ若い人ならいいですが、一定の年齢に達していいると夜行バスや各駅停車の車両もきびしくなります。自分が今置かれている状況や旅の道連れは誰かなど総合的に判断して決めていきたいものです。

3 「せんせい」の旅行術

①情報を集めて早めのプランニング

最近は、旅行社の窓口が減ってきました。窓口でじっくりスタッフの方と相談して旅程を決めていくことができにくくなってきたのです。つまり、旅行のプランニングも、ネットが主流になってきたということです。自分で探してさまざまなものから旅の情報を得ていきたいですね。

わたしは年齢のせいか、紙ベースの情報誌がほしいので、エリアを決めたら、『るるぶ』(JTBパブリッシング)、『まっぷる』(昭文社)などを購入します。デジタル情報だけよりもイメージが広がっていきます。

移動は、レンタカーにするか、電車(特別切符も含む)にするか、飛行機を使うか居住地や人数などによって違いますが、家族や友人と一緒の旅行の場合は、「一人あたり」の経費を考えていきたいですね。飛行機やJRのパック料金だと別々に買うよりも安くなることが多いです。最近は、ネット手配が普及してきたため、固定的な事前予約パック割引の特典が少なくなってきました。できるだけ早めにネット予約でチケットをとると安くなるという傾向があります。信じられない代金で格安のチケットを入手することもできます。早めのプランニングをお奨めします。

わたしは、大手航空会社二社系列のマイル、JRのポイントを貯めているので、場合によっては思い切ってマイルやポイントを使ったチケットを手配することもあります。あれこれ工夫しながら旅を考えるのは意外に楽しいですね。

宿泊は、最近はネット旅行社の比較サイトが便利ですので、それを使って予約するのもいいです。ただ、見逃せないのが、

○共済組合の直営旅館、提携旅館
○教育公務員弘済会の宿泊補助チケット
○都道府県や市町村の公務員が利用できる宿泊施設や割引チケット

などです。これらを利用すると、思いのほか安く宿泊できることがありますので、「せんせい」の旅の方法の一つとして把握しておきたいです。

②いろいろな旅の目的やカタチ

ところで、今まで接してきた同僚の「せんせい」方の旅行術をみると、次のようなものがありました。

 『今年の大河ドラマ』の関連地を巡り社会科の授業に生かす。
 自転車やバイクでぶらり旅をする。
 毎年決まった各種研究会や附属学校が主催する夏季研修セミナーを受講し、そのスキマ時間や周辺で旅をする。
 各種団体が企画する教員のための短期語学留学に参加する。
 修学旅行、社会科見学、自然体験学習などの宿泊学習の下見を大人バージョンでやってみる。

どれも魅力的な旅ですね。地方に住んでいる教員は、特に「ウ」を選択すると、家族に胸をはって堂々と都市部に出かけ、スポーツ観戦やライブ、美術館なども楽しめます。けっこうこういった方は多いような気がします。もちろん、授業づくりとは関係なく、純粋にリフレッシュをするということもいいですね。なぜか、そういったアウトドア体験旅の経験は、後で学校教育や授業に生きてくるものです。

旅行する先生
イラスト/したらみ

③インドアでも

夏以降にけっこうハードな仕事が待っている時があります。例えば、大きな研究大会の指導案作成をしなければならない、研究についてまとめなければならない、発表原稿を作らなければならない、新しい教員免許を取得しなければならないなどという時ですね。そういったことに直面する時、ちょっとリッチなホテルで『ひとり合宿』をするという方もいます。わたしもビジネスホテルにこもって仕事をしたことがあります。家族の理解のもと、パソコンや資料を持ち込んで、エアコンが効いた部屋で集中して過ごせば、仕事もはかどることでしょう。リッチなホテルだと、ホテルプールでひと泳ぎ、疲れた身体を癒やしてもらうマッサージを受けることもできます。

さて、2学期、3学期でちょっと力を入れてみる単元は決まりましたか? ネタ集め、教材研究からスタートする旅もいいものです。自費で学び、それを授業づくりなどの仕事に生かすというのは、先輩方から受け継がれた教員文化の一つだと思います。夏休みにいい旅を計画し、たくさんの体験とその土地土地の人情にふれていただければうれしいです。「せんせい」はどんどん旅をすべきです。これからの人生にもきっと役に立ちます。

特に若い「せんせい」、より遠くへ、より長く、より多くの出会いのある旅を!!


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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。

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