『空中ゴミ箱』&『あまった紙様BOX』でゴミゼロ教室【どの子も安心して学べる1年生の教室環境 #6】
学校にわくわくしながらも同時に不安を抱える1年生が、安心して学べる「教室環境づくり」について提案する連載(月1回公開)です。『教室ギア55』(東洋館出版社)や『日常アレンジ大全』(明治図書出版) などの著書をもつ、教室環境づくりのプロフェッショナル〈鈴木優太先生〉が、さまざまなアイデアを紹介していきます。
第6回は、教室のゴミをゼロにする楽しいアイデアを紹介します。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。
目次
教室のゴミを画期的に減らす2つのアイテム
ゴミや紙類が教室の床に落ちていませんか?
「ゴミはゴミ箱!」
「紙は紙箱!」
このように「物の住所」が決まっていない教室は要注意です。
荒れの兆しは、教室の乱雑さに顕著に表れます。反対に、片付いた教室を維持できれば、荒れとは縁遠い教室になるとも言い換えられます。そして、あながちこれが間違いではない感覚が、現場で働くどの先生方にもきっとあるはずです。
「物の住所」を定める『空中ゴミ箱』と『あまった紙様(かみさま)BOX』を教室に設けてみましょう。
「量産段ボールゴミ箱」を複数設置し、徐々に減らす
サグラダ・ファミリアで有名な世界的な観光地スペイン・バルセロナを訪れたことがあります。美しい街並みに加え、道にほとんどゴミが落ちていないことに驚きました。路地や道路にとにかくたくさんの「ゴミ箱」があることがとても印象的でした。
散らからない教室にすることはとても簡単です。そうです、まずは、ゴミ箱の数を増やせば良いのです。まずは…と前置きしたのは、最終的には必要最低数に減らしていく実践だからです。
どの学校にもある「A4用紙の空き段ボール箱」を印刷室から持ってきます。ゴミ袋をかければ、ゴミ箱になります。何個でも手作りすることができます。私は、これを「量産段ボールゴミ箱」と呼んでいます。
B5用紙の空き段ボール箱でも可能ですが、「邪魔かも」と違和感を感じるぐらいの大きさと数があった方が、「ゴミはゴミ箱に!」という意識を子供たちに促すことができます。
例えば、班の近くに1つずつ、計7個ものゴミ箱を教室に置いたことがあります。
子供たちによる話合い活動を経て、「ゴミゼロキャンペーン」と銘打ち、期間を決めて取り組むと効果的です。
自分のゴミも、自分のものではないゴミも、ゴミ箱がそばにあると捨てることがおっくうになりません。
「ゴミはゴミ箱に!」という意識付けに手応えを感じたら、7個から5個、5個から3個…とゴミ箱の数を減らしていきます。
掃除を効率化する『空中ゴミ箱』
「ゴミゼロキャンペーン」に子どもたちと取り組んだ結果、最終的には、教室の前方と後方に「2つ」のゴミ箱があると便利だということになりました。
さらに、ゴミ箱を「宙に浮かせて」設置してみると「邪魔にならない!」ことを実感できます。
『空中ゴミ箱』です。
学校での掃除の手順は、概ね次の4行程です。
①運ぶ→②掃く→③拭く→④戻す
『空中ゴミ箱』によって、床に物を置かないようにすることで、①ゴミ箱を運ぶ&④ゴミ箱を戻す手順を省略できます。ゴミ箱に触れることなく、②ほうきで掃く・③雑巾で拭くことができるので、掃除が圧倒的に効率良く行えるようになります。やってみると、その効果の大きさに驚くかもしれません。
そして、「床には物がない!」というメッセージを、子供たちに印象付ける点がポイントです。床に物が置いていないこと、そして、落ちていないことが教室のルールを超えた「文化」として育まれていきます。
「床に物があると…いずい!(仙台弁で「居心地が悪い」の意味)」という境地に至るのが、習慣化できている証です。
『空中ゴミ箱』設置例
『空中ゴミ箱』の設置の仕方の一例を紹介します。
①ねじ穴のついたフック(100円ショップで2個100円で購入)を、掲示板や木製の扉や柱に画鋲で止める。(ねじ止めするとさらにに頑丈になる)
②耐荷重を増すため、ゴミ箱をガムテープで補強する。(補強するのは③で開ける穴の約5センチ四方)
③フックに引っかけられるように、ゴミ箱のガムテープで補強した場所の中心に穴を開ける。
紙類は一括『あまった紙様BOX』で整理
「A4用紙の空き段ボール箱」を、『あまった紙様BOX』として教室に設置します。名前のとおり、余ったり、再利用したりできる紙をこのBOXに集めます。
これは「1つだけ」設置します。教室の全ての紙類が「1か所」に集まるので、子供たちがもう1枚必要なときには、ここさえ見ればよいためです。
ペーパーレスとはまだ程遠い学校現場では、配付物がない日はありません。放っておくと教室は大量の紙、紙、紙!であふれかえります。
ゴミ類も余った紙類も、子供たち自身の手によって、あるべき場所に運ぶことのできる「環境」と「ルール」を徹底していくことが、落ち着いた教室への第一歩です。「物の住所」を、しっかりと定めることから始めてみましょう。
参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書)