連絡表を温かいギフトにしよう ~日々の記録と習慣づけが財産です~ 【マスターヨーダの喫茶室】

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山田隆弘
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学期末に保護者におわたしする連絡表。地域によっては、通信簿、通知箋、通知簿、連絡票などいろいろないい方があります。学校独自のネーミングで、例えば『あゆみ』などとしているところもあります。また、学校名を使っているところもあります。厳密にいうと「表」と「票」は違いますが、ほぼ同じ意味合いで使われています。ここでは、一般的に連絡表とします。

連絡表作成は若手の先生方、特に初任者にとっては、大きなプレッシャーになります。どんな形式か、どれだけの時間がかかるのか、何をどんなふうに評価するのか、どんな視点やコツがあるのか、テンプレートなどは使えるのかなどなどですね。初任者にとっては、勤務校の連絡表はまだ見たことも触れたこともないです。どう対応するか不安が募るはずです。さてさて、ここでは特に「所見」作成に備えての取り組みについて考えていきたいです。

1 長・中・短期、3つの時間軸でみとろう

教科については、ある程度ワークテストの結果、児童作品、発表のようすなどで評価することができます。しかし、行動のようすについては、適宜記録をしておく必要があります。いざ、所見を書くときになって、どうすればいいか困ることになります。記録には、3つの種類を考えておくようにするといいですね。

ア 長期計画で

担任は、4月に児童と出会ってから学期末まで、毎日顔を合わせます。あまりに接する時間が多く、情報がたくさんあるので、所見で何を取り入れたらいいか選べなくなることがあります。また、けっこう人数が多い教室であまり目立たない児童は、所見を書く時になって、何を書こうかと困ることがあります。

そういったことをなくすために、児童との出会いの時期から、記録をきちんととっておくことが必要です。以前は、ノートにそれぞれの児童のページをつくり書いていくといったかなりハードルの高い作業しかなかったです。それで、なかなか充実したものにはならなかったです。

最近は、「付箋紙メモ」を貼り付けたり、「音声入力」をしたり、パソコンを起動しておいてさっと「打ち込み」をしたりとさまざまな方法で記録をとることができます。

さらには、校務支援ソフトなどを導入している区市町村は、総合病院の複数のドクターが1人の患者さんのカルテに診療診察結果を書き入れてほかのドクターと共有化していくことと同じようなことができます。わたしの勤務地でもこういったシェアシステムができつつあり、1人の児童の「今日の様子」というファイルに放課後などに書き入れています。今後拡大すると思うので、ぜひ活用していきたいです。

 イ 中期計画で

以前は、デジタルカメラがなく、板書の記録や児童の作品、学級掲示環境の記録など気軽に画像におさめることができませんでした。一般のカメラで撮影し、お金をかけて写真屋さんで現像してもらい、手に入るのは数日後でした。しかもぼけていて利用できないものも多かったです。そして、デジタルカメラが出始めの頃は、価格も高く画質の解像度も悪いために、ほとんど記録としては使えませんでした。今では、中古や旧型機種だと使い捨て感覚の値段で手に入ります。これを使わない手はありません。国語の学習で書いた作文、生活科や社会科での見学学習へのお礼状、図工で完成した作品、児童の渾身のノート、係活動の記録などなどデジタルカメラに入れておけば、記録と記憶になります。そして、所見を書くときの大きなネタにもなります。 

ウ 短期計画で

さて、連絡表作成、所見を書く段になって、ああこの子はよくとらえていなかった。まだまだネタが足りないというときは、3つの方法があります。

・対象の児童と深くかかわる日(時間)を設定する
一日、担任がしっかりと目を向け、そのまなざしを感じてくれるまでになれば、なおいいですね。対象児童の知られざる側面をみとることができます。一日が無理なら、半日でも、2時間でもいいです。しっかりととらえていきたいですね。

・自己評価シート(自分PRシート)を作成する
学期のがんばりについて、各教科、行事への取り組み、行動などについて自分のがんばりを書くシートを作成し、書いてもらいます。振り返りにもなり、一石二鳥です。コメントを入れ、保存しておきポートフォリオ化して学年の終わりに返すということもいいですね。こういったシートは所見のネタの宝庫です。

・お友だちシートを作成する
がんばったお友だちとして、児童から書いてもらうのもいいですね。ただ、自由に書くと目立つ児童ばかりに集中するので、隣の席の児童は必ず書くというような条件をつけるといいですね。さらには、学年のほかの担任や教科担任、養護教諭などから対象児童について伺うのもいいかもしれません。

2 管理職の関門を超える【アイウエオ】作戦を実施しよう

連絡表作成の時期に若手の先生と話をしていた時、おもしろいことを伺いました。

「わたしは一生懸命に所見を書いて提出したのですけど、点検していただいて返ってきたら、まったく別の物になっていました(笑)」

連絡表所見あるあるですね。わたしも20年くらい点検者の立場にいました。最初は、チェックすることがたくさんあったのに、学年末ではほとんど付箋や修正事項がなくなっている先生が多かったです。だいたい次のようなチェックポイント【アイウエオ】があります。

ア 誤った字や形(誤字脱字がないか、主語と述語のねじれはないか、文体の統一)
イ 意味・意図(担任の気持ちが伝わってくるか)
ウ うっとり(表現にあたたかみがあるか)
エ エビデンス(所見の根拠や裏付けを示しているか)
オ 親向け(保護者向けの表現になっているか)

管理職の関門をくぐるには、まず、この【アイウエオ】のポイントをしっかりつかむことが必要です。チェック付箋が少なくなってきている先生は、このポイントを自分のスキルに取り入れているからです。管理職の関門といっても意地悪で関門を通らせないわけではありません。保護者の皆さんからの「ここ、間違っていませんか?」というご指摘をなくすこと、また「これはどういうことですか?」という問合せがあっても、きちんと対応できるようにすることが裏の意味での大きなポイントです。たくさん修正されたとしても恨んではいけません。

3 教師としての視点をもとう by三面鏡

昭和の時代から平成の時代にかけて、大きな評価の転換期がありました。機械的、客観的に実施していた相対評価を基盤とした評価から、絶対評価を基盤として、児童の「よさ」を前面に出していこうという流れです。

つまり、ひとつの児童の姿があるとすると、それをネガティブにとらえて、ネガティブ面を表記し、改善していこうということではなく、ポジティブにとらえて、その姿を「よさ」としてみていこうという流れです。人格形成においては、とてもいい方向です。

つまり、三面鏡的に見ていこうというものです。三面鏡というと最近はだいぶなくなってきましたが…。三面鏡のいいところは、正面から見た姿、右から見た姿、左から見た姿といろいろな方向から見ることができるところです。真っ正面から見たその児童の姿そのままの姿、そしてそれを課題としてとらえマイナスイメージで見る姿、それを未来志向で「よさ」としてプラスイメージでとらえる姿と三面で見ていくことです。

所見を書く際にもこの見方が必要で、最終的にどんな表現がいいのかを考えていきたいです。一概には言えませんが、基本的には、

①ポジティブな表現
②こうすればよりよくなるという方向性
③担任の思いやメッセージ

などの要素が入れば連絡表が素敵なギフトになることでしょう。

所見を書く先生にコーヒーを差し入れるヨーダ先生
イラスト/したらみ

また、特別支援教育での連絡表所見欄のスペースは広いです。日々のエピソードをたくさん綴ることができます。連絡表は保護者と担任がその児童の成長を語り合うセッションの場、フォーラムの場という意味合いがより強いです。保護者の皆さんは担任からのギフトを大切に保存しています。

4 日頃から習慣づけよう

① 所見は寝かせる(早めに書いて、後で読み返す)

よく文章を書いた時は、「3日寝かせろ」と言います。その時は、うまく書けたなと思っても、あとあと読みにくい表現を発見します。必ずしも「3日」でなくてもいいです。ここは「後日」「後で」ということですね。後日読んでみると、「あれっ、ここ変だな。」と思うことがよくあるものです。わたしは、提出すべき文書、文章がある場合は、やはり3日寝かせ読み返して修正し、そして何人かの方に読んでもらい、また修正し完成させるということをしています。評価二期制の学校では、前期分をゆとりのある夏期休業中に下書きを作成しておくことを奨励している学校もあります。熟成させておいて、おわたしするまでにどんどん修正はできますので、とりあえずということで早めに書いておきたいです。

このように腰を据えて推敲するクセをつけるようにすることが所見作成でだけでなく、文章修行の大きな要素です。日頃から習慣づけたいですね。

② 書き慣れ…多読多作主義で

新聞(特にコラム記事)をよく読む。たくさん学級通信などを書いている。つまり、『多読多作』をしている先生の所見はできがいいという傾向があります。常日頃から文章作成力を鍛えておく必要があります。現代は、動画視聴全盛期ですし、短い分量のメール文でのやりとりやスタンプは生活の一部になっています。でも、これは所見作成スキルにはなかなかつながらないです。『多読多作』を心がけていかなければならないです。 本格的に取り組んでみたいという方は、新聞社のコラムを書き写す専用のノートが販売されています。全国紙ですと、読売新聞の「編集手帳」、朝日新聞の「天声人語」の書き写しノートです。わたしは、文書修行のために、やってみた時期があります。大人の「書写の時間」として、取り組んでみるのもいいですね。

母の日、父の日、あるいは両親の誕生日、敬老の日に祖父母にプレゼントをしますね。親や祖父母は、その品物よりもどのようにしてそのプレゼントを選んだか、どんな気持ちがこめられているか、あるいはどんなメッセージが添えてあるかということにこそうれしさを感じます。連絡表は、そのメッセージにあたるものです。担任がどんな思いで書いたかが伝わればそれで十分です。伝えるにはそれなりの準備と加工(デコレーション)が必要です。連絡表という期末のギフトに早いうちから取り組みたいものです。


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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。

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