【相談募集中】何のアドバイスもできない部活動の主顧問になり、苦しい
部活動改革については、現在スポーツ庁が急ピッチで進めているものの、課題は山積。現状の教育現場では「誰かがやらないといけないから」と運動部の主顧問を引き受ける先生も多いようです。今回の相談者さんもそのようなケースで、運動が苦手で辛い毎日とのこと。「みん教相談室」に届いたお悩みへの、元中学校校長、「全国教育交流会」代表の中野敏治 先生からのアドバイスをシェアします。
目次
Q.何のアドバイスもできない部活動の主顧問になり、苦しい
公立中学校で担任をしています。今年度初めて運動部の主顧問になりました。教師として5年ほど働いてきたのですが、ずっと副顧問でした。昔からずっと吹奏楽部に所属していて、社会人になった今も続けているので吹奏楽部を希望していました。しかし、主顧問になれる人がおらず、私に話がきました。誰かがやらないといけない、と言い聞かせて引き受けましたが、毎日苦しいです。
毎日部活に行きますが、アドバイスもできずただ見守ることしかできず、自分の存在意義すら見失い、消えたくなります。そんな気持ちが部活の時間ずっと襲ってきます。部活の大会で監督席に座らされ、全く分からないなか試合を見て、何のアドバイスもできず、ただ精神的に辛くなります。さらに主顧問は自動的に大会の専門部に入れられて大会運営を手伝わないといけません。
子どもたちが素人の私を受け入れてくれているのが救いですが、私自身が子どもたちを指導できない自分を嫌いになり、自信もなく、なんでこんなことしているんだろうと自問自答してしまいます。一緒にその競技を練習すれば良いと言われることもあります。でも、運動が苦手でずっと文化部の私にはハードルが高いし、やってみたいとも思いません。部活をやりたくないとは同僚にも言い出せず、どこに相談したらよいかも分かりません。
私は教科を教えるために教師になりました。もっと教科の準備や研究をする時間が欲しい。学級の子どもたちのために使う時間がほしい。少なくとも、自分の能力を活かして教えられる部活の担当なら楽しいはずなのに……、と思ってしまいます。
部活動のしくみを変えて欲しい、切実にそう思っています。こういう気持ちを一つの意見として伝えられる場所や方法はあるのでしょうか。(ベア先生・20代女性)
A.部員たち同士でアドバイスし合い、顧問はそれを見守る形に
部活動の問題は、教員の勤務状況の観点からも大きな課題だと思っています。働き方改革が騒がれている中で、勤務時間外にも行われている部活動。また、生徒の減少により学級数も減り、教員数も減ってきている中でも部活動の数はさほど減らず、主顧問を掛け持ちでいくつか持つ教員も出てきています。
集団競技では、部員数が少なくてチームがつくれず、他校との合同チームで大会に出る事態も起きています。大会の時だけ一緒になるチームでは、チームプレイどころではありません。また、競技人数ぴったりのチームでは、一人が体調を壊して試合に参加できなくなれば、棄権扱いになることもあります。さらに、学校の部活動ではなく地域のクラブチームなどに所属する生徒も増えていますので、学校内での団体種目の部活動は成り立たなくなってきているのが現状です。
まずは、各学校や各市町村教育委員会では「部活動のガイドライン」をつくっていると思いますので、確認してみてください。
そして問題は、自分の専門でない分野の部活動の主顧問になったことで、部員にも申し訳ない気持ちになり、やりがいも薄れていることだと思います。
おすすめしたいのは、先生ができることとできないことを、新年度に部員や保護者に話してみることです。当然、保護者からの意見も出ると思いますので、部活動担当教師や管理職に立ち会ってもらうこともできると思います。
実は、私も同じ経験があります。
未経験の運動部の主顧問を、転勤したばかりの学校で任されたのです。生徒との関係性もできていない中で、そのスポーツのルールも知らず、練習方法もわからず、自分にできないことを生徒に指示することに後ろめたさを感じていました。
そこで私は、部活動保護者会で、ありのままを話すことにしました。このスポーツの経験がないこと、私にできることは部員に寄り添うこと、部員にはそんな中でも良い思い出をつくってほしいこと。
練習方法もわからない私がしたことは、そのスポーツをよく知っている学校への合同練習のお願いです。中学校だけでなく、高等学校にも行きました。生徒は他校の生徒の中に入って、一緒に練習をしました。学校に戻ると、部長を中心に部員同士で相談し、練習を組んでいました。そして主顧問の私に練習メニューを見せ、確認後に練習を始めるようになりました。その繰り返しでした。
こうなると「顧問がいなくてもよいのでは?」と思いがちですが、練習の場に顧問がいるだけで、部員は違うものです。
アドバイスに関しても、先生がしなければならないと思い込まず、部員同士で行うようにしてもよいのです。顧問は精神的なアドバイスのみとし、技術面は生徒同士で行うこともできます。そうすることで、例えば、試合をしている部員だけでなく、その試合を見ている部員も、「自分ならこうするかな」とか「この部分は変えた方がいいかな」などと考えるようになります。練習の時には、最後にミーティングを行い、そこで一人一言ずつ振り返りとアドバイスを伝え合ってはどうでしょうか。これは学級経営にも似ています。
相談内容から、ベア先生は、生徒からの信頼は厚いように感じます。それは先生が、部活動以外で生徒と熱心に関わっているからだと思います。
運動部の目的は「勝つこと」と思いがちですが、そうではなく、「勝つためにみんなで努力すること」です。「勝つ」のが目標という結果主義から、「努力する」という過程を大切にする部活動にしていきたいものです。学級経営においても、体育祭や合唱コンクールの目標は「優勝」としながら、担任はそれまでの過程を大切にします。問題が起きても、その問題を解決することで学級が成長していくのです。
部員同士が支え合い、声を掛け合い、成長しあっていく姿を、部活動の顧問として見守るという形でよいと思います。「こうしなければならない」ということはありません。先生のできる範囲で工夫し、無理なく、部活動に関わっていってはどうでしょうか。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。