集合写真で保護者含めた一体感を印象づける【あたらしい学校を創造する #38】

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あたらしい学校を創造する〜元公立小学校教員・蓑手章吾の学校づくり
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HILLOCK初等部スクールディレクター

蓑手章吾

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。

今回は、入学イベントについてのお話です。

連載【あたらしい学校を創造する ~元公立小学校教員の挑戦~】
蓑手章吾(HILLOCK諸島部スクールディレクター)

いよいよ開校! 式典ではなくイベントでスタート

本年4月、ヒロック初等部が開校し、早くも2か月が過ぎました。慌ただしく過ぎた4月は、驚きと発見の連続でした。今回はヒロックの入学イベントの模様をお話しします。

ヒロックの入学イベントが行われたのは2022年4月5日。新1年生から3年生までの18人が入学しました。公立小学校を辞めてから1年間、設立準備に勤しんできましたが、ようやくまた先生(ヒロックでは、ヒマラヤ登山のガイドを意味する言葉から「シェルパ」と呼んでいる)として戻ってきた日々の中で、「ああ、自分は根っからの教師なのだな」という感慨が込み上げてきました。

それというのも設立準備の1年、学校現場にいない自分はどうもしっくりこなかったからです。子供がいること、学ぶ場所があること、そしてそこに子供の成長があるということが、当たり前でないことを改めて感じました。だから、入学イベントで子供たちを迎え入れたときには、うれしい気持ちでいっぱいでした。

ヒロックでは「入学式」ではなく「入学イベント」と呼ぶことにしました。校長や来賓が話をするといった、式典のような堅苦しいものをやりたくなかったんです。場所は室内ではなく砧公園。集合写真を見てもらえればわかるように、子供や保護者の服装も自由です。フォーマルな子もいれば、カジュアルな子もいました。

そして前回もお話ししたように、スクールの旗を完成させました。事前に「ヒロック2022」と養生テープで貼っておいた旗に自由にペインティングしておきました。入学イベント当日に、保護者を含む参加者全員でサインを書き込んで、最後に養生テープをはがすと「ヒロック2022」の文字が浮かび上がるという仕掛けです。名前の横には自分の好きなものもちょこっと書いた子もいました。

満開の桜の木の前で、旗を掲げながら2種類の記念写真を撮りました。僕らシェルパと子供のみの写真と、それに保護者も加わった写真です。

教員と保護者も含めた「みんなのスクール」という印象づけ

入学イベントのねらいは「自分たちは2022年の発足メンバーである」「このメンバーで1年間を過ごすんだ」というのを印象づけること。その意味合いも込めて、僕らと子供と保護者のサインをみんなで書きこんだのでした。

家族ごとの写真も撮ってプレゼントし、またスクールにも掲示することにしました。それは、子供たちだけではなく保護者も含めてみんなのスクールなのだということを、子供たちにも知ってもらいたいからです。子供たちが「○○ちゃんのお父さんやお母さんはこういう人」ということをわかるようにしたいという意味もあります。

保護者のみなさんにも、事あるごとに「スクールにかかわってください」とお願いしています。子供たちが友達の親の顔を知っている方が、保護者もスクールに来やすいし、子供たちも友達のお父さんお母さんに会えるとうれしいだろうと思っています。

年を経れば、親子の距離感も変わってくるでしょう。入学イベントでは親子でジャンプして写真に撮られていた子が、高学年になったら手をつなぐのが恥ずかしくなっているかもしれない。だからこそ、この旗づくりと記念写真は、毎年の恒例行事にしたいと考えています。そうすると、1年生からの子であれば、卒業までの6年間で記念写真が6年分溜まります。一種の定点観測写真となるわけですね。振り返って成長を実感できるよすがになるし、成長記録としてポートフォリオの表紙を飾ることもできそうです。 記念写真を見ると、みんな本当にいい表情をしています。この子たちを迎えてのこれからのスクールのことを考えると、背筋が伸びる思いです。

〈続く〉

蓑手章吾

蓑手章吾●みのて・しょうご 2022年4月に世田谷に開校したオルタナティブスクール「HILLOCK初等部」のスクール・ディレクター(校長)。元公立小学校教員で、教員歴は14年。専門教科は国語で、教師道場修了。特別活動や生活科・総合的な学習の時間についても専門的に学ぶ。特別支援学校でのインクルーシブ教育や、発達の系統性、乳幼児心理学に関心をもち、教鞭を持つ傍ら大学院にも通い、人間発達プログラムで修士修了。特別支援2種免許を所有。プログラミング教育で全国的に有名な東京都小金井市立前原小学校では、研究主任やICT主任を歴任。著書に『子どもが自ら学び出す! 自由進度学習のはじめかた』(学陽書房)、共著に『知的障害特別支援学校のICTを活用した授業づくり』(ジアース教育新社)、『before&afterでわかる! 研究主任の仕事アップデート』(明治図書出版)など。

取材・構成/高瀬康志 写真提供/HILLOCK

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