理科教材購入のタイミング “消耗品の事前準備”【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

理科の薬品や消耗品の購入は、学校によって異なります。学年で購入するものもあれば、学校で一括購入のため、理科主任の先生が取りまとめて購入するなど……。授業で使う道具が壊れていないか、残量がどれだけあって、自分たちでこれからどれだけ使う予定なのか、また、購入できる予算はどれだけあるのか……といったことから購入数を確認したい。購入数によって、授業のやり方も変わります。一度、薬品を含む理科で使用する消耗品の購入がどのようになっているのか、確認してみましょう。
優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような“ツボ”が見られるでしょうか?

執筆/東京都公立小学校主幹教諭・蒲生友作
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

理科教材購入のタイミング “消耗品の事前準備”

理科の授業を行っていく上で観察・実験を行う準備をします。単元の学習をはじめる前に計画を立てたり、予備実験を行ったりして準備を進めます。しかし、国語や算数などの授業準備をしたり、行事の進行に追われたりすると、うっかり教材を購入することを忘れた! となったり、来週実験を行うのに教材を今から頼んで間に合わないとなったりする可能性がでてきてしまいます。今回は、教材を購入する際の注意点や単元によってどの教材をどのタイミングで購入しておくと安心かについて紹介します。

購入のタイミング1 観察・実験のときに必要なものの量を考えよう

まずは自分の学級や理科専科で担当している学級の人数や班の数を把握しましょう。

1人やペアなどで実験を行うことができると、4人1班よりも自分の作業量が増えて実験の技能が身に付きやすくなります。また、4人組程度の人数で役割を分担して実験を行うことがより学習効果が表れるものもあります。

上記の理由から、班を作成するときはできるだけ4人程度に抑えるとよいと思います。4人×10班として考えてみましょう。

例えば、第4学年「金属、水、空気と温度」の学習で、水が温まる際に熱せられた部分が移動して全体が温まることを確かめる実験では、示温インクを用いたり、みそを用いたりします。300mLビーカーを使って、示温インクを入れた液を200mL入れて実験を行う場合10班あると、2Lの示温インクを入れた液が必要となります。当然、こぼしてしまうなどのトラブルを考慮すると最大でも2.5Lほど用意しておくと安心です。25倍に希釈して使用できる示温インクの場合ですと、2.5L作成するためには100mL必要です。同じ日に複数学級が使うなど、短期間なら繰り返し使えることも考えると1本240mLで購入できるとすると1つ購入するとよいことになります。

水が温まる際に熱せられた部分が移動して全体が温まることを確かめる実験

このように、どの程度の量が実験で必要なのかを考えておきましょう。また、購入希望書を出してから、届くまでに7~10日かかる場合もありますので、単元のはじまる前に計画を立てて購入しましょう。できれば、学期の中で単元計画を立てて実験で使う消耗品の購入リストを作成するとよりよいです。

購入のタイミング2 消耗品が必要な学習を把握しておこう

実験で使う消耗品を購入するタイミングを考える単元がいくつかあります。主な学習について学年ごとにまとめます。粒子領域では購入するものが多いので気を付けましょう。教科書によって必要な教材が違う場合もあります。また、授業の方法によっては、個人で扱うか班で扱うかによって分量が異なります。表は参考にして予備実験を必ず行い、自分で購入量を計算してみましょう。

<実験購入品リスト>

実験購入品リスト

5年「物の溶け方」について

食塩は50mLに20g程度溶けるため、10班あると1回の実験で200g程度使います。水の量を増やす実験では、100mLで行うと40g×10班、150mLで行うと60g×10班程度必要となってきます。またミョウバンは50mLでは5g程度溶けますが、水の温度を60℃に上げると30g弱溶けます。実験の回数や班数を考慮して、購入する量を検討しましょう。

6年 気体検知管について

気体検知管は高価な物です。酸素用は5本で3000円程度しますし、二酸化炭素用も0.03~1.0%調べるものと0.5~8.0%調べるものと2本使うため、理科の予算に大きく影響してきます。また、「燃焼の仕組み」「人の体のつくりと働き」「植物の養分と水の通り道」の単元で1回ずつ実験があるため本数も必要となってきます。

無駄に使わないためには、まず使ってある気体検知管が残っていたら、気体採取機に取り付けて使い方の練習を行いましょう。また、実験前と実験後の気体の濃度を測りますが、予算に限りがある場合は実験前の測定は教師が行い、児童は実験後の気体の濃度を測るということも考えてみましょう。

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

【理科の壺】次回は6月15日公開予定です。

執筆者プロフィール
蒲生友作●がもう・ゆうさく 東京都公立小学校主幹教諭。東京都の理科に関する授業研究に広く携わる。東京都小学校理科教育研究会リーダー研究推進委員、東京都教師道場助言者、東京都教育研究員、東京都研究開発委員。共著に『GIGAスクールに対応した小学校理科1人1台端末活用BOOK』(明治図書)、『小学校理科フローチャート型授業ガイド』(東洋館出版)など。

寺本貴啓先生

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。

イラスト/兎京香

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