他のオルタナティブスクールを見に行く【あたらしい学校を創造する #32】

先進的なICT実践と自由進度学習で注目を集めた元・小金井市立前原小学校教諭の蓑手章吾(みのて・しょうご)先生による連載です。公立学校の教員を辞して、理想の小学校を自らの手でつくるべく取り組んでいる蓑手先生に、現在進行形での学校づくりの事例を伝えていただきます。
今回は、既存のオルタナティブスクールやプレーパークを視察して見えてきたことについてのお話しです。

目次
ラーンネット・グローバルスクールを視察
ヒロックのファウンダー・堺谷武志さん(タクさん)から「初等部を一緒に創ろう」というお誘いを受けてから、ずっと念頭にあったのは、既存のオルタナティブスクールやプレーパークを実際に見てみたいということでした。新型コロナ禍の影響もあってなかなか難しかったのですが、入学者選考やカリキュラム検討が一段落した昨年末に、カリキュラムディレクターの五木田洋平さん(ヨヘイさん)とともにいくつかの学校を視察することができました。

まず僕らが視察したのは、神戸にある「ラーンネット・グローバルスクール」です。この学校は僕らが当初からモデルにしている学校のひとつで、実は僕と五木田さん(ヨヘイさん)が勤務校を辞める前から、創設者の炭谷俊樹さんに相談に乗ってもらっていました。だから、いつか見学しに行きたいという話をしていたんですね。昨年の秋くらいからラーンネット主催の探究クリエイタープログラムにも参加していました。その会では炭谷さんに授業を見てもらう機会がありますが、僕らにはまだ授業をする環境がありません。そこで、ラーンネットに行って飛び込み授業をして、それを見てもらうということになりました。
僕らが訪問したのは3日間。初日は子供たちの様子を見たり、スクールとして大切にしていること等を伺ったりして過ごしました。2日目は授業を行い、3日目は子供たちからフィードバックをもらいました。低学年、中学年、高学年の3つのクラスに分かれていて、ひとクラス16人の編成です。僕は高学年のクラスを担当しました。
子供たちは知的好奇心の高い子が多く、物怖じしないというのが第一印象です。とめどなくしゃべっている子もいれば、静かにしている子もいましたし、英語がペラペラの子や、昨年11月に行われたCOP26(気候変動枠組条約締約国会議)に参加するためにイギリスに2週間ぐらい行っていたという子もいました。

授業では、農業発展の歴史を扱いました。時間は2コマ90分。狩猟採集の時代から、農耕牧畜が始まり、農作物の品種改良の時代を経て、現代の作物の遺伝子組み替えやゲノム編集までに至る5段階の流れを概観しながら、みんなだったらどうするかを考える内容です。コンテンツを教えるというよりは、イノベーションのすごさとその是非を判断する難しさ、みたいなものを一緒に感じてもらおうと思って授業を行いました。少し高度な内容も含んでいましたが、子供たちは僕の授業をとても面白がって、ついてきてくれました。