小4算数「1けたでわるわり算」指導アイデア《あまりのない2位数÷1位数の計算のしかた》

特集
【文部科学省教科調査官監修】1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
小四算数タイトル「1けたでわるわり算」

執筆/富山県高岡市立博労小学校教諭・神田将義
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一
 前・富山県南砺市立福光東部小学校校長・中川愼一

単元の展開

第1時 あまりのない、なん十やなん百のわり算(60÷3、600÷3)や、各位とも割り切れるあまりのない2位数÷1位数(63÷3など)の計算のしかたを説明する。
▼    
第2時(本時)あまりのない2位数÷1位数(72÷3など)の計算のしかたを、既習の計算を基にして説明する。

第3時 あまりのない2位数÷1位数(72÷3など)の筆算のしかたを理解する。

第4時 各位とも割り切れずあまりのある2位数÷1位数 (93÷4など) の筆算のしかたを説明する。

第5時 十の位が割り切れるあまりのある2位数÷1位数(83÷4など) の筆算のしかたを説明する。

第6時 各位とも割り切れない3位数÷1位数=3位数(472÷3など)の筆算のしかたを、既習のわり算の計算のしかたを基に説明する。

第7時 商に空位を含み割り切れる3位数÷1位数=3位数(642÷6など)の筆算のしかたを説明する。

第8時 首位に商が立たない3位数÷1位数 (252÷6など) の筆算のしかたを説明する。

第9時 2位数÷1位数=2位数の暗算と商がなん十、なん百なん十になる3位数÷1位数の暗算のしかたを考える。

第10時 他国のわり算の筆算のしかたを知り、自国のわり算の筆算のしかたと比べ、共通点や相違点を見出す。

第11時 問題に取り組み、学習内容の定着を確認し、理解を確実にする。

本時のねらい(割り切れる2位数÷1位数[63÷3]の後/筆算形式の学習は次時)

あまりのない2位数÷1位数の計算する方法を、これまでに学習したわり算の意味や計算のしかたを基に考える。

評価規準

あまりのない2位数÷1位数の計算の方法を、位ごとに分けて考え、その手順を言葉や図を用いながら説明している。(思考・判断・表現)



72まいの色紙を3人で同じ数ずつ分けます。1人分はなんまいになりますか。

式は72÷3になるね。

答えは、どれくらいになりそうですか。

20×3=60だから、72枚を3人で分ければ、20枚よりは多いです。

30×3=90だから、30枚は無理です。答えは、30枚よりは少なそうです。

では、どのように考えるとできそうですか。

前の時間のように、割られる数を分けて考えるとできそうです。

72をどのように分けますか。

72を前の時間のときのように、十の位と一の位に分けて、70と2に分けて考えるとできそうです。

でも、それだと70÷3は計算しにくいし、2÷3は計算できないから、違う分け方で考えたほうがよいと思う。例えば、60と12に分けて考えると、計算しやすいよ。

どうして、60と12に分けようと思ったのですか。

割る数が3だから、60と12に分ければ、60÷3も12÷3もあまりがないから計算しやすいと考えました。

そうか。60と12に分けて考えると、60÷3=20、12÷3=4で合わせて24になるから、あまりを考えなくてよいので計算しやすいね。

でも、割る数を見て、あまりがないように割られる数を分けるのは、少し難しいな。

位ごとに分けて考えられると楽なのだけれど……。



割られる数を位ごとに分けて計算する方法を考えよう。

見通し

60÷3=20、12÷3=4だから、答えは24になりそうだ。(結果の見通し)

72÷3の割られる数を70と2に分けて70÷3から計算していき、あまりをうまく処理すればできそうだ。(方法の見通し)

自力解決の様子

A つまずいている子

十のまとまり(十の位)の7÷3=2あまり1の、あまりの処理のしかたに困っている。


B 素朴に解いている子

60÷3=20
12÷3=4
図を使って72を3つに分けて、24枚を求めているが、考えの流れを説明することまではできない。
※かけ算(20×3=60、4×3=12)を拠りどころにして考えている。


C ねらい通り解いている子

72 ÷ 3 = 24
はじめに、10のまとまり(十の位の数)を3人で分ける。そうすると、式は7÷3で、答えは2(20)あまり1(10)となる。次に、残りの1(10)との2を合わせて12枚とし、その12枚を3人で分ける。そうすると、12÷3=4となる。答えは24枚になる。
※図と式を関連付けながら、位ごとに計算する方法を説明している。

ねらい通り解いている子の図

学び合いの計画

この学習では、次時の筆算形式の学習とのつながりを考え、位ごとに分けて計算することへの意識付けを図ることを大切にします。

第三学年の学習で、位ごとに計算することへの基礎として、69÷3などの学習を行っています。また、前時までに10のまとまりで分けることを学習しています。

これらの既習を生かそうと考えるとき、子供たちは「今回の72÷3も位ごとに分けて考えたい」と思うでしょう。ここで学習する72÷3は、位ごとに分けるよりも、60と12というように割られる数の大きさを見て、割り切れる数をつくって分けるとうまく計算できます。そのような気付きをもつ子供がいることでしょう。

そのような見方ができることはとても大切ですが、割る数と割られる数を見て、その都度考えるという方法は汎用性に乏しく難しいため、すべての子供に期待することは無理があります。また、次時とのつながりも薄れてしまいます。そのため、わり算の筆算と関係の深い「位ごとに分けて考える」ということに焦点をあてるように、導入で72を60と12で分ける考えを出し、その割る数を見て、割られる数の分け方を考えることの難しさを話し合わせることで、「位ごとに分けて考える方法はないか」という思いを引き出そうとする流れをつくります。

学び合いの場では、位ごとに分けて計算する方法について、図と式を関連付けさせながら子供たちにていねいに説明させましょう。その際に、計算の意味と方法が分かるように子供の考えをていねいに板書に位置付けると、筆算につながりやすくなるでしょう。次時の筆算形式の手順と意味を考えながら教師が発問をすると、筆算への学びを深めることにつながる1時間にできるでしょう。

ノート例

ノート例

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

まず、ばらの2枚は2÷3で計算できないから、10のまとまりから計算します。10を基にして考えるので、式は7÷3=2あまり1です。

この7÷3=2あまり1の「7」は、72÷3のどこの部分のことですか。

「72」の十の位の「7」です。

ということは、十の位の7だけを3で割っているということか。

10のまとまりの計算というのは、式でいうと十の位の数だけをわり算しているということですね。

では、説明を続けてください。

次に、10のまとまりを分けたときに余った1と、ばらの2枚を合わせます。余った1は、10のまとまりが1なので10です。だから、10+2=12で12枚になります。12÷3=で4になります。

この12÷3=4の「12」は、何を合わせた数と説明されていましたか。

10のまとまりを分けたあまりと、ばらを合わせた数と説明されていました。

「ばら」というのは、72÷3のどこを表していますか。

「72」の一の位の2です。

10のまとまりを分けるというのは十の位の数を割ることだから、あまりは十の位の数ということになるね。その数と一の位の数と合わせてからわり算をすればよいということか。

では、説明を続けてください。

答えは、10のまとまりが2束、ばらが4枚なので、24枚になります。

あっ、十の位の計算で出した数が商の十の位になっているね。

本当だ。

ということは……、あまりと一の位の数を合わせた計算で出した数が、商の一の位になっているぞ。

今、話し合ってきた考え方を、72÷3=24の式とつなげながら、黒板にみんなで整理してみましょう。



72÷3は、
①72を70と2に分けて考える。
②十の位のわり算をする。
7を3で割る。
7÷3=2あまり1
(70)(20)(10)
③十の位のわり算のあまりの1(10)を一の位の数2と合わせて準備をする。
10+2=12
④一の位のわり算をする。
12を3で割る。
12÷3=4
⑤②の答え2(20)と④の答え4を合わせる。
20+4=24

2けた÷1けたは、
①割られる数を位ごとに分けて考える。
②十の位のわり算をする。
③十の位のあまりと一の位の数と合わせて準備をする。
④一の位のわり算をする。
⑤②の答えと④の答えを合わせる。

評価問題

72÷4の計算のしかたを説明しよう。

子供に期待する解答の具体例

  • 72を70と2に分けて考える。
  • 十の位の計算をする。(7÷4=1あまり3)
  • 十の位の計算のあまりと割られる数の一の位の数を合わせる。(30+2=32)。
  • 一の位の計算をする。(32÷4=8)
  • 十の位の計算の答え1(10)と、一の位の計算の答え8を合わせる。(10+8=18)
  • 72÷4=18

本時の評価規準を達成した子供の具体の姿

72÷3の計算の手順を基にしながら、72÷4の計算のしかたを説明している。

感想

  • 十の位の計算のあまりをどうすればよいのかに困りましたが、友達の説明を聞いて理解できました。
  • 位ごとに分けて十の位から順に計算していくと、商が求められると分かりました。

1人1台端末活用ポイント

本実践は、次時とのつながりを大切にした1時間となっています。従って、本実践での学びを次時の筆算の学習と比較するなどの活動を行うことが想定されます。そういった活動をする際に、1人1台端末を活用するとよいでしょう。

各自治体で使用できる、教員と子供が共同で作業できるアプリなどを使用するとよいでしょう。それらのアプリなどの共同作業スペースに、前時の板書の比較したい部分の写真と本時の板書の比較したい部分の写真を、比較しやすいように横並びにして貼り付けます。その2つの板書の共通点や相違点などを、タッチペンを使って線でつなぐなどさせると容易に比較することができるうえ、線でつないだ部分に文章を書き込ませることもできるので、板書と同じような役割も果たします。

1人1台端末を上手に活用すると、今回の例のようにほかの時間の板書と比較することができるだけでなく、書き込みができるという点で非常に便利です。模造紙などに書き、板書と並べて話し合わせるよりも、子供の活動の幅が広がると考えます。ぜひ、実践してみてください。

イラスト/横井智美、やひろきよみ

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