学級担任の時短術①「1年間の見通しを立てよう」
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働き方改革は、現在の学校の重要テーマです。仕事を効率化しつつも、授業や学級経営の質が落ちないような時短術について、毎月22日公開、全12回で連載していきます。第1回のテーマは、「1年間の見通しを立てよう」です。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
「時短貯金」をしよう
長時間労働が常態化しつつある先生方にとって、「時短」自体は非常に重要なことですが、効率化したことにより、授業や学級経営の質が落ちては本末転倒です。そこで、最初に、次のことを確認しておきましょう。
・なんのために時短をするのか、その根本・本質を見失わない。
時短術は目的によって、二つに分けることができます。
①今やるべき仕事を早く終わらせる
②いつかやる仕事を早く終わらせる
一般的に「時短」というと、多くの場合、①の時短術が取り上げられています。例えば、効率的に書類整理をする方法や短時間で調査に回答するコツなどです。こうした、目の前の仕事を効率的に処理していくことは、日々の勤務時間を短くするために有効です。
しかし、年度はじめの4月に特に意識したいのは②です。目の前のことだけでなく、いずれすべき仕事の仕込みをしておきます。そうすることで、後々の仕事が効率的に進められるようにします。
このような考え方を、私は「時短貯金」と呼んでいます。
貯金というのは、将来のため、いざというときに使えるようにしておくものですよね。時短貯金も同じで、いつか必要なとき、将来の仕事を短時間で終わらせるために行います。
では、どんな時短貯金ができるでしょうか。
①1年間のスケジュールをすべて手帳に記入する
例えば、一年生の担任になったら、昨年の一年生の担任に週指導計画や学年便りを借ります。それらを見ながら、いつどんな仕事があるのかを手帳に書いていきます。また、年間行事予定表を見ながら、通知表提出日、授業参観日、個人面談期間など、事前準備が必要な行事を中心に記入しましょう。さらに、自分の校務分掌のファイルを1年分見て、どの時期にどんな仕事があるのか、いつ始めるのか、いつが締め切り日なのかを手帳に書き込んでいきます。
こうやって1年間の動きをつかんでおくと、仕事の漏れがなくなりますし、計画的に仕事を進められるようになります。計画的に行う、目の前のことに追われないというのは、時短術の第一歩なのです。
②資料を集め、2冊のノートを作成する
担当学年が決まったら、学級経営や教科指導に使えそうな資料(雑誌や教育書など)を集めます。前年の担任に学級便りを借りるのもいいでしょう。それらをざっと読み、参考になりそうなところに付箋を貼っていきます。その中で、特に重要だと思うものをコピーします。
次に、A4判のノートを2冊用意します。1冊は「学級経営用」、もう1冊は「教科指導用」です。
コピーした資料を学級経営用と教科指導用に分けたら、おおよその使用時期順にノートに貼っていきます。その際、資料は左側に貼り、右側はメモ欄として残しておきます。
こうした準備を、できるだけしておくことで、よいスタートを切ることができます。
新年度の準備で忙しく、このような取組ができない方も多いでしょう。しかし、ここでかけた時間以上のリターンが、後に必ずありますので、できる範囲で挑戦してみてください。
さて、ここまでは今年度のための時短貯金です。ですが、時短貯金にはもう少し先のことを考えたものもあります。
例えば、前述の学級経営ノートや教科指導用ノートに、実践しての反省や気付きを詳しく書くのです。すると、次回に同じ学年を担任する際に、このノートが有効活用できます。今年の実践が、何年か後の時短につながるわけです。
特に若いときには、こうした定期預金ともいえる時短貯金を心がける必要があります。なぜなら、年々、校務分掌やプライベートなことなどで人生は次第に忙しくなっていくからです。ですから、若いうちに時短貯金をしておかないと、ずっと仕事に追われることになりがちです。そこで、次のことも心がけましょう。
③データを検索可能な状態で保存する
意外に見落としがちなのがデータ管理です。次に同じ学年を担当したときに使おうと思っても、肝心のデータが見付からないことがあります。それこそ時間の無駄です。
そこで、「検索」機能で見付けやすいように、ファイルの保存名を工夫しておきましょう。例えば、「おおきなかぶ」で使える登場人物ワークシートを保存するときには、
「一年 国語 おおきなかぶ 登場人物 ワークシート 令和四年」
という名前にします。すると、「おおきなかぶ」でも、「登場人物」でも検索できます。
このようにいろいろなワードで検索できるようにしておけば、余計な手間をかけずに短時間で見付けることができます。
なお、生徒指導力、学習指導力を向上することによって、無駄な労力を省き、効率的に仕事ができるようになりますので、そうした力を高めるために研修することも時短貯金といえます。そんな意識で、自分の力を向上させることにも力を注いでいきましょう。
イラスト/バーヴ岩下
『教育技術 小一小二』2020年4/5月号より