「出席停止」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】

「出席停止」とは、児童生徒の学校への出席を停止することです。新型コロナウイルスの影響で学校を休んだ児童生徒が出席停止になったケースが少なくありませんが、出席停止はどのような場合に適用されるのでしょうか。

執筆/金沢大学准教授・鈴木瞬

みんなの教育用語

教育課題としての出席停止

出席停止は、学校教育法の規定に従って行われる場合(性行不良)と、学校保健安全法の規定に従って行われる場合(学校感染症予防)があります。

国公私立の小・中学校では、児童生徒に対して、懲戒としての停学処分を行うことはできません。そのため、学校教育法第35条では「性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童」について出席停止を命ずる、と規定されています。出席停止の適用にあたっては、次のような行為が繰り返し行われることが例示されています。

  1. 他の児童に傷害、心身の苦痛または財産上の損失を与える行為
  2. 職員に傷害または心身の苦痛を与える行為
  3. 施設または設備を損壊する行為
  4. 授業その他の教育活動の実施を妨げる行為

基本的には日ごろの生徒指導を充実することが必要であり、学校が最大限の努力を行っても解決できなかった場合にのみ、出席停止の措置をとります。

近年、性行不良による出席停止の件数は劇的に減少しています。文部科学省による調査によれば、2010年に51件であったのが、2020年にはわずか4件にとどまっています。

背景には、出席停止の措置が、国民の就学義務にかかわる重大な措置であるという認識があります。教育課題としての出席停止は、市町村教育委員会の権限で行われるもので、児童生徒本人ではなく、保護者に命ずるものになります。そのため、出席停止を命ずる場合には、あらかじめ保護者の意見を聴取するとともに、理由および期間を記載した文書を交付しなければならないなど、さまざまな法的な手続きが必要となります。

「学ぶ権利」の保障

出席停止は、懲戒という観点からではなく、学校秩序を維持し、他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられた制度です。

例えば、2013年6月に成立した「いじめ防止対策推進法」においても、被害児童等の「学ぶ権利」が保障されるよう、安心して学べる学校環境の整備が必要であることが明記されています。

一方、出席停止が、加害児童等の「学ぶ権利」を侵害するものであると評される懸念から、出席停止の実行がタブー視される傾向もあります。当然、市町村教育委員会は、出席停止期間中の児童生徒に対しても、学習支援やその他教育上必要な措置を講じなければならず、学校も、家庭訪問などを行いながら、児童生徒が孤立感を感じぬよう適切な対応を行うことが求められます。

感染症へ対応するために

学校は、児童生徒が教育活動を行う場であるとともに、日常的に集団生活を営む場です。感染症が発生した場合、感染が拡大しやすく、教育活動にも大きな影響を及ぼすことが想定されます。そのため、学校保健安全法第19条では、感染拡大の予防のため、「校長は、感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる」と認められています。

学校保健安全法施行令第6条では、校長が出席停止を行う場合、その理由および期間を明らかにして、小・中学校においてはその保護者に、高校等の場合は生徒に出席停止の指示をしなければならず、出席停止の期間は文部科学省令で定める基準によると規定されています。また、出席停止の指示をした場合、校長は、省令で定めるところにより、学校の設置者に報告しなければなりません。これらを受け、学校保健安全法施行規則では、学校において予防すべき感染症の種類を第一種から第三種に分け、出席停止の期間の基準等を規定しています。

新型コロナウイルス感染症の場合

文部科学省は、新型コロナウイルス感染症について長期的な対応が見込まれることを背景に、学校の衛生管理に関する具体的な事項についてマニュアルを作成しています。これによれば、以下の4つのケースにおいて、学校保健安全法の規定に基づく出席停止の措置をとる必要があります。

  1. 児童・生徒の感染が判明した場合
  2. 感染者の濃厚接触者に特定された場合
  3. 発熱等の風邪の症状が見られる場合
  4. 感染がまん延している地域で、同居の家族に発熱等の風邪の症状が見られる場合

なお、出席停止となった児童生徒が授業を十分に受けることができないことによって学習に著しい遅れが生じることがないよう、ICT環境を活用した学習指導の充実が必要です。今後も、Withコロナ期において継続・定着しつつあるニューノーマルな就学様式を基盤にして、柔軟に児童生徒の学びの保障を実行できるよう、日ごろから「学びの選択肢」を増やしていくことが求められます。

▼参考文献
内田良(ウェブサイト)「いじめ加害者の出席停止ゼロ件 教師の半数『出席停止にすべき』」2021年
篠原清昭・大野裕己編著『Withコロナの新しい学校経営様式:ニューノーマルな教育システムの展望』ジダイ社、2020年
鈴木瞬「出席停止」(水本徳明編『実践教育法規2021』小学館、2021年)
文部科学省(ウェブサイト)「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~『学校の新しい生活様式』~」2021年
文部科学省(ウェブサイト)「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」2021年

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