#37 困難なことを避けて通らずに努力する【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

前文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官/十文字学園女子大学教育人文学部児童教育学科 教授

浅見哲也

今回は2学期のイベント、持久走大会のお話です。大会を通じて子どもたちが学べることとは。

第37話 持久走大会

持久走大会の練習をする子ども

12月になり、2学期の大きな行事としては最後となる持久走大会を迎えた。

個々の努力も大切だが、親善運動会の長縄跳びや芸術祭の映画作りは、みんなで力を合わせて努力することが試されてきた。しかし、この持久走大会は、個人の努力が試される。その意味では、子どもたちにとっても貴重な経験の一つになる。

持久走大会は順位がつきものであり、順位のよい子がもてはやされるのは否めない。その順位にこだわって努力する子もいるので、それは認めるべきことだ。

しかし、運動能力(持久力)には個人差がある。だから、すべての子どもがそれぞれに目標をもって持久走大会に臨めるようにすることが大切である。

距離は男女ともに1500メートル。11月中旬の体育の授業から少しずつ距離を伸ばし練習を重ねてきた。

順位で言えば、大きく3段階に分かれる。上位争いをする子、そして中間層、下位層とだいたいメンバーが決まってくる。

トップ争いをする子たちには、もちろんタイムとともに順位にこだわってほしかった。それが彼ら彼女らにとっては、やはり一つの勲章になる。

だから、1500メートルという距離を逆算して、残り何メートルくらいからラストスパートをかけられるかを練習の中で見つけるようにした。特に残りの20メートルくらいのところで油断をして力を抜くと、そこで数人に抜かれることもあるので注意を喚起した。

中間層の子どもたちには、本番で、順位以上に自己ベストの記録更新を目標とした。

1500メートルという距離をデザインするような感じで、200メートルのトラックを1周ごとに何分何秒で通過するかを考えさせた。安定した速度で走りながらも、調子がよければ少し飛ばしてタイムに貯金をつくって次の周へと進んでいく。これは、タイムごとの長縄跳びの回数と共通している。

さて、一番大切にしたいのが、持久走が大嫌いで最下位を争う子たちである。争うというより、なんとか完走するというのが正しい表現なのかもしれない。

この中には、本番前の体育の授業がとにかく憂鬱であり、連絡帳で「かぜ気味なので、今日の体育は見学させてください」と訴え、見学する子も出てくる。

苦しいことをやらされる気持ち、しかも順位があからさまにわかってしまう持久走大会に出ることのつらさはとてもよくわかる。

個々の力が試される持久走大会なので、自分が休んでも他人に迷惑をかけることはない。なので、なおさら自分の気持ちが試される。

彼ら彼女らのモチベーションを上げるにはどうすればよいか。本番で自己ベストの記録を出すことを目標にするのが基本ではあるが、例えば肥満の子であれば、体重を減らすことを目標にしたっていい。また、体育の時間から本番まで休まずに参加することを目標にしてもいい。

とにかく、困難なことを避けて通らずに努力することの大切さを感じ取ってほしい。

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文部科学省教科調査官) 画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追究中。

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