#34 どうか、優勝できますように【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

前文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官/十文字学園女子大学教育人文学部児童教育学科 教授

浅見哲也

今回は芸術祭の映画の台本より、大会前日の神社にお参りに来ただいすけとめぐみのシーンです。そこにロベルト先生もやってきて…。

第34話 大会前日の神社(芸術祭)

だいすけ&めぐみ

(お願い事をしに神社に来ためぐみ。振り向くとそこへ…)

めぐみ「あれっ、だいすけくんじゃない。こんなところでどうしたの?」

だいすけ「いやあ、無駄かもしれないけど、明日のことを考えるといてもたってもいられないからお願いに来たんだ。ところでめぐみはどうしてここへ?」

めぐみ「私もだいすけくんと同じ。明日優勝できるようにってお参りに来たの。」

だいすけ「何だ、めぐみもか。」

めぐみ「だいすけくんって見かけによらずいいとこあるね。」

だいすけ「そんなことないよ。おれ、考えたんだ。一つのことばかりにこだわっていないで、新しい自分を見つけようって。」

めぐみ「だいすけくん…。」

(お互いに見つめ合う。そこへロベルト先生登場)

だいすけ&めぐみ「あっ、先生!」

先生「おまえら、こんなところで何やってるんだ。」

めぐみ「だいすけくんとお参りに来たんです。(突然大胆になり、だいすけと腕を組むめぐみ)」

先生「おまえもすみに置けないやつだなあ。(だいすけをこづく)」

だいすけ「そうじゃないんです。(あわてて組んでいた腕を振りほどく)」

先生「まあ、いいや。実は先生も同じだ。」

だいすけ「えっ、先生もめぐみをねらっていたんですか?」

先生「ちがーう。そうじゃない。お参りに来たのが同じってことだ。」

だいすけ「なーんだ。」

(恥ずかしそうにするだいすけとめぐみ)

先生「そう言えば、さっき、のぞみとかなえとたまえとすれちがったなあ。あいつらももしかして明日のためにお参りに来ていたのかもしれないな。何だかみんないいやつばっかりだな。よし、じゃあ三人でもう一度お願いするか。」

だいすけ&めぐみ「はい。」

先生「どうか、明日は、優勝できますように…。」

(三人、手を合わせてお参りする)

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文科省教科調査官)、画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。

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