#30 優勝なんかできるわけないよな【連続小説 ロベルト先生!】
今回は芸術祭の映画の台本より、親善運動会の説明のシーンから初めての長縄跳び練習のシーンまで。なかなかうまく気持ちがまとまらない子どもたちですが…。
第30話 教室1 親善運動会の説明(芸術祭)
こうへい「起立! ロベルト先生に、礼!(お願いしまーす)着席!」
(座ると同時におしゃべりが始まる)
先生「おいっ、みんな静かにしろ! 今日はみんなに大事な話がある。
今度行われる親善運動会は、私たちが住んでいる市の全部の小学校が参加する大きな運動会だ。その中に学級対抗長縄跳びという種目がある。
今日からそれに向けて、休み時間を使って練習していこうと思うが、みんなはどうだ?」
みんな「えーーーーーっ!」
男の子1「そんなの無茶だよ。」
男の子2「休み時間を潰すなんて、ひどすぎるよ。」
だいすけ「そうだよ。俺たちはサッカーがしたいんだ。なー、みんな。」
男子たち「そうだ。そうだ。」
男の子3「そんなの練習しなくたってすぐに跳べるよ。」
女の子1「休み時間を潰してまでやりたくない。」
女の子2「めんどうくさいし、それに、跳べない子もきっといるよ。」
あやか「でも、せっかく出るんだったら、いい成績をとりたいよね。」
男の子4「なんだよ。おまえは俺たちが一番楽しみにしている休み時間がなくなってもいいって言うのか?」
男の子5「おまえ、学級委員だからって、先生の前でいい子ぶってんじゃないよ。」
男の子6「あーあ。おれ、学校に来る気なくなった。」
ガリ勉太郎「ロベルト先生! ぼくは休み時間に図書室に行って勉強したいので、そういう意味のないことには参加したくはありません。」
だいすけ「おっ、ガリ勉太郎もたまにはいいこと言うじゃん。」
男の子7「(ガリ勉太郎を真似するように)ロベルト先生! ワタクシは休み時間に図書室に行ってお昼寝がしたいので、そういう意味のないことには参加したくないのであーる。」
(みんなで笑う)
女の子3「先生、休み時間には委員会の仕事があるんですけど、どうすればいいんですか?」
まさお「そうだよ。やっぱり休み時間に練習するのは反対です。」
みんな「そうだ。そうだ。」
あきら「おいっ、静かにしろ! ぼくは、この縄跳びでがんばってみたい。ロベルト先生、ぼくにキャプテンをやらせてください。」
先生「あきら、やってくれるか」
こうへい「せっかくみんなでやるんだから、協力し合ってやろうよ。」
先生「よし、みんなが決めた学級委員の二人もそう言っているんだから、やるしかない。がんばるぞ!」
みんな「あーあ。(ぶつぶつ言うクラスメイト)」
【校庭1 初めての長縄飛び練習】(芸術祭)
あきら「よし、みんな、練習を始めるぞ! よーい、スタート!」
(かけ声をかけて跳び始めるが、全然跳べない)
ひろし「たまえ、もっと前で跳べよ。これじゃ、おれ入れないよ。」
たまえ「ごめんなさい。」
(ふざけて跳ぶ男の子たち)
たかし「ライダーキック!」
男の子5「とりゃー(回転しながら跳ぶ)」
女の子3「ねえ、真面目にやってよ。」
女の子2「もう、疲れてやだー。」
(また、練習し始める)
男の子8「おいっ、なな子! おまえひっかかってばっかりじゃないか。ちゃんと跳べよ!」
みんな「そうだよ。」
(また、練習し始める)
だいすけ「おいっ! なな子、いい加減にしろよ! もっとちゃんと跳べよ!」
なな子「だって…(なな子泣き出す)」
あやか「だいすけくん、ひどいじゃない。なな子だって一生懸命やっているのよ。」
男の子9「なな子がいたんじゃ、優勝なんかできるわけないよな。」
みんな「そうだよ。そうだよ。」
男の子9「こんな意味のないことやめようぜ。」
女の子7「自分だって、ひっかかってるじゃない。」
男の子9「うるせえなあー。おまえは口出しすんなよ。」
女の子2「あっ、私うさぎちゃんにえさをやるの忘れてた。じゃあねー。」
男の子2「あっ、ぼくも安全パトロールがあったんだ。出動してきます。」
だいすけ「あーやめた。ばかばかしい。おれ、サッカーやる。みんないこうぜ!」
男の子たち「おーっ!」
めぐみ「だいすけくん。待ってよ…。」
(みんな、なな子を囲んで慰める。サッカーをしに行くだいすけを見送るめぐみ)
めぐみ「もう、だいすけったら…。」
(そして、仕方なく残ったみんなで練習を始める)
執筆/浅見哲也(文科省教科調査官)、画/小野理奈
浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。