過干渉な保護者への対応のコツ|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

連載
沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

斬新でユニークな実践で子供たちのやる気を引き出す「ぬまっち」こと、沼田晶弘先生 。今回は、過干渉な保護者に対する上手な接し方、付き合い方のポイントをアドバイスいただきました。

撮影/下重修

過干渉の保護者は、子供を自分の分身だと思っている人が多い

過干渉の保護者は、自分の敷いたレールの上を子供にきっちりと歩かせたいという人が多い

しかもこれまでの自分の記憶や経験を総動員して、最もよかったであろう、ベストなレールを一本だけビシッと敷いてくる。

しかし、そこにはいろいろな誤算があるから、大抵うまくいかない。

一番大きな勘違いは、保護者は自分の子供を自分の分身だと思っていること。

もちろん、お父さん、お母さんのの遺伝子はバッチリ伝わっているわけだから、どこかしらは似てくると思うけど、子供は自分とは違う人格だし、性格も得意分野も違っているということをついつい忘れちゃうんだよね。

とにかくほめて、上手に少しずつ子離れを促す

とはいえ、過干渉の保護者はとにかく一生懸命な人が多いので、まずはほめてあげることが大事。その上でちょっとずつ子離れを促すような話をする。

例えば、「Aさんはさすがですね。お子さんの細かいところまでよく見ていらっしゃいますよね。そんなところまでは気づかない保護者も多いんですよ」とまずは子供のために頑張っていることを称賛し、認めてあげる。

その後に「自転車を一人で乗れるようになるためには、最初は自転車の後ろを保護者が掴み、支えてあげて練習したりしますよね。でも、どこかで手を放してあげる必要があります。本人も保護者も不安なので手を放すタイミングは難しいと思いますが、手を放さないとそれこそ大変なことになります。子供がずっと自転車に一人で乗れなくなってしまうか、保護者が引きずり回され血だらけになるかのどちらかです」

などと冗談を交えながら、子供を自立させるためには親は子供と距離を取ることが大切であるということを、さりげなく伝える

間違っても「過干渉ですよ」なんて直球で諭すことはしない。逆効果になることは間違いないからね。

わが子への特別対応を求められた時にはきちんとお断りする

保護者にとって子供は大事な宝物。
できれば痛い目にあってほしくないし、転んでほしくないと思うのも当然だ。

でも大抵の保護者は、転んでもまた起き上がればいいということを知っている。ところが過干渉の保護者は、転んだら危険なので自分の子供が転ばないように、子供が歩くであろう道の上のすべての石ころを拾おうとする。そしてもしそれでも子供が転んでしまったら、血相を変えて誰かの責任にしたりする。

また過干渉な保護者は、教師に自分の子供だけ特別対応を求めることもあるよね。

求められる対応が極端な場合は、優しく、でも毅然とお断りをする必要がある。

「Bさんは、お母さんにとって大事なお子さんであることは理解しております。しかしこのクラスにいるお子さんは、みんな一人ひとりそれぞれのご家庭の大事なお子さんです。お一人だけ特別な対応はできません」と言って、子供を思う気持ちは受容しつつ、できないものはできない、とはっきり伝える

過干渉の保護者を味方につけると、学級経営がスムーズになる

ただ過干渉な保護者は、基本的に真面目で、子供のことを一生懸命考えている人であり、割と時間がある人が多い。だから多少面倒くさいなと思うことがあっても、上手にコミュニケーションをとり、自分の味方になってもらうような接し方を心がけることで、教師にとっては非常にありがたい存在になる

例えば、過干渉の人は自分の子供のことは何でもよく知りたいし、子供とたくさん話をしたいタイプ。だから個人面談で間接的にその子のよいところや、教師が期待していることをたくさん保護者に伝えておくと、必ず子供に伝えてくれるので、子供との信頼関係を築きやすくなる

さらに「さすがですね。Cさんは本当によくいろいろなことに気が付きますね。また何かお気づきになったらぜひ教えてくださいね」とほめながら、自分が困っていることや学級経営のために保護者全体に協力してほしいことなどをさりげなく話すと、全力で応援してくれたり、保護者のまとめ役になってくれたりする

保護者の価値観もどんどん多様になってきている。だから学級経営をスムーズに進めるためには、保護者のタイプに合わせてちょっとずつ伝え方や接し方を工夫することも大事なんじゃないかな。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『板書で分かる世界一のクラスの作り方 ぬまっちの1年生奮闘記 』(中央公論新社)他。 沼田先生のオンラインサロンはこちら>> https://lounge.dmm.com/detail/2955/

取材・構成・文/出浦文絵

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