#4 物語と説明文の違いとはなんでしょうか?【連続小説 ロベルト先生!】

連載
ある六年生学級の1年を描く連続小説「ロベルト先生 すべてはつながっています!」

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官

浅見哲也

今回は国語の授業のお話です。物語は楽しくて、説明文はつまらない? 説明文の勉強で大切なのは、そこに書かれている内容を理解することとともに、それぞれの段落の働きを理解すること。作品のよさをあじわい、読み取る力と文章を整理して書く力を身につけるには。

第4話 授業

「1時間目は国語です。教科書とノートの準備はいいですか? (間) 起立!」

日直の元気のよい号令とともに、全員が立ち上がる。

「礼!」

「お願いしま~す」

子どもたちは、ペコリと頭を垂れる。私は、子どもたちのきちんとした挨拶を見届けた後に、一人遅れて、

「お願いします」

と応える。授業の始まりと終わりの挨拶は、けじめとしてきちんと行う。

「さあ、今日から、説明文の勉強に入っていきます。ところで説明文とは、どのような文章なのか知っていますか?」

「はい。何かについて説明する文章です」

「確かにそうだ」

「じゃあ、電化製品を買ったときに付いてくる取扱説明書も説明文かな?」

「…」

「では、物語と説明文の違いとはなんでしょうか?」

「物語は楽しくて、説明文はつまらない」

クラスのみんなから笑いがこぼれる。

「確かにそうとも言えるかもしれないけれど、それはあくまでも個人の主観、つまり一人の感じ方に過ぎないと思うんだけど…。では、物語の方が好きな人は、手を挙げてください」

9割近くの子どもたちが手を挙げる。

「結果は見えたようだけど、説明文が好きな人は手を挙げて」

三人の子どもが手を挙げた。

「どちらにも手を挙げていない子は、手を挙げて」

亮太が一人、手を挙げる。

「だって俺、本を読むの嫌いなんだもん」

「えーっ、そういうの有り? だったら俺も嫌い!」

「俺も!」

クラスの半数以上の子どもたちが本を読むことが嫌いなことが改めてわかった。

「それは問題外です。話を元にもどします!」

「ところで、説明文が好きな岡田くんは、どんなところが好きなのかな?」

「えーっと、そのー、読むと頭がよくなるところ」

「そんな感じがするよね。では、もう一人。加藤さんは?」

「あることについて詳しく知ることができること」

「なるほど、読むだけで新しい知識を得ることができるということだね。では、物語が好きな人は、その好きなところを教えてくれますか?」

たくさんの子どもたちが手を挙げる。

「じゃあ、手を挙げた人は全員立ってください。今から順番に理由を言ってもらうから、もし同じような理由だったら、『同じです』と言って座ってください。じゃあ、廊下側の前の人からお願いします」

「物語に登場するキャラクターが面白い」

「それは、どんなキャラクターなの?」

「魔法使いで、困っている人を魔法で助けるの」

「なるほど、先生も助けてもらいたい」

「先生は何に困っているんですか?」

「もっともっと、みんなの愛がほしい …」

「はいはい」

子どもたちに軽くかわされる。

「じゃあ、次の人、発表してください」

「物語は、現実の世界と違うところが面白い」

「同じです!」

立っていたほとんどの子が席に座った。一人、菅原さんが残った。

起立して発言している女の子

「菅原さんはどんなところが好きなの?」

「その…、私は…、自分で作れるところがいいと思います」

「えっ、菅原さんは物語を書いたりするの?」

「あっ、はい…。でも人には見せられません」

「えーっ、読んでみたい!」

クラスの子どもたちから声が上がった。

「恥ずかしいからいやです」

「わかった、わかった。もし、読んでもらいたいときが来たら、その時は先生に教えてね。

ところで、物語と説明文の違いはわかったかな? 物語は空想の世界なので、実際には起こらないような世界を読者は主人公に重ねて味わうことができます。

例えば、ふわふわの雲の上に乗って世界中を旅することだってできます。しかし、説明文で『雲の上に乗ることができます』と書いたら、それは事実と異なり、信じた人が落下して大変なことになります。

説明文では、『雲の正体は水滴です』と書かなければなりません」

「夢がなーい!」

「でも、さっき、岡田くんや加藤さんが言ったように、説明文を読むと物事の仕組みなど、いろんなことを理解することができます。そのような理由から、教科書の多くは説明文と言うことができますね。

皆さんは説明文には大変お世話になっているんだよ。それでは、説明文を勉強していくことにします」

子どもたちに様々なことを理解をさせるには、何事も大枠を捉えさせることから始めることが大切だと思う。

文章を読んで理解するために、言葉の意味や使い方を教えることも国語では重要だが、「木を見て森を見ず」という言葉の通り、その作品のよさを味わうことを忘れてはいけない。

「では、この説明文を一度黙読してみよう。きっと、今まで知らなかったことがわかりますよ。

それから、この文章は何段落に分かれているかな? 読み進めながら段落に番号を振っていってくださいね。

夢中で読んでしまって振り忘れたら後からでもいいですよ。では、始めてください」

教室に静寂な時間が流れる。

いつも賑やかな教室だが、誰も喋らずに落ち着いて何かに没頭する時間は貴重だ。私も口を挟まず、子どもたちの様子を眺め、次の展開の準備をする。

読書は、多くの子どもたちにとっては憂鬱な時間なのかもしれないが、子どもを読書好きにする一つの方法は、集中して読書ができる時間と空間を与えることだ。

実は私も読書嫌いだったが、大人になって電車に乗ることが多くなった時に、暇つぶしで何気なく本を読むようになってから、不思議なくらい読書が好きになった。今では鞄に必ず一冊は本を入れている。

さて、至福の時間が終わり感想を聞く。子どもたちは説明文による新たな発見を口々にする。

ここで、用意しておいたワークシートを子どもたちに配る。そのワークシートには段落の番号が振ってある表が印刷されている。

「では、今読んでみて、説明されていることがたくさんあったと思いますが、今度は段落ごとに、説明しているところがあったら○、特になかったら×を付けてみてください。では、どうぞ!」

また、時間をおいて文章を読ませる。2回読めば子どもたちもだいたいの内容は理解する。

しかし、説明文の勉強で大切なのが、そこに書かれている内容を理解することとともに、それぞれの段落の働きを理解することだ。

この単元を終えた時には、子どもたちにも簡単な説明文が書けるくらいになってほしい。そのためにも段落構成を理解させる必要がある。

「○と×が付けられましたか? では、4人グループになって、お互いに見せ合いっこしてください」

子どもたちは確かめ合うように、自分のワークシートと友達のワークシートを見比べている。違っているところがあれば、それぞれが考えを伝えて確認する。

「では、班ごとに発表してもらいます。友達と食い違った段落を発表し、どういう話し合いで結果的に○と×のどちらになったかを発表してください」

さすがに説明文だけあって、ほとんどの段落が○になる。しかし、いくつかの段落には×がつく。

「では、×の段落には何が書かれているのか、みんなで声をそろえて読んでみよう。さん、はい!」

「み・な・さ・ん・が、い・つ・も・目・に・し・て・い・る………、ど・の・よ・う・な・決・ま・り・が・あ・る・の・で・し・ょ・う・か!」

まるで、小学校に入学したばかりの一年生が読むような、ゆっくりとしたスピードである。

黙読や個人の音読とは違って、みんなで声を合わせる音読は読むスピードが制限される。みんなに合わせなくてはならないという思いから、ゆっくりになるのは仕方がない。

しかし、高学年の一斉音読は、意識してスピードを上げさせるようにしている。

「『、』や『。』は一呼吸おく。後は切らずにスラスラと読みましょう」

と言って、一度私が読んで聞かせる。そして、もう一度、子どもたちに音読させる。一気に六年生に相応しい音読になる。

一斉に音読をさせると、時には周りの友達に合わせようとせず、自分勝手なスピードで読み、バラバラになることもある。その時私は決まってこう言う。

「これが今のクラスの姿だよ」

さて、話はもとに戻って、音読させた段落に書かれていたこと。それは、「問題提起」の働きをする文章だ。説明文には欠かせないものだ。

筆者は読者に問題を投げかけておいて、読者を引きつける。そして、様々な実験や観察、調査などを通して導き出した答えを説明しているのだ。

問題提起の段落を押さえるだけでも大まかな構成が分かり理解が容易になる。さらに、とどめを刺すのが、段落ごとの書き出しに注目させることだ。

例えば接続詞。「また」とくれば前の段落の説明が続く。「しかし」とくれば反対の内容が説明される。「さて」とくれば話は変わる。「要するに」とくればまとめられる。

このような段落構成をしっかりおさえておくと、読み取る力も身につくし、自分で文章を書くときにも整理して書くことができる。

あっという間に45分の国語の授業が終わった。

次回へ続く


執筆/浅見哲也(文科省教科調査官)、画/小野理奈


浅見哲也先生

浅見哲也●あさみ・てつや 文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官。1967年埼玉県生まれ。1990年より教諭、指導主事、教頭、校長、園長を務め、2017年より現職。どの立場でも道徳の授業をやり続け、今なお子供との対話を楽しむ道徳授業を追求中。

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