算数、理科、外国語に加えて体育が教科担任制度の対象に【教育ニュース】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」

先生だったら知っておきたい様々な教育ニュースについて、東京新聞の元教育担当記者・中澤佳子さんが解説します。今回のテーマは新たに体育も対象となる「教科担任制度」についてです。

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執筆/東京新聞記者・中澤佳子

算数、理科、外国語に加えて 体育が教科担任制度の対象に【教育ニュース】・メイン

なぜ体育が盛り込まれることになったのか

その道に長けた人や専門家に教えてもらえれば、上達する。理解が深まる。そう考える人は少なくないでしょう。小学校の一部の授業でも、「専門の先生」が教えることになりそうです。

2022年度から小学校高学年で導入するとされている「教科担任制」について、議論してきた文部科学省の有識者会議が、算数、理科、外国語(英語)に加えて、体育も教科担任制度の対象にするよう促す報告書案を了承しました。

そもそも、中央教育審議会が教科担任制の本格導入を答申したのは、今年1月。社会のグローバル化が進み、科学、技術、工学、芸術、数学を融合させた教科横断型の学び「STEAM教育」の充実への社会的な要請を踏まえ、専科指導の必要性を訴えました。

このとき例示された対象教科が算数、理科、外国語でした。

なぜ、体育が盛り込まれたのでしょうか。報告書にはさまざまな理由が挙げられています。

まず、運動が苦手な子にも「できる喜び」を味わってもらうこと。

そして、学年が上がるにつれて個々の技能や体力の差が広がりやすくなるため、それぞれの子に合った指導や支援の必要があるとも指摘しました。

教員を巡る課題も絡んでいます。国家公務員の定年引き上げに伴って地方公務員の定年も段階的に引き上げられるうえ、定年後の再任用を強化する教育委員会が目立ち、60代の教員が増える見通しです。体力面で体育の指導が難しい人もいるかもしれません。そんな見込みもあり、体育を専門に教える指導者が求められるのです。

専門知識があり、力のある人材確保が課題

教科担任制は、教科ごとに決まった教員が教える形で、中学校や高校で行われています。これに対し、小学校では学級担任の教員が、ほぼ全ての教科を教える「学級担任制」をとってきました。

ただ、すでに導入が進んでいる学校もあります。文科省が18年度に全国の公立小学校を調査したところ、小六では音楽で55.6%、理科で47.8%がその教科を担当する教員が教えていました。

一方で、算数は7.2%、外国語は19.3%、体育は10.5%にとどまっており、教科によってばらつきがあります。

今回の報告書には、教科担任制に先行して取り組んだところは、授業の質の向上や中学校への円滑な接続、担任教員の授業数が減ることで授業の準備の充実や残業の減少などの効果がある、とも指摘しています。

とはいえ、専門知識をもち、子供に分かりやすく教える力も備えた人材を、必要な数だけ確保できるかは課題です。また、一人の子供に複数の教員が関われば、多面的にその子を理解できる反面、学級担任が接する時間が減り、学習や生活上の異変に気付きにくくなるかもしれません。それを防ぐためにも、担任と専科の教員同士の細やかな情報交換が欠かせません。

『教育技術』2021年10/11月号より

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