子供の提出物チェック・採点・コメント術―子供たちの力を借りて、時短&省力化も実現しよう

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太

学習ノート、テスト、プリント、作文……。毎日の提出物を迅速かつ的確にチェック、コメントすることは、子供たちを伸ばす上で大切な仕事です。とはいえ、それが担任にとって大きな負担であることも事実。スピードと丁寧さを両立させつつ、できるだけ負担を軽減する工夫や、子供たち自身にチェックを委ねるシステムづくりについて、宮城県公立小学校教諭・鈴木優太先生が解説します。

執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太

鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。

対面型よりも「横並び型」で

授業中、子供たちが一人一人ノートやプリントを教師の所へ持ってきて、採点やチェックをする場面があります。私はこのチェックを、子供と向き合う一般的な対面型では行わず、担任と子供が肩を並べる「横並び型」で行っています。

対面型で行う場合、ノートを「くるっ」と回す作業が発生します。この「くるっ」が原因で、学びのスイッチがオフになってしまう子もいます。横並びで「同じ方向」から「同じノート」を見ながら声をかけられる方が、子供たちにとっては安心感が高く学びやすいのです。
具体的にどうやるのかは、下のイラストと説明キャプションをご覧ください。

教師が子供のプリントを採点する際は、横並び型がおすすめ。動線は一方通行に。教室後方でチェックが済んだ子は、前面に移動し、黒板に貼られた自分のネームプレートを移動させる。全員の学びを可視化する仕掛けだ。
動線は一方通行。教室後方でチェックが済んだ子は、前面に移動し、黒板に貼られた自分のネームプレートを移動させる。全員の学びを可視化する仕掛けだ。

こうしたチェックの際には、長い行列や待ち時間をつくらない工夫も必須です。

そこで、子供立ちの動線を「一方通行」(上イラスト参照)にしています。
はじめは「1問限定チェック」にして、スピーディーに採点していきます。その後、「5問目までの自己採点チェック」など、あえて時間差が生まれる課題を出すなどして、緩急をつけて取り組んでいます。

平等に回収できる「班番号」

授業の中で取り組んだノートやプリント類は、「班番号」を活用して回収します。
「班番号」とは、班内の座席に1・2・3・4の番号をつけたものです。次のように指示を出します。

1番は、ノートを開いて集めます。
2番は、プリントの向きを揃えて集めます。
3番は、お便りを取りに来てください。
4番は、次の時間にお願いします。

班内の座席に1~4番の班番号をつけ、番号ごとに仕事を与える。A班もB班もC班も1番は同じ内容の仕事を行う仕組み。
班内の座席に1~4番の班番号をつけ、番号ごとに仕事を与える。A班もB班もC班も1番は同じ内容の仕事を行う仕組み。

一日の中で全員が万遍なく仕事をします。
学級で平等に仕事を任されるシステムが、学級への所属感や安心感を育みます。班で回収したノートやプリントは班ごとにまとまっているため、返却もあっという間にできるという利点があります。

採点&コメント交換は「ABCパートナー」と

「ABCパートナー」を活用して、「ペアチェック」を行います。

Aパートナー……隣
Bパートナー……前後
Cパートナー……斜め

子供同士によるペアチェックは、ABCパートナーを活用。Aパートナーは隣、Bパートナーは前後、Cパートナーは斜め。

Bパートナーから花丸をもらえるように漢字小テストに取り組みます。始めてください

国語の漢字小テストや算数の練習問題は、「友達採点」(子供同士による採点)をします。

教師は、採点が正確かどうかをチェックします。こうした自己採点や友達採点の「精度」が向上すれば、学力も向上していきます。

Cパートナーと作文を交換して読み合います。赤鉛筆で「いいな」と思ったところに線を引き、コメントを書き込みます。サインも書きます

作文は、書き終えたら「コメント交換」をします。

40分間作文を書いて教師だけがコメントをしていた時よりも、10分間作文を書いて10分間子供たち同士で読み合ってコメントをするようになってからの方が、作文の「量」も「質」も見違えるようによくなりました。
大きな行事の時だけ作文を書くのではなく、日常的に書き、短時間で読み合うサイクルを積み重ねていくのもポイントです。

個人フォルダは子供が「自分で更新」

「個人フォルダ」は、子供たちが「自分で更新」できる所に設置します。教室は掲示場所が限られるため、廊下などに貼ります。

「個人フォルダ」は、子供の手の届く高さにクリアフォルダなどを設置し、新しい作品を子供たち自身で更新する。
「個人フォルダ」は、子供の手の届く高さにクリアフォルダなどを設置し、新しい作品を子供たち自身で更新する。

書きたてほやほやのプリントや作文は、自分の手で「即」掲示物化します。
上写真のような「個人フォルダ」の前では、授業時間以外にも、知的な対話や交流が自然発生します。

また、家庭学習プリントを「個人フォルダ」に入れて提出する「自分チェック」で、提出の習慣化を啓発できます。提出者も未提出者もひと目で分かるからです。

テストは時間内全員返却&「パーフェクトチャレンジ」

単元テストは、45分間の授業時間内に採点や直しまで行います。極力、その日のうちに得点の記録や返却までできるように、1校時か2校時にテストの時間を設定しています。

早く終えた場合「見直し、解き直し、書き直し」を行うことを勧めています。「書き直し」とは解答欄を指で隠して、もう一度問題を解いて解答を脇に書くテクニックです。

テストで満点をとるためには「見直し・解き直し・書き直し」が大切。
テストで高得点をとるためには「見直し・解き直し・書き直し」が大切。

満点をとる自信がある子は、「パーフェクトチャレンジ」(「横並び型」の教師採点)です。

行列を長くしないため、教師は間違い箇所のチェックだけを行います。丸は、後から付けています。

テストは一度預かり、「表裏満点」の時だけ教師と両手でがっちり握手(またはグータッチ)ができます。そして、黒板にチョークで書いた栄光のトロフィーに名を刻むこと(名前マグネットを貼る、名前を書く)ができます。一つでも間違いがあった時には、これができないという、それだけのルールです。

チャレンジしなくてもかまいません。「お願いします!」「ドキドキするぅ!」などと祈るように自分の答案用紙を見つめる子供たち。緊張感を生み出すために導入した手立てですが、テストをとても楽しみにする子供たちが増えたのです。学級平均95点前後の結果に自信をつけ、学習態度も変容していきました。

タイマーが鳴ったら全員のテストを回収し、早急に採点(間違いチェック)します。
こういう場合に生じる待ち時間の間、子供たちがどう過ごしているかが、伸びる学級と荒れる学級との分かれ目です。
1分1秒を無駄にしない自学を、低学年から推奨していきましょう。

採点を終えたら全員分のテストを返却し、直したものを再び全員分回収します。テスト中は「無言」、テスト返却後は「学力が伸びる対話はどんどんする」ことにしています。

家庭学習ラベルは「自分で貼る」

家庭学習は、始業前に全てチェックしています。
漢字練習帳などのノート類は、開いて教卓に提出します。丁寧に書かれていて、かつ一文字目に読み方が書いてあるとA、どちらかだけなら〇という、シンプルな評価を赤ペンで大きく書きます。

プリントやワークシートの場合、自己採点(あるいは家族採点)の正確さを見ます。家庭学習の場合は、子供たちの「自己評価」を見ながらスタンプを押しています。

こうした家庭学習の提出忘れゼロを達成するために劇的に効果があるのが「家庭学習ラベル」です。
ビニールテープを4㎝に切って出席番号を書いたものを、子供自身で家庭学習ノートやカードの背表紙上端に貼っています(下写真)。

提出忘れを劇的に減らす「家庭学習ラベル」。出席番号の書かれたテープを自分で貼って提出する。
提出忘れを劇的に減らす「家庭学習ラベル」。出席番号の書かれたテープを自分で貼って提出する。

このラベルは、5人ごとに「色」を変えています。
家庭学習のノートやプリントが入ったファイルは、このラベルを見ながら、同じ「色」が5人分揃ったものから返却するようにします。まだ5人分揃っていない「色」についてだけ番号を確認し、未提出者に個別に声かけをします。

「家庭学習ラベルが貼られたものが家庭学習」とはっきり識別できることもあり、提出を忘れる子がいなくなりました。そのためには、「自分で貼る」&「自分で貼り直す」ことがポイントです。

テストなどを出席番号順に回収したい時にも、この5人のグループを活用しています。

連絡帳は原則、使用しない

毎週金曜日に、次週の「週予定」を本人用と保護者用の2部配付し、教室にも掲示しています。
時間割、持ち物、提出物は、この「週予定」に記載しています。予定などを連絡帳に書き写していた時間を、振り返りやアクティビティ、係活動の発表の時間にして有意義に使っています。

時代は刻々と変化しています。連絡帳は個人情報の塊です。欠席の連絡等を近所の子に預けることに大きなリスクを感じている保護者がいます。給食も食べずに連絡帳の返事に追われている先生方の働き方も問題視されています。学校や学年の方針も踏まえ、使い方について再考する必要があると考えています。

私は、スーパーマーケットに買い物に行くと、よく「お客様からのご意見をお聞かせくださいコーナー」の投稿を読みます。店長の回答が、連絡帳のお返事の参考になっています。
丁寧な返事が必要な場合には連絡帳で全て解決しようとはしません。電話したり、直接会ってお話ししたりするようにしています。私は、連絡帳は「緊急の連絡がある場合のみ使用」し、原則は「使用しない」方針です。

イラスト/ terumi

『教育技術 小一小二』2019年10月号より

【鈴木優太先生 連載】
子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
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