【相談募集中】給食指導の考え方を教えてください
好き嫌いを理由に量を調整してもいい? 給食指導の目的とはそもそも何でしょうか? みん教相談室に届いたお悩みに対する専門家からのアドバイスを読んで、給食指導と食育について考えてみませんか。
回答/福岡教育大学教職大学院教授・脇田哲郎
目次
Q1 給食の量を調整してもよいですか?
四年生の担任をしています。 給食の考え方について質問です。
給食の量を子供たち一人ひとりと調整(増やす、減らす)をしてもよいですか? 特に、牛乳やチーズ、パン、納豆、魚の切り身などの個々に分かれている物を調整してもよいですか?
私の学校のスタンダードでは、個物は調整不可で、食べ切れないときは残すというルールがあります。(夏至先生・20代男性)
A1 食育を行った上で調整することはあっていいと思います
給食の食べる量を自分で調整することはあってもいいと思います。
ただし、今の自分が食べられる量を意思決定する。食べられるならば、少しずつ、食べる量を増やしていくという方向での意思決定です。
嫌いだから残すというのでは、不十分です。
個々に分かれているものの扱いについては、学校が、そのように取り決めておられるのなら、それを基本に考えられたらいいのではないでしょうか。
食育の6つの視点(食事の重要性、心身の健康、食品を選択する能力、感謝の心、社会性、食文化)などの学習を通しながら、食材に含まれる栄養素に関する理解、生産者や給食を作ってくださる方々への感謝の気持ち、アレルギーなどで食べたくても食べられない友達がいることなどを理解する心を涵養し、子供たちが今の自分が食べられる量を意思決定することができるようにすることが必要だと考えます。
Q2 給食の目的は、全員で完食することですか?
給食について、一度配膳した物を児童の判断で自由に戻す光景をよく見かけるようになりました。
戻す理由が「量の調節」なら担任が調整すればよいのかと思います。 減らす理由が「好き嫌い」で、目的が完食というのは、疑問です。 担任がお休みで補充に入りますが、バットから一度なくなったおから炒めが、8割近く、この戻し行為で戻ってきたのを見て、疑問は増しています。
再度、確認です。給食の目的は、全員で完食することですか? 専門家チームの納得できる回答をお願いします。私の考えを改める必要があるかもしれません。よろしくお願いします。(よろしくお願いします先生・50代女性)
A2 サンプル量は食べられるようになることを目指しましょう
基本は、盛られた食材を残さず食することだと思います。そのためには、自分が食べ切れる量を申告することが大切です。ただし、好き嫌いで減らすのではなく、今の自分の適量として「多めにしてください」「普通にしてください」「少なめにしてください」などの分量を表す言葉を教えて、その言葉で、配膳をする友達にお願いするように指導することが大事です。
各学年に示されている給食のサンプル量は、食材に含まれる栄養素が身体に及ぼす働きについて考えられています。もちろん、 アレルギーなどで食べたくても食べられない友達がいることなどは理解する必要がありますが、基本的には、 一人一人がこれくらいの量を食べられるようにすることを目指すとよいと思います。
また、「食品ロスは今や社会的な問題となっており、日本で捨てられる食品の量で飢餓で苦しむ人々を救うことができること」や、「自分たちが給食で食している食材は丹精込めて生産者が育てたものであり、美味しく食べてほしいという調理者の想いや、食材を安全に届けたいという流通に携わる人々の願いが込められている」ということに思い至るようにしたいものです。
これらの内容は、食育の視点を系統的に学ぶ「食に関する指導」で培われていきます。
学校で、何を、どのように残すのかということを論議する前に、各学年の発達の段階に即した意図的、計画的な食に関する指導の実施が求められます。
Q1「給食の量を調整してもよいですか?」への回答も参考にしてください。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。