ケース別に解説!支援が必要な子のつまずき支援法【低学年・学習編】
低学年の子供が、二学期に直面しがちなつまずきに対して、担任や学級でできるサポート法を紹介します。今回は学習面についてです。
執筆/聖徳大学大学院教職研究科教授・腰川一惠
こしかわ・かずえ。公認心理師、臨床発達心理士、スーパーバイザー。専門は、特別支援教育、特別支援教育コーディネーターの研究など。『発達障害の子をサポートする学習・生活支援実例集 小学校』(池田書店)など、著書多数。
目次
【国語】音読ができない
音読が苦手な子供の中には、単語や文をまとまりとして捉えることが困難な場合があります。同じ行を繰り返し読んだり、行を飛ばして読んだりすることもあります。音読はできても、文章の意味を理解しにくい子供もいます。読むことで精いっぱいで内容をイメージすることができていません。
このように、音読ができないことが、どの背景でできていないのかを見極めていくことが必要になります。
単語や文をまとまりとして捉えることが難しい場合は、単語のまとまりごとにスラッシュを書き入れる方法や、厚紙で作ったスリットを教科書に当てて、読む場所だけが見られるようにする方法などがあります。音読で使う単語だけを書いたカードを用意して、単語をスムーズに読めるように事前に練習することも有効です。
文章の意味を理解しにくい場合は、その状況が分かるイラストを描いて見せてみることや、読んだ部分を分かりやすく説明してみることで情景をイメージしやすくします。
音読をすることを負担に思っていて、家庭で音読の宿題を嫌がるようであれば、保護者が先に音読をして、聞いてもらい、「この場面はどうだった?」と内容についてやり取りするのもよいでしょう。内容をイメージできることで興味をもてるようになれば、短い文から音読を促すようにします。
【国語】文字を書くことが苦手
ひらがなやカタカナが鏡文字になってしまう、文字がなかなか覚えられない、漢字の部分を間違える、文字の形が整わずにマス目の大きさに合わせて書くことができないなどが見られることがあります。
このような場合は、文字の形を捉える視覚認知ができないことが原因の一つです。文字の形が捉えられても、書く動作として一つ一つの手順を追っていくことが難しい場合もあります。また、手先の不器用さがあり、鉛筆を動かす動作と目との協応ができないことが影響することもあります。
文字の形を言葉で言いながら書いていくことも有効です。「え」は「チョン、よこ、ななめにおろして、おやまになってスルー」と書き順に合わせて、ヒントとなる言葉を添えていきます。
漢字の場合は、形を捉える工夫をしてみます。漢字全体をまずは見せて、次にへんとつくり、もしくは部品を分けたカードを示して組み合わせてもらいます。このときにも部品に名前を付けておきます。最終的には、漢字の部品を意識して漢字を書くように促します。
【国語】作文が書けない
ひらがな単語の読み書きはできてきたものの、作文は「難しい」と思ってしまい、授業中に完成できない子供がいます。順序立てて説明することや、状況をうまく伝える表現力が豊かではないことなどが原因となります。
まずは、あったことを思い出して言葉にしてみます。手がかりとして、写真があると言葉にしやすくなります。「何をした」という話の要点を「いつ?」「どこで?」「だれと?」と聞いてみると、より具体的な話になります。
話したことは一つ一つカードに書いていき、伝えたい内容を増やしていきます。最後にすべてのカードを見ながら、伝えたい順番に作文用紙に写します。
【算数】計算ができない
二学期には、一年生はくり上がりのあるたし算、くり下がりのあるひき算、二年生はたし算、ひき算のひっ算のいろいろなパターンの計算を学びます。くり上がり、くり下がりのある計算や、ひっ算ができるためには、数の概念の定着も必要ですし、計算の手順の理解、ワーキングメモリ(答えを記憶にとどめておいて書くなど)ができないといけません。
くり上がりのあるたし算、くり下がりのあるひき算ができるためには、数の分解の力が必要です。13を10と3に分解する、9を3と6に分解するなど、ある数を二つの数に分解することが難しい場合があります。
「13は10と3に分かれるよね」と、百玉そろばんやブロックなどを使って視覚的に分かるように見せます。分かったら、計算式の下をさくらんぼ図にして記入してもらいます。できるようになれば、子供自身にも百玉そろばんやブロックを操作してもらい、子供自身で数の分解を行うように促します。
ひっ算の場合は、順番に計算することを理解するまでは、計算の手順をカードに書いておき、手順を読みながら計算をしてみるとよいでしょう。また、計算をするときには、くり上がり、くり下がりで桁をそろえて書けるようにマス目を使います。一の位は赤、十の位は青のマーカーで色を付けるなど、位を間違えない工夫をしておき、手順カードにも記載しておきます。
【算数】文章題になると分からない
計算問題はできても、文章題になると分からなくなる子供がいます。文章題を解くためには、問題文を読んで状況を読み取り、「何を求められているのか」を正確に把握して、式を立て、計算をする必要があります。そのどの段階でつまずいても、正しい答えを求めることができません。
読みの苦手さがあったり、集中力がなかったり、問題文を最後まで読まずに解いてしまったり、思い込みで解いてしまったりしても、文章題は解けません。
問題文の中の分かっていること(〇人、〇円など)に印を付ける、質問されていること(残りはなん人でしょう、いくらになるでしょうなど)に下線を引くなど、大事な部分に印を付けながら読んでいきます。
また、問題文を図やイラストに描いてみると分かりやすくなります。問題文中に書かれている数字もできるだけ図に書き込み、質問されているところには「?」マークを付けておくと、視覚的に分かりやすくなります。
子供にも問題文を図やイラストに描いてもらいますが、どうしても図やイラストにできない場合は、問題文が示す内容を図や絵にしたヒントカードを用意して、必要な場合は手を挙げてカードをもらうようにします。ヒントカードがもらえるのは3回までなどとルールを決めて、子供が自分で考えられそうなところは、ヒントカードなしで考えるようにします。
【全教科】集団での話合いができない
授業中にグループで話し合うことが苦手で、話合いの場では黙ってしまったり、話合いの輪に入れなかったり、一方的に思っていることを押し付けてしまったりする子供がいます。話の内容が理解できていない、自分の思っていることをうまく表現できない、相手の意見を聞くことができないなどが原因としてあり、これらのいくつかが複合していることもあります。苦手な部分を見極めて、対応していくことが必要になります。
話合いのテーマや内容、終了時間などを書いておき、これから話し合うことをいつでも確認できるようにしましょう。また、話合いでの役割を決めておくと、自分のやることがはっきり分かります。話合いの進め方、グループでの役割などをまとめたワークシートなども用意しておき、分からなくなったらワークシートですぐに確認できるようにします。
意見を表現しにくい場合は、話合いを始める前に、自分の意見をまとめる時間をつくり、話合いのときには、その内容を読むようにしてもよいでしょう。グループの中に記録係をつくり、話合いの内容を書き留めたり、適宜まとめたりしながら、話合いの内容が分かるようにします。聞き取りが苦手で理解に時間がかかる子供は、記録係の隣に座ってもらうと、話合いの途中でもその記録を見ることで内容を理解できるため、話合いに参加しやすくなります。
いろいろな人の発言を待っている状況が苦手であれば、発言する人が「発言カード」を持って発言するというルールをつくります。発言カードが自分のところに来るまでは、発言ができないというルールを分かってもらえます。
【体育】ボールを使った運動が苦手
ボールを使った運動では、ボールが飛んでくる速さや方向を捉え、それに合わせて体を動かす必要があります。ボールを使った運動が苦手な子供は、ボールの動きを視覚で捉えることや、ボールの動きと自分の体の動きやタイミングを合わせることが難しいのかもしれません。また、ボールを投げたり、蹴ったりするときの力加減が分からないことがあります。恐怖心があり、ボールを使った運動をやりたがらない子供もいるでしょう。
まずは、ボールに慣れることから始めましょう。ボールを転がしてキャッチするなどのような、ボールを受け取る、相手に向かって投げるという動作から始めます。また、相手からボールを受け取るときに恐怖心が高くなる場合は、相手に見立てた場所にボールを投げることや、玉入れの要領でかごをめがけてボールを投げ入れるゲームをしてもよいでしょう。チーム分けをして、入れた玉の数を競い合うと、楽しさで恐怖心も忘れてしまいます。
力のコントロールがうまくできない場合は、手や足の振り幅によって、ボールが相手のどこまで届くのかを体験してもらいます。「相手のほうにまっすぐに、ちょっと力を入れて投げたら届いた」というように、体験した中でうまく相手に届いた方法を言葉にしてみると、力のコントロールがイメージしやすくなります。
ルールを覚えられない、ルールが守れないため適切にボールを投げられないこともあります。そのような場合は、ルールをしっかり確認して、どういう投げ方がよくて、どういう投げ方がよくないのかという見本を見てもらいます。ルールを守れたり、最後まであきらめず取り組めたりしたときには、がんばりを称えます。
【音楽】楽器の扱いが難しい
リコーダーや鍵盤ハーモニカなどの楽器がうまく演奏できないという子供がいます。楽器は、手や指先の力、息を吹く力が十分に発達していないとうまく演奏できないことがあります。楽譜が読めないため、演奏ができないこともあります。また、特定の音が苦手で楽器に触りたくないということもあるでしょう。
楽器をしっかり支えることができるように、鍵盤ハーモニカならしっかりと机に置いて演奏する、リコーダーなら親指をひっかけるフックを使ったり、首から下げられるリボンを付けたりして固定します。
楽譜が読めない場合は、楽譜にあらかじめ色分けしたドレミを振っておくとよいでしょう。鍵盤のある楽器は、鍵盤にも楽譜と同じ色のシールを付けておくと、色でどの鍵盤を弾けばよいのかが分かります。
イラスト/浅羽ピピ
『教育技術 小一小二』2021年8/9月号より