密を避けつつみんながつながる授業づくりの工夫
夏休み明けの子供たちは、楽しかった思い出をたくさん話すことでしょう。それぞれの家庭で過ごしていた夏休みでしたが、また学級で生活をすることになります。再び集団となった休み明けも、密になるのを避けながら、この時期だからこそできる工夫を子供たちとして、楽しい授業を行いたいものです。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・阿部美弥
目次
授業の前に「密にならない環境」チェック!
- 換気は十分にできていますか。
- 机と机の間をできる限り空けていますか。
- マスクの着用をしていますか。
- ビニールテープやケンステップなどを利用して、立ち位置の目印を付けていますか。
- 子供たちが下校した後の消毒は済みましたか。
環境が整ったら、授業づくりへ!
子供の意見や考えを生かした授業づくり
自分たちで考える習慣を身に付ける
「今、密にならないことがどうして必要で大切なのか」について、子供たちと話し合って考えてみることが有効です。
「離れましょう」「マスクを着けましょう」と教師が呼びかけることももちろん大切な指導です。さらに、それが子供たちの理解と実感を得たものになると、しっかりと続けていくことができるのではないでしょうか。「距離や換気、マスクがなぜ大切か」「自分たちのクラスでできる工夫はどんなことか」を話し合い、子供たちとともにルールを考え、主体的に実践できるような環境をつくります。
また、低学年の子供たちなりの、密を避けた自分たちが楽しめるアイデアが生まれることもあるでしょう。
一方的な指導ではなく、子供たちが自分事として密を避けることを考え、続けて実践していけるように支援し、日々授業のなかで自分たちの考えをもって授業をつくっていくことが、問題を見付けていく力を育てていくことになるでしょう。
子供たちなりに活動の意味や訳を考えて、工夫して取り組んだ活動を教師はしっかりと価値付けをしましょう。
お互いのがんばりを認め合ってもっと友達とつながろう!
グループ活動はできませんが、学習や生活のいろいろな場面で、お互いに認め合う場をつくることで、協働の意識をもったり、お互いのよさを理解し合ったりすることにつながります。
友達のがんばりを認め、伝え合うアイデア
- 「この時間のスーパースター」など、そのとき活躍した友達を紹介する。学級目標にちなんだ名称にすると盛り上がります。
- 「よいところ見付けカード」に、絵や言葉で直接よかったことを書く。
- 「ニコニコシール」を教室に貼る。みんなのがんばりが溜まっていく様子が見える。
- 「オリジナルマーク」を考え、友達に贈る。
- 「がんばったねマーク」を学級で考え、友達に描いて贈る。
このような、友達に認めてもらえた経験から、「友達に分かってもらえた」と、離れていても心がつながっていることを実感してもらいたいです。
また、これらの感想をタブレットでの通信や共有サーバーなどで友達に届けることもできます。
子供たちの実態や状況に合わせて、視聴覚機器も上手に活用していくとよいでしょう。
個の記録だけではない! 集団の学びとしてのICTを用いた授業
密を避ける工夫として、視聴覚機器を使うことも考えられます。
視聴覚機器を使った授業例
校内「共有サーバー」を活用した「全校の友達作品展」(全学年・図工)
デジタルカメラと教室配当のパソコンを用います。
- 子供たちの夏休みの作品などをデジタルカメラで撮り、データにする。
- 校内の「共有サーバー」に保存する。
- 他のクラスの分も入れてもらう。
- テレビにパソコンをつなぎ、画面に作品を映し、子供たちと鑑賞する。
この方法だと、作品を並べた狭い空間に大勢が集まることなく、作品の鑑賞を行うことができます。また、感想や鑑賞カードをデータにして共有サーバーにのせて、相手に伝えることもできると考えられます。
タブレットを使った「夏の音楽づくり」(一年生&二年生・音楽)
音楽づくりの際は、タブレットを活用しましょう。夏休み明けらしく、「祭り」や「お囃子」をテーマにしても楽しいですね。
- 数人のグループで、決まった小節数のリズムを楽器で演奏する。
- 演奏の様子を、担任や友達がタブレットで録画する。
- 全グループの動画をつなげて、鑑賞する。できた動画は、「二年○組音頭」など名前を付けて、学級の夏祭りで流すことなどもできます。
タブレットでミッションクリア! 校内探検(一年生・生活)
一年生の校内探検では、グループごとにタブレットを持って校内探検に行きましょう。
- 学校の不思議について、子供たちと疑問を出し合って、教師がまとめておきます。
- タブレットには「給食室でお仕事をしているのは誰?」など、子供たちの疑問のなかの一つをミッションとして書いておきます。
- 少人数のグループでタブレットを持ち、探検に出発します。
- 見て分かったことをタブレットの写真や動画に記録します。
- 教室に戻り、テレビにつないで発表会をして、全員で内容を共有します。
校内発表会(全学年・音楽や体育など)
- 学級で器楽合奏や短縄の様子などを映像に収めます。
- 校内テレビ放送などで流したり、サーバーに入れたりします。
- 各教室で鑑賞し合います。
視聴覚機器を用いて、子供たちのアイデアも取り入れながら、楽しい授業を工夫したいですね。
ノートや文字などの個別指導は座席で
低学年の子供たちは文字を書いたり、ノートをとったりすることが難しいものです。また、だからこそ、個に応じたていねいな指導が必要です。教室の中での子供同士の密接や密集を避けるために、集まることなく、教師が積極的に動くようにしましょう。
イラスト/佐藤雅枝
『教育技術 小一小二』2020年9月号より