「係活動の種」を育てて創造的な活動へ!低学年の係活動のポイント
係活動は、自分たちの生活を見つめ、自分たちの力で楽しく豊かな学級をつくることができる創造的な活動です。学級の活動に自分たちが関わることで、学級の一員としての意識が育ち、社会参画の意識が高まります。低学年としての発達段階を考え、はじめは支援を手厚くしながら、係活動をスタートさせていきましょう。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・山本恭兵
目次
一年生の係活動
まずは子供の様子をじっくり観察
入学したばかりの一年生では、すぐに係活動を立ち上げようと焦る必要はありません。みんなと学校生活を過ごすなかで、保育園や幼稚園の経験を基にした「係活動の種」ともいえる姿が見えてくるはずです。まずは子供の様子をじっくりと観察しましょう。その際に、園からの引き継ぎや要録を参考にしてもよいでしょう。
「係活動の種」は「みんなの役に立つ姿」
子供の様子を見ているうちに「自分のこと」だけでなく、「みんなの役に立つこと」を行う姿が見えてきます。例えば、朝教室の電気をつけたり、窓を開けたり、机をそろえたり……。それこそが「係活動の種」です。
そういった姿を朝の会などでみんなに紹介します。視覚的に気付きやすくするために、子供が見付けた場所(スイッチ、窓など)に教師が目印(星のカードなど)を貼ることも有効です。すると「僕もやりたい」「私はこんなことができる」「他には何があるかな」と、子供からいろいろな活動が生まれてくるでしょう。
まずはやってみる、そして続ける
「みんなの役に立つこと」を見付けた子供が出てきたら、危険性などをチェックし、子供に任せられる範囲であれば、まずはやってみるよう促しましょう。実際にやってみることで、学級のための仕事の楽しさを味わうことができます。
このとき、必ずしも全員が取り組まなくてはいけないというわけではありません。活動をしている子供を見て、周りの子供もそのうち活動をしたくなってくるでしょう。
次のポイントは、「継続して取り組むことができる」ということです。みんなの役に立っても、活動がそのときばかりでは係活動としては成り立ちません。
一学期の間くらいを目安として、続けて取り組むことができることを一人一つ選び、活動していけるようにしましょう。
一年生は当番的な活動から
「みんなの役に立つこと」だと、当番のような活動になりがちで、なかなか創造的な活動にはなりません。しかし、今はまだそのような姿でかまいません。
小学校生活の入門期に「みんなのためにがんばることが楽しい」という社会参画意識を育むことで、だんだん活動にも広がりが出てきたり、工夫が表れたりしてきます。
二年生の係活動
一年生の経験を生かして
二年生になると、一年生のときに係活動の経験をしているため、子供も活動のイメージをもちやすくなります。まずは子供たちに、「一年生のときにどんな係活動をしましたか」と問いかけてみましょう。クラス替えをしている場合などには子供たちからいろいろな活動が出されるので、みんなで共通理解をします。
そのうえで、一年生のときの当番的な活動から、楽しい学級をつくる創造的な活動に意識が向くように支援していきましょう。
年間の見通しをもつ
係活動は年間を通して取り組みます。どの時期にどんな力を身に付けさせるか、教師が見通しをもっておくようにしましょう。どのタイミングで係の編成を変えるのか、活動がより創造的になるように支援するのはいつなのか、どんな活動ができそうかなどを考えておくと、計画的に指導することができます。
活動のポイントは「学級を楽しくすること」
一年生の係活動のポイントが「みんなの役に立つこと」「継続して取り組むこと」であるのに対し、二年生はより創造的な活動になることをめざします。子供に対しては「学級を楽しくする活動」と問いかけると、分かりやすいでしょう。学級を楽しくするためには、いろいろな工夫をすることが必要です。自分でできること(落とし物を拾う、整列する、保健室へ行くなど)は、係活動としてはふさわしくないことも理解できるようにしましょう。
〈係活動の例〉
•クイズ係(帰りの会にクイズを出題する)
•飾り係(教室を季節の飾りで飾る)
•おみくじ係(朝の会でおみくじを引く)
係の決め方・始め方
① これまでの経験を基に、どんな活動ができそうか出し合います。
② 出てきた活動を、創造的な活動と当番的な活動に分類・整理します。
当番的な活動で、みんなで順番に行ったほうがよいものは日直などの仕事にします。ただ、4月当初から必ず分けなくてはならないのではなく、学級や子供の実態に合わせて進めていくようにしましょう。
③ 子供が自分のやりたい係を選び、所属を決めます。
基本的に子供の希望を生かすようにします。特別な場合を除いて、人数を指定することはありませんが、係活動は豊かな人間関係を築くよい機会なので、3名以上が望ましいです。
係活動が楽しくなるように「認める」
子供たちはそれぞれの思いをもって係活動をスタートさせます。教師から見て当番的で創意工夫があまり見られない活動もあるかもしれません。しかし、はじめからあまり教師が手を入れるのではなく、子供のやりたいという思いを尊重したほうがよいでしょう。
子供の思いを認め、「係活動って楽しいな」と思えるようにすることが第一歩です。活動を続けるうえで壁にぶつかったり、停滞したりすることが出てきます。そのときを見極めて、教師が適切な支援をすると効果的でしょう。
イラスト/佐藤雅枝
『教育技術 小一小二』2020年4/5月号より