願いを生かした低学年向け「学級目標」のつくり方

みんながめざす学級の姿の「道しるべ」になる学級目標は、子供たち、担任、学校、保護者の思いや願いを生かしてつくりましょう。 学級目標を身近に感じられるような工夫があるといいですね。

執筆/神奈川県公立小学校教諭・源 憲一

願いを生かした学級目標のつくり方

思いや願いを生かす

低学年では、できるだけ簡単な言葉を学級目標にしたり、学級の合言葉として位置付けたりと、子供たちが学級目標を身近に感じられるような工夫をして、「自分のクラスが大好き!」と言えるようにしていきたいものです。

進学・進級で不安な気持ちを抱えている子供もいます。学級目標があることで「楽しくなりそうだな」と安心して学校生活を送ることができるようにしたいものです。

まずは、学級の様子や実態を把握しよう

学級目標は、急いでつくらなければいけないものではありません。1か月ほど、子供たちが学習・休み時間・当番活動などの具体的な場面を経験し、教師も子供も学級の様子を知ることができた頃に、学級目標づくりに関わる投げかけをしましょう。

掃除をしている様子

【子供たちの実態を把握する場面例】

  • 話を聞くことができているか
  • 自分の考えを言うことができているか
  • 家庭学習や宿題をやってくるか
  • 時間のけじめがついているか
  • 整理整頓ができているか
  • 友達と関わることができているか
  • 乱暴な言動はないか

など

学習面・生活面の両面を見ましょう。

子供に合ったストーリーを演出しよう

子供たちにとって、学級目標があることで毎日の学校生活が楽しみになるようにしたいものです。低学年では、学級目標にまつわるストーリーを大切にしていきましょう。子供たちの関心が高く、みんなが気に入るテーマやキーワードがよいでしょう。

ストーリー例

『まほう』

1年間、みんなは魔法使い。一人ひとりががんばったり、みんなで力を合わせたりすることで、学校生活が楽しくなる!

〈「まほう」を意識させる「しかけ」例〉

  • ある日、教室にステッキが置かれる。
  • ステッキを使って、「トゥルルルン」などの魔法の言葉を担任が言う(しばらく続ける)。
  • 子供たちががんばったり、力を合わせて何かを成し遂げたりしたとき(教室をきれいに掃除できた、時間通りに授業が始まった、など)に、「すごいね。『まほう』みたいだね!」と言う。
  • ステッキ、「トゥルルルン」、一人ひとりががんばる、力を合わせることなどが「まほう」として連想されるくらいになるまで続ける。

学級目標について話し合う段階へ……

他のストーリー例
 『ぼうけん』
 『たんけんたい』
 『ダイヤモンド』
 『たからばこ』など

話し合って学級目標をつくろう

思いや願いを出し合う様子

めざす方向性が共有できたら、学級目標として一つの形(合言葉のようなもの)にまとめます。イメージしやすく、愛着をもてる言葉がよいでしょう。例えば、キャッチフレーズ的なもの、シンボル的なものなどが上げられます。

一般的に、低学年は自分の好みで「これがよい」と考えたり、譲れなかったりすることがあります。ここで、事前に子供たちに少しずつ浸透させておいた「まほう」などのストーリーが生きてきます。みんな気に入っているので、学級目標は「『まほう』がよい!」と合意形成に向かうことができることでしょう。

「種まき」が大事です
学級目標をつくるときには、教師の思いが一人歩きしてはいけません。子供たちに必要感がないとただの合言葉づくりになり、子供たちは楽しい学校生活を送れないかもしれません。例で示した「まほう」が、子供たちにあまり浸透しない、気に入って使っている様子がないということが見られたら、次のストーリーや方法を試しましょう。事前の「種まき」が大事です。教師の思いに偏りすぎず、学校、子供、保護者、それぞれの願いを生かして素敵な学級目標をつくりましょう。

学級目標の掲示物をつくり、活用しよう

学級目標が決まったら、いつも意識できるように、教室のよく見えるところに掲示しましょう。一人ひとりの似顔絵や写真を貼ったり、手形を飾ったりすると「みんなでつくった目標」という意識をもつことができます。

また、学級目標は、どう活用していくかが大事です。日々、学級目標を意識して生活していくためにも、学級の成長が視覚的に分かるように掲示を工夫するとよいでしょう。

例えば、

•増えていく  •成長していく
•進んでいく  •完成していく

といった方法があります。目標を達成していく様子が実感できるとともに、教室環境が楽しくなります。

さらに、学級だより、学級会の名前、帰りの会でのふり返り、クラスソング、クラスマークなど、学級生活のあらゆるところで活用してみましょう。

学級目標が決まったら、個人のめあてを決めたり、みんなで目標に向かって活動したりします。個人のめあてに対して1週間ごとにふり返る時間を設けたり、活動のふり返りをていねいに行い、次の活動へつなげたりすることが大切です。

学級目標づくりは焦らずに……
一年生は、4、5月は学校生活に慣れることが最優先です。学級目標づくりは焦らずに進めていきましょう。お誕生会などの楽しい集会活動をしたり、運動会や遠足などの行事を経験したりして、学校生活の楽しさを感じてから学級目標づくりに臨むとよいでしょう。

イラスト/佐藤雅枝

『教育技術 小一小二』2020年4/5月号より

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