中教審が2022年度をめどに「教科担任制」を行うよう促す【教育ニュース】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」

先生だったら知っておきたい様々な教育ニュースについて、東京新聞の元教育担当記者・中澤佳子さんが解説します。今回のテーマは中教審が2022年度をめどに行うよう促している「教科担任制」についてです。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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写真AC

義務教育9年間で、学年間や小中間がスムーズにつながる指導体制を

一人の先生が一つの学級で複数教科を教え、生活指導もする。そんな光景が小学校では主流でしたが、近々一変しそうです。

中央教育審議会がこのほど、小学校から高校までを見通した改革案を含めた、これからの学校教育のあり方について答申しました。提言の大きな柱の一つは、小学校への「教科担任制」の導入です。

教科担任制は、学習内容の高度化や環境の変化についていけず戸惑う、「中一ギャップ」解消の一環として、横浜市の一部や兵庫県など独自に取り組む自治体もありました。それを本格的に広げようという提案です。

答申では、義務教育9年間を見通し、学年間や小中間がスムーズにつながる指導体制が必要だと指摘。特定の教科の指導が得意な教員がきめ細やかに指導することで、子供たちが理解を深め、学んだことが定着しやすくなるとして教科担任制の導入を求めました。

小五、小六を対象に、2022年度をめどに行うよう促しています。実施教科は、実験や観察が必要な理科、抽象的な思考力が求められる算数、そしてグローバル化で一層重みを増す英語を挙げました。

答申で挙げた利点は、子供の学びのためだけではありません。全ての授業を一人でこなす学級担任制より、教員の負担が軽くなるとも期待しています。

教科担任制は18年度の調査で、理科が47.8%

教科担任制は、目新しい話ではありません。06年2月の中教審教育課程部会の審議経過報告では、「確かな学力」の育成に向けて「小学校高学年の教科担任制の検討が必要」とし、小中連携の観点からも必要性を説きました。16年12月の中教審答申でも「専科指導の充実は、子供たちの個性に応じた得意分野を伸ばすためにも重要」としています。

さらに19年1月の中教審答申で、学校での働き方改革を巡る検討項目に「教科担任制の充実」が盛り込まれました。学力向上や小中連携に加え、教員の負担軽減という意義が添えられたのです。

とはいえ、一足飛びにはいきません。文部科学省の18年度の調査によると、教科担任制を小六で導入している公立小学校は、理科が47.8%に上るものの、算数は7.2%、外国語活動も19.3%。実技教科が比較的高い傾向で、最も多いのは音楽の55.6%でした。

これは、実技教科以外で専門的な指導ができる教員の不足を示している可能性があります。答申でも必要な教員の確保策として、小中両方で教えられる教員免許を取りやすくするため、共通の養成課程を設けたり、中学校教員が小学校の教員免許を得る要件を緩和したりするよう提案しています。

利点をどれほどうたっても、指導できる教員がいなくてはどうしようもありません。早急な手だてが求められます。教員を確保できるかどうかで自治体間にばらつきができ、子供の学びに影響することは避けたいものです。

『教育技術』2021年4/5月号より

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