コロナ下での「学校の新しい生活様式」特別支援教育のあり方とは

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新型コロナウイルスの感染拡大にいまだ収束の兆しが見えない中、その影響は特別な支援を必要とする児童生徒にも及んでいます。「学校の新しい生活様式」に基づく教育活動が求められているおり、これからの特別支援教育はどうあるべきかを考えます。

学校の新しい生活様式
撮影/金川秀人

増加傾向にある特別な支援を必要とする児童生徒

令和の時代を迎え、学校における特別支援教育のあり方にも変化が求められるようになってきています。近年、特別な支援を必要とする児童生徒数は増加傾向にあり、文部科学省の「学校基本調査」によると、特別支援学級に在籍する児童生徒の数は2013年度には小学校で120,906人、中学校で53,975人だったものが、2019年度には小学校で199,564人、中学校で77,112人となっています。また、通級による指導を受ける児童生徒の数も2013年度には小学校で70,924人、中学校で6,958人だったものが、2019年度には小学校で116,633人、中学校で16,765人に増加。小・中学校の通常の学級には6.5%程度の割合で、知的発達に遅れはないものの、学習面また行動面での著しい困難を示す児童生徒が在籍しているという推計もあり、このような多様化する子どもたちの実態に対応するべく、特別支援教育のさらなる充実が求められています。

さらに、今回のコロナ禍では、学校が臨時休校となった際に、特別な支援を必要とする子どもの学びをどう保障するかという課題も浮かび上がりました。特別支援学校などでは、保護者が仕事を休むことが困難な場合や、放課後等デイサービスでの受け入れが困難な場合に、感染防止に留意しながら子どもたちに居場所を提供した学校もあったといいます。

中央教育審議会の初等中等教育分科会が2020年10月に公表した「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜すべての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現〜(中間まとめ)」では、このような状況下で特別支援学校をはじめとする学校が障害のある子どもにとってのセーフティネットとしての役割を果たしており、社会全体で特別支援教育が果たす機能や役割等が再認識されているとしつつ、特別支援学校等だけでそのすべての期待に応えることは難しいと指摘。インクルーシブ教育の理念に基づき特別支援教育を進展させるために、障害のある子どもとない子どもが可能な限り共に教育を受けられる条件整備や、一人ひとりの教育的ニーズに的確に応える指導を提供できる多様な学びの場の整備を着実に進めていく必要があるとしています(下資料参照)。

新時代の特別支援教育の在り方について

(1)基本的な考え方

特別支援教育は、障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、子供一人一人の教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。また、特別支援教育は、発達障害のある子供も含めて、障害により特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものである。

一方で、少子化により学齢期の児童生徒の数が減少する中、特別支援教育に関する理解や認識の高まり、障害のある子供の就学先決定の仕組みに関する制度の改正等により、通常の学級に在籍しながら通級による指導を受ける児童生徒が大きく増加しているなど、特別支援教育を巡る状況が変化している。また、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による臨時休業により特別支援学校を始めとする学校が障害のある子供にとってのセーフティネットとしての役割を果たすなど、社会全体で特別支援教育が果たしている機能や役割等が再認識されるとともに特別支援学校等だけでその全ての期待に応えることの難しさなど、今後の課題も明らかになりつつある。

また、障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムの理念を構築し、特別支援教育を進展させていくために、引き続き、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられる条件整備、障害のある子供の自立と社会参加を見据え、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備を着実に進めていく必要がある。

文部科学省「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜すべての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現〜(中間まとめ)」より

どの子の学びも止めない支援体制の構築へ

これからの特別支援教育のあり方については、文部科学省の「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」でも議論が進められています。

ここでは、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に特別支援教育において求められるものを検討・整理しつつ、「障害のある子供の学びの場の整備・連携強化」や「特別支援教育を担う教師の専門性の向上」「ICT利活用等による特別支援教育の質の向上」「関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実」といった観点から今後の方策や改善案を検討。すべての教員を対象とした特別支援教育に関する研修の必要性や、新たな免許状創設の是非、就学支援のさらなる充実、障害の状態や心身の発達段階などに応じたICTの活用などが話し合われています。

長いところでは約3か月に及んだ今回のコロナ休校では、特別な支援を必要とする子どもに直接的な支援を行うことが難しく、もどかしい思いをした教員も多かったはずです。一人ひとりのニーズに合ったICTの活用をはじめ、どの子の学びも止めない支援体制の構築が求められます。

取材・文/葛原武史(カラビナ)

『総合教育技術』2021年1月号より

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