「JSLカリキュラム」とは?【知っておきたい教育用語】
日本語の指導を必要としている外国にルーツのある児童生徒は、いま5万人を超えています。この子どもたちにどのようにして日本語を指導し、かつ学校の授業への参加をスムーズにするか──。そのために開発されたのが「JSLカリキュラム」です。
執筆/大阪教育大学准教授・臼井智美

目次
日本語による学ぶ力を育成するために
日本では、1990年代以降、日本語を母語としない外国人の子どもが公立小・中学校等に多数在籍するようになりました。当初、日本語が全く理解できない子どもに対して手探りで日本語指導が行われ、なんとか日常会話ができる程度の日本語力を育てることはできていました。
しかし、そのような子どもでもひとたび学校の授業となると学習に参加できないことが教育課題として顕在化するようになります。そこで、教科の学習活動に日本語で参加できる日本語力の育成をねらって、JSLカリキュラムは開発されました。
JSLとは「Japanese as a Second Language」(第二言語としての日本語)の意味であり、JSLカリキュラムは、日本語を母語としない子どもに日本語を習得させ、学校での学習活動に参加するための力を育成しようとするための指導ツールです。
教師・指導者自身がカリキュラムを組み立てる
文部科学省は、JSLカリキュラムは「日本語の力が不十分なため、日常の学習活動に支障が生じている子どもたちに対して、学習活動に参加するための力の育成を図るためのカリキュラム」であると規定しています。そして、2003年に「小学校編」、2007年に「中学校編」のJSLカリキュラムを開発しました。
カリキュラムという名称ではありますが、いわゆる教育課程のように体系的に組織された学校の教育計画というものではありません。教師・指導者自身がカリキュラムを組み立てることを前提としています。
JSLカリキュラムには、「トピック型」と「教科志向型」があります。トピック型では特定の教科の枠組みにしばられない学習課題を設定し、教科志向型では各教科の学習課題を設定しますが、その追求過程に日本語で参加できる力の育成を目指しています。
そして現在、日本語を母語としない子どもには、日常会話力(生活言語力)の育成を図る日本語指導とは別に、教科学習に日本語で参加できる「学習言語力」の育成を図る日本語指導が必要だということが、広く教育課題として認識されるようになっています。