「モジュール授業」活用で授業時数を確保する!
コロナ禍への対応が目的ではないものの、モジュール授業を導入し、結果的に授業時数を確保できた学校があります。どのような経緯でモジュールの導入に取り組み、どのような工夫をすることで、教科等の実践として授業時数にカウントできる実践にしているのでしょうか。
執筆/兵庫県公立小学校・押部匡子校長、小嶋拓也教頭
早く過ぎる15分間なので、ねらいを明確にしないといけない
目次
1時間の授業を三つに分けて行うようなイメージ
研究を推進するメンバーの一員にあった小嶋拓也教頭は次のように話します。
「そもそもは学習指導要領の実施による授業時数増に対応するため、市の教育委員会からの提案もあり、昨年度モジュール授業の実践研究を始めました。というのも、本校では伝統的に児童の金管バンド活動が課外に行われていたため、高学年のプラス1時間分を放課後に入れることが難しかったのです。
では、教科の授業としてカウントできるようなモジュールをどのように行うかということですが、本校は学校規模が小さく、児童数が少ないため、コミュニケーション能力について研究に取り組んできていた経緯もありました。
そこで国語を中心として四年生以上で、コミュニケーション能力育成のためのモジュール授業を行おうということになりました(三年生以下は授業時数にはカウントしない、コミュニケーションの基盤をつくる時間)」
国語でコミュニケーション力を育む授業とするため、単純な15分のスキル訓練ではなく、1時間の授業を三つに分けて行うようなイメージで授業づくりをしていった、と小嶋教頭。
「モジュール授業は、朝の15分の帯時間、週3日分を1時間とカウントしています。その15分間が3回で1時間の授業になる形態、それぞれが15分で成立する形態、45分の授業とつなげて60分間の授業とする形態の三つの形態で実践をしています。」(資料1参照)
(資料1)モジュール授業の3つの形態
①45分こま切れ型 15分+15分+15分
→通常45分で行う授業を単純に3分割したパターン
②15分完結型 15分
→15分で完結する。
※①②のパターンは、連動している場合もある。
※①の中に②のように簡潔しながら、授業が進むパターンもある。
③60分ディープ型 15分+45分
→通常より長く設定し、深まりを意識したパターン
「45分とつなげて行う場合を除けば、通常の国語とモジュールの国語が並行して行われるようになります。その授業内容をどう分け、どのように配置していくのかについて、年間計画を考えるのが大変でした」
では、実際に15分モジュールでの授業内容はどのようなものになるのでしょうか。
「15分3回で1時間とする場合、例えば1回目に文章を読んでよいところを見付け、2回目に絵を見て気付いたことを付箋に書き、3回目には2回目の付箋を基に、絵から文章を書くための手助けとなる「想像メモ」を書くというような授業があります。」(資料2参照)
(資料2)四年生のモジュール授業の指導案
「15分が独立する場合は、読むとか聞いて書くといったことに絞った実践をしますし、45分とつないで行うときは、物語文や説明文を読んでじっくり対話をしたり、アクティビティを入れたりしていきます」
モジュール授業には覚悟が必要
では、15分モジュールを授業として成立させるためには、何が鍵になるのでしょうか。
「実践してみると分かりますが、15分間というのはとても早く過ぎるものです。私たちも『あれっ、まだ思ったことができていないけど、終わってしまった』という経験を何度もしました。その過程を通し、子供たちに何を問うて、何を考えさせ、聞かせたり、発表させたりするか、ねらいを明確にしないといけないということを実感したのです。
しかし、次第にねらいを明確にした実践が積み上げられると、先生の通常の授業力も上がってくると感じます。
また子供たちも何を学ぶか明確になっているため、より主体的に集中して取り組めますし、自分自身の成長を実感できるようになっていると思います」
加えて、今回のテーマである時数確保の点でも成果があった、と小嶋教頭は話します。
「トータルとしての授業時数が確保でき、教師の多忙化の解消という意味でも効果があったと思います。
またコロナ対応が目的ではありませんでしたが、これに取り組んできたおかげで、急な休業があっても結果的には時数はきちんと確保できていたのです」
最後に今年度異動してきた押部匡子校長は、モジュール授業の意義について、次のように話してくれました。
「モジュール学習を授業としてカウントするためには覚悟が必要です。目標も評価方法も明確にしていかなければ、単なるスキル訓練になってしまいますし、それは授業とは言えません。
さらに教育課程に位置付ける以上、そこで培った力を発揮する場、例えば児童会の場なども考えておくことで、より効果的に力を育むことも可能になるのです。
チャレンジ、チェンジ、コミュニケーション、この三つのCを合言葉に取り組んできたことで、子供に力も付いてきていますし、結果的にはコロナ下でも時数確保ができている状況なのです。
本校は5年前に統合し誕生した学校で、当初は大勢の人前で話すことが苦手な子もいました。
しかし短時間でねらいを明確にしながら力を培い、その成長を子供自身も実感できるようにした取り組みの積み重ねは必ず、将来にわたって生きる力になると思っています」
取材・文/ 矢ノ浦勝之
『教育技術 小三小四』2020年10月号より