「今の学校で自分の理想の授業ができるか不安」という学生へのアドバイス|沼田晶弘の「教えて、ぬまっち!」

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国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭

沼田晶弘

カリスマ教師沼田晶弘先生へ、教師を目指す大学三年生からの質問。

「大学の講義で学ぶ現在の教育の実態を考えると、公立の小学校は自由度が少なく、自分の理想とする教育や学級づくりができるか不安を感じてしまう」という学生さんに、アドバイスをいただきました。

撮影/下重修

現場に行かなければ教育の実態はつかめない

そもそも論になってしまうけれど、大学生が日本の教育の実態を心配する必要はないよ。

まずは、自分の心配をしよう。

大学の講義で「日本の教育の実態」について学んでいると思うけれど、現場は行ってみなくてはわからない。講義をしている先生も、本当にリアルタイムの教育の実態を知らないかもしれないしね。

現場に行ってみて、やっぱり「公立でできることが小さすぎる」と感じるならば、教師よりも、文部科学大臣を目指した方がいいだろう。

「自分の理想の授業」より「子供が学べているか」が重要

もう一つ言うと、今、自分が描いている理想は、明日には理想ではなくなっているかもしれないということを覚えておいた方がいい。

「自分の理想の授業をしたい」と願う気持ちはわかるけれど、理想の授業ができたと感じても、目の前の子供はドン引きしているかもしれないよ。

理想とは何か、誰のための理想なのかをもう一度考えたほうがいいだろう。

厳しいようだけれど、教育というものは、「自分の理想」よりも、「子供の学び」のほうが重要だ。

大切なことは、「いかに自分がよい授業をするか」ではなく、「子供がその授業からいかに学ぶことができるか」なんだ。

理想を実現して、子供がしっかり学べていたら評価されるだろうけれど、自分の理想を実現しても、子供たちが学べていない、もしくは気持ちが離れていれば、それは間違いということ。

そして、子供の実態を見ず、自分の理想を優先する先生に限って、「私のすばらしい授業を、なぜこの子たちは聞かないのだろう」とか、「いまの子たちは話を聞けない子たちなんですよね」とか、「いまの日本の教育制度が悪い」などと言って、子供たちや環境のせいにしがちだから、気を付けよう。

公立は自由度がないから、理想の教育ができないは誤り

「公立の小学校は自由度が足りない」と思っているかもしれないけれど、公立の小学校でも自由にやっている先生はいっぱいいるよ。

ボクの学校は国立だから、公立よりもできることは多いとは思うけれど、それなりに縛りはあるし、やりたいことを何でも自由にできているわけではない。でも、現行のルールの中で、どうすればやりたいことができるかは、自由に考えることはできるし、できることの中で最大限の効果を出すよう工夫しながら、実践を積み上げればよいと思っている。

サッカーだって、「理想のプレーをしたいから、自由に手を使わせてくれ」ってわけにはいかないよね。一流のアスリートは、ルールやさまざまな制約の中で、自分やチームにできる最善のプレーを創造力を働かせて考え、そこから練習を重ねて素晴らしいプレーや結果を生み出しているわけだよね。

大事なのは目の前の子供たち できることを増やしていこう

まずは、どんな環境であろうと、大事なのは目の前の子供たち。

目の前の子供たちに自分に何ができるのか考えてみると、教師としてやれることは限りなくたくさんあることに気が付くだろう。

自分の工夫次第で子供が成長し、伸びていく瞬間を見ることができる教師の仕事はとてもやりがいを感じるし、だからこそ、もっと子供たちのためにいろんなことを試してみようと思う。

そういう意味でも、自分次第で教育の可能性はどこまでも広がると思うよ

これは教師に限らず、どんな仕事でも、できないことを数えるのではなく、できることを増やしていく気持ちが大事なんじゃないかな。

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沼田晶弘先生
沼田晶弘先生

沼田晶弘(ぬまたあきひろ)●1975年東京都生まれ。国立大学法人東京学芸大学附属世田谷小学校教諭。東京学芸大学教育学部卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院にて修士課程を修了。2006年から現職。著書に『「変」なクラスが世界を変える』(中央公論新社)他。沼田先生のオンラインサロンはこちら>> https://lounge.dmm.com/detail/2955/

取材・構成・文/出浦文絵

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