運動会の応援を改革だ!6年生からの提案!【5年3組学級経営物語11】

連載
5年3組学級経営物語(4年3組学級経営物語)【月2回不定期更新】

通称「トライだ先生」こと、2年目教師・渡来勉先生の学級経営ストーリー。今回は、運動会の応援指導についてのお話です。
運動会は、楽しく充実した学校行事です。でも、緊張して実力を出せなかったり、負けて自信を失ったりすることもあります。そんなときでも、心のこもった応援があれば、折れそうな心を励まして元気にしてくれることでしょう。さあ、みんなを励まし、元気づける応援団の実現にレッツ トライだ!

文/大和大学教育学部准教授・濱川昌人
絵/伊原シゲカツ

学級経営物語タイトル

9月①「応援団」にレッツトライだ!

<登場人物>

トライだ先生(渡来勉/わたらいつとむ)
教職2年目の5年3組担任。 真面目で子ども好きの一直線なタイプ。どんなことでも「トライだ!」のかけ声で乗り越えようとするところから、「トライだ先生」とあだ名が付く。トラブルに見舞われることが多く、学級経営の悩みが尽きない。特技は「トライだ弁当」づくり。

しずか先生(高杉静/たかすぎしずか)
5年1組担任で、今年はじめて学年主任に抜擢された、教職10年目の中堅女性教諭。ベテラン教諭に引けを取らないリーダーシップぶりは、剣道五段の腕前に依るところも。産休明けで、子育てと仕事の両立に日々奮戦中。

オニセン(鬼塚学/おにづかまなぶ)
教職生活4年目の5年2組担任。祖父と父が有名校長で母も教師という教育一家出身。イケメンでなおかつ優秀な成績で教育大学を卒業したという、典型的な〝オレ様〞タイプの教師。しかし、昨年度、学級内のトラブルに十分対応できず、再び5年担任を任じられたという経緯をもつ。

応援団リーダーからの提案

「応援でみんなを励まして、元気にしたいんです!」

昼休みの5年3組に、突然現れた6年のナオ。運動会の応援団担当になった渡来勉先生に、紅組団長として改革案を持ってきたのです。

興味津々で5年生たちが見守る中、ナオは持参した提案メモを渡来先生に手渡し、真剣な顔で説明します。

「…そのためには、スポット応援や全員参加の応援。そして、全学級の理解と協力が必要です!」

言い終わると一礼し、教室から立ち去るナオ。

メモを凝視する渡来先生に、マリが尋ねます。

「大迫力ね! でも先生、このメモどうするの?」

ウーンと唸り、渡来先生は首を捻りました。

本当の”応援”とは…

「鬼塚先生は、ナオの担任でしたね。…去年は」

放課後の職員室、渡来先生に頷く鬼塚学先生。

「思い込んだら一直線…。そしてオレのことが大嫌い」

渋い顔で、昨年の出来事を話し出す鬼塚先生。

「授業の進め方、学級のトラブル対応…。いろいろ意見を具申してきたが、そんなナオを鬱陶しく思ってしまった。…ダメな担任だったな、オレは」

「でも、どうして応援団を改革したいんですかね?」

ずっと抱えてきた疑問をぶつける渡来先生。

「2年に不登校ぎみの弟がいる。かけっこが苦手で、去年の運動会の後は暫く学校に来なかったんだが…。その件と、何か関係があるのかなぁ」

鬼塚先生の呟きに、何かを感じた渡来先生。

「キチンと受け止めてみます。…ナオの思いを」

学級経営物語イラスト

翌日の放課後。校庭の片隅で渡来先生はナオに、応援団改革への思いをじっくり聴きました。…ポイント1

「弟はかけっこが苦手。でも、誰でも得意不得意がある。走りが遅くても、弟には良いところがいっぱいある。それに気づき、自信を持ってほしい。でもね…、自信をなくした時や困っている時、人には応援がいるのよ。励まして元気づける応援がね…。去年の応援は、ただのイベント。運動会が嫌な子を救えてはいない。そんな子を励ます事が本当の応援でしょ…。弟を励まして勇気づけるうちに、私はそう考えるようになったの」

語り終えたナオに、渡来先生は宣言しました。

「よーし…、応援団改革にトライするぞ!」

ポイント1【意見の背景を理解する】
誰でも、意見の背景に様々な思いや考えを持っています。意見を出した理由は大切です。さらに意見の根底にある発表者の思いや考え、立場や環境等にまで思いを馳せると、より深く理解が進みます。とくに、子どもたちの話合いではその部分に光を当てることで、相互に理解が進むことがよくあります。

応援団改革にトライだ!

「…今年の応援方法について、意見をください」…ポイント2

数日後、放課後の体育館に集合した応援団メンバーに問うナオ。渡来先生は、後方で黙って様子を見守っています。暫くして白組団長、6年のトシが立ち上がり、考えを述べ始めました。

「心のこもった応援は必要だ。俺は賛成。でも、運動会まであとわずかだぞ…。みんな頑張れるのか?」

表情の乏しい6年生の団員たちを眺め、不安そうなトシ。その時、ヒロが立ち上がりました。

「この提案を、5年団員で検討しました。簡単ではないけれど、創意工夫と自主練習、熱意で実現させる。…それが結論、トライしますよ!」

5年団員全員が大きな拍手。ヒロの意見に4年生や6年生の一部も賛成しました。喜ぶナオに頷くと、渡来先生は次の段階にトライすることを決意しました。

ポイント2【応援団の組織づくり】
応援団の組織編成は運動会準備と並行して行われるので、時間の余裕はありません。最初に目的や役割分担、活動内容等を子どもたちにしっかり理解、納得させることで、以降の活動がスムーズに進行し、自主的運営も可能になります。また、変更や改善について子どもたちの意見を聞くことや、創造性を発揮できる場づくり等も大切です。

トライだ先生の大演説!

「運動会の応援方法について、提案をします!」

数日後の職員会で、緊急提案する渡来先生。

「応援合戦は、運動会を盛り上げる華やかなイベント。でも、一方では競技に敗れる、実力を出せない、運動が苦手…、いろんな理由で自信を失くす子どもがいます。辛さを跳ね返し元気を出すために、応援団が必要なんです。応援団の子どもたち自身がそれに気付き、『一人一人を励まし、勇気づける応援の実現』という目標を立てました。この目標を達成して、より素晴らしい運動会にするために、先生方にお願いがあります!」  

職員室を見渡し、言葉を続ける渡来先生。

「お願いは一つです。人を応援することの尊さ、大切さを、授業で理解させてください。学級活動(2)や道徳、いろんな指導がありますが、思いやりを実践する場として、運動会で全員参加の応援を実現させたいのです。よろしくお願いします!」 …ポイント3

深々と頭を下げる渡来先生。拍手に驚いて顔を上げると、先生方の笑顔が見えました。

ポイント3【学校行事における「思いやり」の育成】
運動会や遠足等の学校行事では、様々な交流の中で子どもたちは日常とは異なる体験をします。困ったこと、嫌なこと、そこから怒りや悲しみの気持ちが生じることもあります。相手の状況や気持ちを思いやって相互に励まし、助け合っていける集団を実施以前から育てていく指導が不可欠です。学級活動(2)や道徳等、いろんなアプローチが考えられます。

(次回へ続く)

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