「理想の先輩教師」ってどんな教師?
連載|ayaya先生のすてきやん通信
板書や折り紙のアイデア、日々の仕事の葛藤と喜びを本音で綴るInstagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生による連載。初任者のとき、同じ学年を組むことになったM先生は、ayaya先生にとっての「理想の先輩教師」なのだそうです。一体どんな先生だったのでしょうか?
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
とにかく書類仕事が早かったM先生
初任者のとき、ベテランの女性教諭であるM先生と学年を組ませてもらうことになりました。
M先生は、スタイルがよくて、オシャレで、サバサバして格好良くて、私がもっていた教師像とはいい意味で違った先生でした。
M先生はとにかく書類仕事が早かったのを覚えています。
要領のよい方法を知っていて、100%完璧を求めるというよりは、与えられた仕事を着実に時間内にこなしていくというように見えました。
朝は8時前に颯爽と現れて、まず机を拭いて、お茶を淹れます。
私がいるときには、私の分も淹れてくれました。
机の上は常にきれいで、書類が溜まっているのを見たことがありません。
子どもに対しても、べったりという感じではなく、適度に距離感があり、休み時間は外で遊ぶのではなく、職員室にもどって過ごしていました。
M先生は、書類提出が締め切りを過ぎることはまずなくて、先々までスケジュールを立てて、何事も前もって初任の私に教えてくれました。
書類仕事をしているときとは違い、私への指導はとても親切で、ゆっくり丁寧に教えてくださいました。
教師というのは、何事も丁寧に、きめ細やかに対応しなければいけないと思っていた私は、書類の提出にも、学級通信にも、保護者から来た連絡帳メッセージの返事にもとても時間がかかりました。
でも、M先生から、「力を入れるところと抜くところ」を教えてもらったように思います。
いつも若手のことを考えてくれたM先生
学校は1000人に迫るほどの大きな学校で、私の所属学年は5クラスあったので、週に一度の学年会が必要だったのですが、これが思ったより初任の私にとっては負担になりました。
初任者は、ただでさえ余裕がありません。
研修の準備や出張でもっと時間が削られます。それに加えての学年会…。
学年会では、各クラスの授業進度、子どもの様子、行事の打ち合わせをするなど、あっという間に時間が経っていました。若手が多いと学年会はとても大切な時間になるのですが、正直、この時間が惜しいと感じている私がいました。
でも、M先生がいつもこの時間をできるだけ短縮してくれたのです。
話し合うべき内容がはっきりしているときは、たたき台を用意してくれていたり、取り留めのない話をするのではなく、話し合うテーマを明確にして、進行してくださいました。
初任者の立場でなかなかお礼が言えなかったのですが、私はとても感謝していました。
自分も若手と組むときにはM先生のようでありたいと、いつも心の中で思っています。
長々と話をして貴重な時間を奪うのではなく、限られた時間を有意義なものにするために、できるだけ事前に準備をしておいたり、計画的に話し合いを進めたりすることを意識しています。
あの時初任者だった私も今年で13年目です。
M先生のようになれているかといえば、それはまだまだです。書類仕事も効率的に進められているとは言えません。
これからもあのM先生の姿を思い出しながら、仕事をてきぱきとこなし、若手を思いやれる先輩教師になっていきたいと思います。
みなさんの理想の先輩教師は、どのような教師でしょうか。
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書)ほか。編著・共著多数。