性的な言葉で冷やかす子供に教師はどう対応する?
体の変化に戸惑い悩む子どもたちへ正しく伝えたい「性教育」。性を指導する際は健康、人権や生きるためのライフスキルという視点で伝える必要があると、バースセラピストのやまがたさんは話します。
やまがたてるえ●バースセラピスト・助産師
「性」を知ることが「生」を知ることにつながると考え、バースセラピストとして、ブログやワークショップ等でさまざまな情報を発信。著書に『13歳までに伝えたい 女の子の心と体のこと』(かんき出版)がある。
目次
五年生は体と心が成長するターニングポイント
小学校五年生はまさに体の変化について考え、理解するターニングポイントです。なぜなら、女子の多くが、四年生の後半から五年生を契機に体が大きく変化していくからです。四年生の終わりくらいから初潮を迎え、六年生で約半数が月経を迎えると言われます。さらに少しずつ胸も膨らみ始めます。
しかし、成長の具合は個人差があるため、周囲に相談できずに悩んでしまう子もいます。ですから、五年生になったらできるだけ早く、成長期の体の変化について伝えておきましょう。
そして、身長が伸びたり、体重が増えたりするのと同じように成長には個人差があるので、絶対に批判したり冷やかしたりしないこと。困ったらすぐに大人に相談することもしっかり伝えておくとよいでしょう。
若い先生や男性の先生の場合は、子供たちや保護者に話しづらいという場合もあるでしょう。その場合は、養護教諭や学年主任にサポートしてもらいましょう。大切なことは、子供たちがいつでも相談できる環境を整えることです。そのためにも学校内での情報共有、教師間の連携が非常に重要なのです。
性教育で重要なのは健康・人権・ライフスキルの視点
性教育についての「伝え方」においては、次の3つの視点が重要だと考えています。「健康教育」「人権教育」、そして、人生を生きるための「ライフスキル」の視点です。
例えば、人間は成長するに従い、健康を維持するために性ホルモンの分泌が始まります。つまり初潮が来ることは、「健康」な経過だということを必ず伝えてあげましょう。
女子だけではなく男子にも、生理のメカニズムとともに、女性は生理になると、体調が悪くなったり、おなかが痛くなったりすることもあるといった体の状態について、きちんと伝えておいたほうがよいでしょう。
そして男性にも、性ホルモンによって「精通」がくること。それは病気ではなく、健康な成長経過であることを理解させておきましょう。
自分の体と人生を大切にするため、人権に配慮した正しい知識が必要
「人権教育」の視点は、多様性がキーワードになります。思春期に自分が性的マイノリティであることを気づく人もいます。体の変化に対して、辛い気持ちになってしまう子供がいることにも配慮が必要です。
【関連記事】性的マイノリティに関する理解を深めたい方は、LGBTタグもチェックしてみてください。
初潮が来る理由についても、「赤ちゃんを産むためだよ」と説明しがちですが、見直す必要があると思います。女性は出産をすべきものと決めつけることにつながるかもしれないからです。女性には、子供を産む人生も産まない人生も選択する権利があり、どちらも素晴らしい生き方であるからです。
性について話すことに対して恥ずかしさを感じる先生方もいるでしょう。しかし、思春期に突入する五年生にとって、正しい性の知識は、重要な「ライフスキル」なのだと考えることで、捉え方も変わるのではないでしょうか。
高学年になったら、性被害を避ける意味でも、プライベートゾーンの話をしてもよいと思います。他人には、「触らせない」「見せない」「写真に撮ってはいけない」と伝え、もしそういうことをすると、ネット被害などで一生の傷になることもあることを理解させましょう。
性の理解には子供自身に考えさせることが有効
また性的なことを言ってふざける男子に対する対応にも、人権やライフスキルの視点が重要です。
例えば、セックスという言葉。そうした性的な言葉を頻回に言う子は幼い傾向があり、言葉の意味についてはあまり知らないことが多いのです。単にセックスという言葉を発して、周囲の人が「そんな言葉を言うんじゃない!」と言って慌てたり、恥ずかしそうなそぶりをしたりする反応を見て楽しんでいるのです。
現在の小学校の教育課程では性交について詳しく教えないことも、正しい知識がないままこうした言葉を言葉遊びとして使ってしまう原因かもしれません。
学校教育においても、性交の知識は受精卵の話だけではなく、「ライフスキル」として、親になる覚悟、そして保護者への感謝を含めた形でしっかりと伝えていくことが必要だと思います。
もし子供たちからそうした発言が出たら、みんなの前で叱るのではなく、個別に声をかけ、「あなたはその言葉をそのように使ってどう思うの?」と問い、その子自身に考えさせてみることが有効です。
生理や性のことについては、子供たちだけではなく、保護者の方にいかに伝えていくのかも重要です。野外活動など、環境的・心理的な変化で突然生理になってしまう子も多いものです。事前の保護者会などでそうしたケースについて伝えておくとよいでしょう。
例えば、多くのナプキンメーカーは生理に関して家庭用にわかりやすく解説した小冊子を発行しています。ホームぺージからダウンロードできるので、参考資料や教材として利用したり、配付したりするのもよいでしょう。
取材・文/出浦文絵 イラスト/宇和島太郎
『小五教育技術』2018年5月号より