小4道徳「敬老の心」指導アイデア

大学教員

佐藤幸司

執筆・イラスト/熊本大学教職大学院准教授・前田康裕
執筆/山形県公立小学校校長・佐藤幸司

教材の概要

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小4道徳「尊敬と感謝|敬老の心」イメージイラスト

【登場人物】

登場人物の顔イラスト
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はじめ

ある停留所でのことである。バスを待つ列の前のほうに、見るからに三姉妹と思われる老婦人方が楽しそうににぎやかに会話を交わしていた。

バスが来た。長姉と思われる婦人を二人の妹が担ぎ上げるようにしたが、足がなかなかステップに届かない。

つづき

そのとき、後ろに並んでいた青年が「ぼくがおんぶしましょう」と声をかけた。自分の荷物を一緒にいた友達に預けると、低い姿勢で足を踏ん張り、大きな背中を向けて「しっかりと抱きついてください」。「すみませんね」と、その背中に溶け込むように背負われた婦人。

青年は軽々とステップを踏んでバスに乗り込んだ。続いて乗車した妹たちも、満席だったが、ことの成り行きを見守っていた車内の人たちの好意で席に着いた。姉妹の一人が青年たちに「私たちはこの近くで生まれ育ったんですが、久しぶりに三人で会うとつい年を忘れてしまい、ご迷惑をおかけしました。ごめんなさいね」と礼を言う。

「だいじょうぶですよ。僕たちはクラブ活動で友達をおんぶしてグラウンドを走っているので慣れていますから」「どんなクラブなの」「陸上部です」「だから体が大きいのね」「ええ、まあ」。その会話は清々すがすがしいものであった。

ややあって、青年が「どこで降りられるのですか」と聞くと、老婦人が「終点です」と答える。「あなたたちは」「もう少し手前ですが、僕たちもそこまで行きます」。

私も終点で降りるので安心した。彼女たちが降りるときにどうなることか心配だったからである。

終点に着いた。「最後に降りましょう」と声をかける彼ら。私は先に降りたが、その場から離れられずにいた。青年の一人が乗車時と同じようにおんぶした。地上に降りると、三姉妹はにぎやかに青年たちに感謝し、褒めたたえた。

私も彼らの行為を心から誇りに思う。そして、このような若者たちの勇気ある行為を一人でも多くの人に知っていただきたいと願った。

平成16年2月21日付『産経新聞』「青年の大きな背中」
『ニューモラル』2008年9月特別編集号(モラロジー研究所)P9~11より

実際の授業展開

タイトル
敬老の心 ~青年の大きな背中~

指導目標
高齢者は「人生の先輩」であることを再確認し、尊敬と感謝の気持ちをもって接しようとする態度を育てる。

内容項目
B 感謝

準備するもの
・登場人物4人の顔イラスト(黒板掲示用)
・ワークシート(児童配付用&拡大コピーした黒板提示用)

【ワークシート】

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指導の概略(板書計画例)

指導の概略(板書計画例)
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導入

① このおばあちゃんの名前を知っていますか。

  • もちろん知っているはずはないが、子供たちとのやりとりから、おばあちゃんの名前を決めていく。

展開1

バス停の簡単なイラストを描き、3人がバス停でバスを待っている場面であることを伝える。

展開2

② お年寄りがバスに乗るとき、困ることはなんでしょうか。

  • 出された意見を箇条書きで板書する。

展開3

  • 教材「はじめ」を読み聞かせて問う。

③ こんなとき、どうしたらよいでしょうか。

  • 出された意見はすべて肯定的に受け止め、特に板書はしない。意見が出尽くしたら、教材「つづき」を読み聞かせ、青年のイラストを提示する。

展開4

④ バスの中の人は、どんなことを思っているでしょうか。

  • ワークシートを配付し、吹き出しに書かせる。その後、各自一つを選んで発表する。

終末1

⑤ (昨日)は、どうして学校が休みだったのでしょう。

  • 実施日に合わせて( )内の言い方を変える。

終末2

⑥ そもそも敬老の日とはなんでしょうか。

  • 「お年寄りを敬愛する日」という意味の返答につなげて、⑦を問う。

⑦ なぜお年寄りを敬愛するのでしょうか。

  • 「お年寄りは、私たちの人生の先輩です」(教材の『ニューモラル』誌、P.8 より)という言葉を伝える。

ここがアクティブ!授業展開の補足説明

お年寄りを敬愛する心は、どんなに時代が変化しようとも、私たちがずっと大切にしていかなければならない心です。もともと、「敬愛の心」は、人として当然のモラルであると考えられてきました。

そこで、当然のモラルである理由(=なぜお年寄りを敬愛すべきなのか)を子供たちに考えさせます。そこにはやはり、人として当たり前の確固たる理由があるはずです。

教材文は、教師の読み聞かせで伝えます。途中、登場人物のイラスト(顔)を提示したり、バス停のイラストを黒板に描いたりして、子供たちの興味を引きつけながら進めてください。ワークシートには、バスの中の様子が温かい雰囲気で示されています。吹き出しにそれぞれの人物の思いを書かせます。

発表のときは、どの人物の言葉を発表するかは子供たちに任せます。ささいなことですが、子供に自己決定の場を与えることで、主体的な学びへとつながっていきます。ここは全員に発表させる(発表できる)場面ですので、学級の人数や展開の時間配分に応じて、ペアやグループなどでの発表形式を工夫しましょう。

終末では、「なぜお年寄りを敬愛するのでしょうか」と子供たちに問いかけます。これは、本時の目標へとつながる大切な発問です。その理由を子供たち自身の言葉で考えさせます。

そして、全員の考えを認め、それらの考えがすべて集約される言葉として、「人生の先輩だから」という「答え」を子供たちに伝えます。

※ これは答えを一つに限定するのではなく、全員の考えを束ねた(まとめた)答えという意味です。

授業をするうえでの注意点・ポイント解説

9月の第3月曜日が「敬老の日」です。授業は前週に実施するのが最適です。道徳授業での学びを、敬老の日に合わせてすぐに実践へとつなげましょう。お年寄りを敬愛する心をどのように具現化するのか、具体的な行為として考えさせます。

道徳科では、授業後の行為までは原則としては求めません。けれども、内容によっては「即効性」が期待できる授業もあります。実践化されてこそ道徳授業で本物の学び(深い学び)が行われたのだと捉えて、行為につながる事後指導を積極的に行いましょう。

教科調査官からアドバイス

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也

「ペアやグループでの話合い」

道徳科の目標に「多面的・多角的に考え」という言葉が示されました。これは、一面的な見方から多面的・多角的な見方、言い換えると、一つの学習対象はさまざまな面をもっているからこそ、さまざまな角度から考察して、その学習対象をより深く理解することが求められています。

そこで、一人で考えるよりも、子供どうしが互いに自分の気持ちや考えを伝え合い、みんなで考えたほうが多面的・多角的に考えやすくなるため、今日では道徳科の授業でも、ペアやグループでの話合いが多く取り入れられています。

しかし、このような学習形態の工夫をすれば、すぐに話合いができるようになるわけではありません。そこには少なからず話合いのルールが必要であり、例えば4人グループで、その座席の位置によってABCDと決めておき、今日はAが司会で、Bから発言し、最後にAが発言するなどとローテーションしていくと、毎回スムーズに話し合うことができます。

話合いの後も、「今日はBの人に、グループでどんな考えが出されたか、発表をお願いします」と言えば済みます。また、ペアでの話合いの後の発表のときには、自分の考えではなく、ペアの相手の考えをまず発表し、その後、自分の考えを比べて発表することも多面的・多角的に考えるには効果的です。

もちろん、ペアやグループをつくることが目的ではありません。クラス全体でなんでも言い合える雰囲気をつくり、みんなが一つになって互いの気持ちや考えを伝え合えれば、これも立派な「対話的な学び」です。本来は、クラス全体で誰もが自由に発言できるような授業をめざすことが大切です。

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イラスト/うえだ未知

『教育技術 小三小四』2019年9月号より

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