6月危機を乗り切る!絶対に荒れない低学年の学級づくり
緊張が緩みがちになるといわれる6月。この時期に起こる小さなトラブルが学級崩壊に発展することも…。とくにポイントとなる気になる子や学級トラブルへの対応策を、事例に沿って紹介します。
執筆/千葉県公立小学校教頭・藤木美智代
目次
1.私語が多い
→授業中の無視はOK
普段、日常的に「友達に優しくしましょう」「無視してはいけません」という指導をしていると思います。
しかし、授業中に授業と全く関係のない話をしてきたらどうでしょう。返事をすれば、そこからおしゃべりになったり、言い合いになったりするはずです。
ですから、「授業中に隣の子が授業と関係ない話をしてきたら、無視してもいい」というルールを決めておきます。それは、正しい無視なのだと指導しておきます。無視がいやなら、せめて「今、授業中なので後で……」「ごめん、静かにして。今、集中したいから」など、小さい声で断ることにしてもよいでしょう。
授業中に私語が多くなるのは、誰かが話し始めて、そこに他の子が関わっていくからです。話しかけても返事がなければ、その子もあきらめて静かになっていくものです。
2.授業に集中しない
→面白く楽しい授業を
いくら「静かにしなさい」と言ってもなかなか全体が集中しない場合、もう一度、自分の授業がどうなのかを考えるべきです。知的好奇心をくすぐるような、面白く、目的意識があって達成感を得られるような楽しい授業だったら、「静かに」などと言わなくても、子供たちは自然と授業に集中できるはずです。
やり方が分からなかったり、やっている意味が分からなかったりするとき、おしゃべりが始まります。授業に関係のある話ですから、前述のように無視はできません。騒然とした中で、だんだん、授業と関係ない話で盛り上がっていくという状態になります。
例えば、国語なら、教師がわざと間違った音読を聞かせ、間違ったときに「ちがう!」「〇〇だよ!」と言わせます。みんな、先生が間違えると、笑いながら反応します。
このように、おしゃべりなんかする気が起きないように授業を工夫するのです。おしゃべりが多いのは、子供のせいではなく、教師自身に原因があると自らを戒めましょう。
3.立ち歩き、ちょっかいを出す
→活躍できる場面をつくってほめる
授業中に立ち歩く。友達にちょっかいを出してトラブルを起こす。先生の話を全然聞かない。そんな子でも、どこかで何か、活躍できる場面があるはずです。
大声を出してしまう子なら拍手の場面で「はくしゅ〜」と大声で言う役にしたり、席に着いていられない子なら隣のクラスや職員室にお遣いに行ってもらう役にしたりします。
そのようにして、わざわざほめる場面をつくります。できて当たり前のことでよいのです。やり始めただけでもいいのです。
「ゴミ捨てに行ってくれる? ありがとう!」
「今、お友達に順番を譲ってあげたね。優しい!」
「今、教科書を出そうとしてるね。えらい!」
「ちゃんと鉛筆持ってる。やる気が出てるね!」
などなど。ほめられていい気分になっているときには、こちらの次の指示に素直に従うことができるようになります。ぜひ、ほめちぎり効果を試してみてください。
4.支援を要する子
→個性を認め、周りの子供に認識させる
支援を要する子を叱ってばかりいると、周りの子供たちが、その子を「悪い子」だと認識してしまいます。次第に、先生目線でその子に厳しく接したり、いじめの対象になったりします。ですから、人に迷惑がかかっていないようなことなら、いちいち目くじらを立てることはないと思います。多少、みんなと同じことができなくても、それはその子の個性だと先生がまず思い、周りの子供たちにもそう認識させるようにします。
例えば、色鉛筆を使って色ぬりをする課題に取り組んでいるとします。そのとき、クレヨンを使っている〇〇くんに対し、「先生! ○○くんが、クレヨンでぬっています」「〇〇くん、ダメだよ。色鉛筆を使うんだよ!」と周りの子が騒いでいたとします。それは誰にも迷惑になっていないのだから、私は、「〇〇くん、クレヨンで色ぬりできるのね。すごい!」などと言い、スルーします。
周りの子が、鬼の首をとったように○○くんのことを言い付けにくる、それが日常的にならないようにしたいものです。
5.友達の悪いところを言い付けにくる
→良いところを探してもらう
〇〇くんの悪いことを言い付けにくることが多くなったら、要注意。教室が冷たい空気になっています。そういうときには、良いことを見付けたら言い付けにくるという取り組みも効果があります。
「あのね、先生は○○くんの悪口はあんまり聞きたくないな。それより、〇〇くんの良いところを調査して教えてくれないかしら?」と言うと、俄然張り切って良いところを報告してくれるでしょう。子供同士のほうが、よく見付けられると思います。
そして〇〇くんには「〇〇ノート」を用意しておき、そこに言い付けられた良いことを書いていきます。良いこと1項目について一つシールを貼ってあげます。「今日は、〇〇くん、シールが8個も貼れたね」などと声をかけ、家に持って帰らせます。保護者の方にも見ていただき、良い子であることを伝えます。
そうしていると、〇〇くんも自分が良い子になったという自信がもてるようになります。「悪い子」というレッテルを「良い子」というレッテルに貼り替えてあげるのです。
6.学習の遅れがある子に個別指導する
→学級全体を見ながら指導する
個別指導は大事なことですが、その子一人に関わっていて、授業中であるにもかかわらず、他の子供たちが放っておかれている様子をよく見ます。それは、他の子たちの授業を受ける権利を剥奪していることになります。一人二人にとらわれて、学級全体がおろそかになってしまうと、そこから別のほころびが発生しかねません。
ですから、個別指導は休み時間にする、あるいはきちんと課題を出して自習体制を整える、できれば管理職や手すきの先生に全体を見ていてもらうなどの手段を考えなくてはなりません。
私は、「自分学習帳」を持たせていて、個別指導を早急にしなければならない緊急事態に備えています。急に自習になったら、いつでも「自分学習帳」をやります。これは、漢字練習、読書記録、日記、計算練習、テスト勉強、調べ学習など自分で選んだ学習を進めるノートです。
7.暴言を吐く、暴力を振るう
→ダメなことはダメ、絶対に許さない
例えば、「はい」という返事ができなくて、「はいはい、そうですね」と生意気な答え方をしたとします。そのときは次のように指導します。
『はい』は一回
なんでですか?
世の中の常識です。相手を不愉快にします。分かりましたか?
はいはい
『はい』は1回と言いました
は~い
短く『はいっ』です
はいっ
よろしい
このように、最後まで子供に負けてはいけません。負けると、そこから言うことを聞かなくなります。世の中に出ても通用する子にするために、「ダメなことはダメだ」とはっきり指導しなければなりません。ついには先生を蹴ったりたたいたりする子も出てくるでしょう。暴力はどんなことがあってもいけないということを、威厳をもって指導します。決してヒステリックになったり、暴力で返したりしてはいけません。
*
6月は客観的に学級を見ること。荒れに気付く細やかさ、修正を試みる冷静さ、そして、同僚に救いを求める勇気が必要です。
決して手を抜かず、かといって派手な対応は必要なく、地道にこつこつと立て直しに励むことが大切なのです。
イラスト/宇和島太郎
「教育技術小一小二」2020年6月号より