保護者が「宿題したの?」と言う必要がなくなる宿題の出し方

多くの地域で家庭学習の比重が高まる今年度は、家庭との連携が必須です。そこで、低学年が夢中になる宿題のアイディアと出し方をご紹介。一年生のポイントは、楽しさがあって無理なくできること。二年生は、子供たちの自主性を重視。そして、宿題をネガティブにしないためには、保護者への説明も欠かせません!
執筆/追手門学院小学校講師・多賀一郎
目次
宿題のイメージをネガティブなものにしない
低学年の子供たちは何事にも前向きで、もともとやる気に満ちています。そういう子供たちが、「宿題」という言葉にネガティブなニュアンスを感じてしまうのはなぜでしょうか。
大人でも、仕事をしていて、「これが君への宿題だ」と言われて、「やったあ!」と喜ぶ方はあまりいないでしょう。
つまり、宿題というものに対して、「簡単だよ」という気持ちを起こさせる工夫が必要なのです。
まず、「宿題で力を付ける」という発想ではいけません。家に帰ると学習できない環境の子供たちはたくさんいるのですから。宿題で学力を付けようとするのは、格差を生んでしまうということです。
子供の提出物を細かくチェックして、宿題がきちんと提出されたかどうかを記録される方もいます。そして、それが子供を叱るための材料になってしまっているのです。
宿題のできない子供は、どんどん未提出がたまってきて、それをまた叱られて……の悪循環の中で、次第にやる気を失っていって、最後は「どうせ自分なんか……」と、あきらめてしまうようになるのです。

さらに、いまだに漢字の宿題を出して、とめ、はね、はらいにこだわってチェックして (文化庁のホームページに「許容」と書かれているにもかかわらず)、付箋を貼ってやり直しをさせる先生がいます。
これは、間違いなく何人かの子供たちを漢字嫌い、宿題嫌いにさせるやり方です。この宿題嫌いは、ひいては勉強そのものに対する嫌悪感にもつながりかねません。
先生が熱心に指導して、子供たちに宿題のネガティブなイメージをつくるのは、どうかと思います。
宿題で勉強嫌いな子をつくらないためには
宿題嫌いは勉強嫌いを増幅させてしまう可能性があります。つまり、宿題を出す際は、その点に注意しなければならないということです。
勉強嫌いな子をつくらない宿題の出し方の低学年のポイントは、次のように考えられます。
① 宿題の量が適量であること
(15分以内にできるものであること)
② 楽しさのあるものであること
(プリントの一部に楽しいコーナーやイラストが入っていたり、提出したら楽しいハンコがもらえたりする等)
③ 反復トレーニングは避け、個々に応じたものであること
(自主学習等)
④ 無理なくできるものであること
① 宿題の量が適量であること
宿題の量は、地域の特性にも関係します。その地域の学習熱が高くて、ほぼすべての子供たちが宿題をやってくるところでは、多くてもそれほど負担になりません。
低学年の子供の集中力は、15分が限界です。それ以上は集中力がガタッと落ちます。集中できる時間内で仕上がる宿題にするべきです。ただし、これらは個人差のあることですから、時間のかかる子供への配慮を考えておきましょう。
② 楽しさのあるものであること
一年生には、それほどはっきりと学習と遊びの区別がついているわけではありません。絵を描いたりぬり絵をしたりすることも学習にしてしまえば、楽しいものになります。それで力が付くのかという問いが出るかもしれませんが、学力は学校で付けるのです。宿題は家庭学習の習慣化だと考えれば、問題ありません。


③ 反復トレーニングは避け、個々に応じたものであること
百字帳のように同じことの反復練習も学校でさせるほうが効果的です。できるだけ個々の子供たちが自分で工夫できるものを考えましょう。
④ 無理なくできるものであること
長い時間考えても分からないような宿題は、子供のできない感を増すことになります。そして、結局はおうちの方に答えを教えてもらうようなことになりかねません。