なぜ高学年女子はグループ化しマウンティングするのか?

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小学生「思春期」のトリセツー高学年対応に自信が持てる!ー

高学年の担任の悩みとして、高学年女子のグループ化や子供同士の関係性の変化があるのではないでしょうか。グループ外の子や教師に対する攻撃、マウンティングなどに対して、教師としてどのように考えて対処すればよいのか、コミュニケーションのプロである黒川伊保子さんに伺いました。

黒川伊保子さん 撮影/五十嵐美弥

黒川伊保子●株式会社 感性リサーチ代表取締役。 人工知能研究者、脳科学コメンテーター、感性アナリスト、随筆家。 脳機能論と人工知能の集大成による語感分析法を開発。性や年代によって異なる脳の性質を研究対象とし、男女脳論を展開。『娘のトリセツ』(小学館文庫)『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社+α新書) は合わせてミリオンセラーに及ぶ勢い! 最新刊は『コミュニケーション・ストレス ~男女のミゾを科学する』(PHP新書)。

女子にとってグループ化は子孫の生存可能性を上げる手段

女子は高学年になると対応しづらくなる、というお話をよく聞きます。

高学年になると、グループ化して特定の子を仲間外れにしたり、教師を無視したり、さらにはグループ同士でマウンティングをして張り合ったりする女子もいるため、悩まれる先生方も多いでしょう。

「マウンティング」とは、本来、動物が自分の強さをアピールするために、相手に馬乗りになる行動を指す言葉なのですが、近年はテレビドラマの影響もあり、「自分の方が格上である」ということをアピールする行為を指す言葉としても使われるようになりました。

そもそもなぜ女子はグループ化し、そしてマウンティングするのでしょうか?

個人差はありますが、そもそも「女子はグループでいると安心する」という性質があります。

哺乳類のメスである女性は、母乳が出なければ子育てができないので、互いに母乳を融通し合い、子育ての知恵を出し合いながら種を守ってきました。

つまり、女性にとって、女同士のコミュニティの中にいるということが、子供の生存可能性を上げる手段だったのです。

マウンティングはグループの結束を高める最も原始的な方法

そして、グループの結束を高め、グループを盤石にする時に最も原始的な方法は、グループ外の人を攻撃するということです。

つまり、高学年女子がグループになり、マウンティングをするということは、その原始的な方法を取っていると言えるのです。

グループになるということには利便性があるため、社会性のある動物にはよく見られる行動です。その中でもヒトは、例えば趣味が合う人でグループになったり、グループ同士が結束するなかで経済活動の相乗効果を狙うなど、より成熟した方法でグループになり、組織を作ってきました。

そして、例えグループ化しても、成熟した大人であれば、現実的な損得で物事を考えられるようになるので、誰かを攻撃するということは、それなりにストレスがあるし、労力もかかるということが理解でき、わざわざ誰かを攻撃することで、他人から嫌な奴と思われるようなリスクは回避しようとするでしょう。

また、経済力がついてくると、誰かを攻撃しなくても、自分たちの能力や立場を高めれば、もっと利益が上がり、ポジションも上がってくるということが理解できるようになります。

しかし、子供たちは、精神も脳もそこまで成熟しておらず、経済力もないので、「私たちは仲間だよね。でもあの人は仲間じゃないよね」というふうに、仲間ではない人を敵視することで、お互いに仲間であることを確認するという原始的な方法を取ってしまいます。

そういう意味で、グループ化しマウンティングをするのは「子供らしい行動」と言えるでしょう。

もちろん、女子の中にも、グループに属することが苦手であるという成熟した女子もいるでしょう。そういう女子は周囲から「かっこいい」と憧れられることもありますが、「いまいましい」と思われてしまい、いじめにつながってしまうこともあるため、それぞれの性格を踏まえて、高学年女子の場合は、より注意深く子供たちの関係を見守る必要があります。

マウンティングする女子の上手な諭し方

いずれにせよ、ヒトの成長の過程では、脳が原始的になるという瞬間があり、それは脳が成長する上で誰もが通り過ぎる一過性のものでもあるので、「この子は性格が悪い」とか、「矯正してあげないといけない」と考えず、扱いにくくなっている状態の仕組みを知っていくということが重要なのではないかと思います。

女子の場合も、以前は素直だったのに、突然扱いにくい状態になったということは、必ず向こう側にも論理があるので、それをどう読み取るかが大切です。

まず、女子は集団になり、自分に合ったコミュニティを作りながら子育てをするという性質があり、子供のうちは、自分のコミュニティに属さない者を攻撃するという最も原始的な方法で、コミュニティをつくる練習をしているのだと捉えてみてはいかがでしょうか?

その上で、諭す必要があるときには、子供たちの成長を促すためにも、子ども扱いせず、一人の大人として扱いながら上手にコミュニケーションを重ねていきましょう。

例えば、

「猿の群れは自分の群れ以外の猿を攻撃するんだよね」

と例を出しながら、

「でも、攻撃することにはリスクがある。人間は、誰かを攻撃しなくてもちゃんと仲間になれるはずだよ」

と諭し、

「君たちなら分かるはずだよ。もう一歩先に進めるでしょう?」

といった知的な話の進め方もよいでしょう。

「攻撃するって結構大変だよね。だって、攻撃した後にあなたもいやな思いをするでしょう? あなたは優しい人なんだから」

などと言われると、

「そうか。私はなぜあの人を攻撃していたんだろう」

と、自分の行いの愚かさに気づくことがあるかもしれません。

攻撃する女子は
「相手を恐れている」「自分を認めてほしい」

留意点としては、指導するときに、マウンティングをする女子は、「相手を恐れている」そして「自分をもっと認めてほしいと思っている」という視点を持つことが大切です。

だから、「なぜこんなことをするんだ。人が傷つくようなことをしてはいけない!」などとお説教をしても効果はありません。

「彼女が誰かを攻撃するのは、誰かを攻撃していないと、グループがばらばらになるような不安があるからだ。本当は自分を誰かに認めてほしいのだ」という視点を持ち、

「あの子を攻撃しなくても君は十分にみんなを惹きつけているよ。誰かを攻撃しなくても、ちゃんとグループは成立するよ」

「君は充分周りに信頼されているよ。友達から頼りにされているよ。だから何も誰かを攻撃しなくたっていい。自分が強いことを君が自ら示さなくても大丈夫」

と感じられるようにすることが大切です。

ちなみに、机間指導中、女子の机からポロリと落ちた紙に担任の悪口が書いてある…なんてことは、私が学生の頃からもありましたし、おそらくもっと以前から続いているもの。

先生方も、「ご自分の指導が悪いからではないか」などとむやみに自分を責めるのではなく、「グループの結束を強めたいのだな」「認めてほしいのだな」と思って、大きく構えていればよいのではないでしょうか。

取材・文/山岡文絵

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