【木村泰子の「学びは楽しい」#49】子どもの事実に始まり、子どもの事実に返す
すべての子どもが自分らしくいきいきと成長できる教育のあり方について、木村泰子先生がアドバイスする連載第49回。今回は、編集部に届いた大空小学校の卒業生のメッセージから、「子どもが学ぶ 子ども同士が学び合う」授業づくり、学校づくりについて考えていきます。(エッセイのご感想や木村先生へのご質問など、ページの最後にある質問募集フォームから編集部にお寄せください)【 毎月22日更新予定 】
執筆/大阪市立大空小学校初代校長・木村泰子

目次
卒業生の言葉に学ぶ
「学校づくり」は「子どもの事実に始まり、子どもの事実に返す」に尽きます。2006年に突然開校した大空小も20年が経ちました。
ようやく当時の子どもたちが、大空小での学びを社会で「生きて働く力」として、社会をつくる大人になっていることを実感するようになりました。実は、この「学びは楽しい」のコーナーも読んでいる卒業生がいて、先日編集部に次のメールが届きました。
記事を見て懐かしい感じがすると共に、自分も憧れて同じ職業になった時に、逆に子どもたちが繋がって自分の学校をつくるって周りから見るとすごいことだったんだと実感しました。
私は中学校教員なので、小学校とは少し違うところもありますが、クラスや学校を見る中で、生徒同士の関係性の希薄さや、教員同士が話すことが子どものよくないことばかり出ることに悩んでいます。生徒が考えるのではなく、教員の考えのもとで動く生徒という構図が私には疑問符が浮かびます。それこそ不登校の生徒も小学校から上がってきたり、自分のクラス以外の生徒でもトラブルから不登校になったりする生徒もいます。
生徒が繋がるクラス、学年をつくっていきたいと思うのですが、どうしていくことが必要でしょうか? 私は2年目ですが、自分の経験した学校生活から今の子どもたちにも伝えていきたいと思っています。質問という形ではないですが、木村先生と課題について話したいです。
この後、卒業生とメールのやり取りをしました。最後に送ってきた卒業生のメールをみなさんにご紹介します。
今、目の前にいる子どもたちは、僕が過ごしていた小学校では個性のある子として周りに認められ共に学んでいけるはずの子なのに、今、自分の中学校では、授業中に違う話や違うことをしてしまう、机を叩いて音を鳴らしてしまう子、とっさに大声を出してしまう子など、困った子としてきつく指導されたり、参加せぇへんねんやったら寝ときって言われたりしていることもあります。
また例えば、静かに授業を受けられるように、静かにできるように躾をすべきだと言われることもありました。
これを考えた時に、じゃあ僕の小学校ではどうだったかというと、授業自体はもちろん、話を聞く時は聞いていたし、もし聞いていない子がいたら、周りが教え合ったりクラスでつくる授業ができていたりしたと思います。
また音を立ててしまう子がいたら、不安なことがあるのか、授業にいるのが嫌なのか、それともそれが落ち着くのか、友達や先生がその理由を突き止めるまで寄り添って話をしていたとも思います。
指導や躾というのは全くない訳ではないと思うのですが、生徒の行動自体を悪として糾弾して、その場では従わせることができるけど実際は心が離れているということが悲しいです。もっと寄り添ってあげられたら、もっと子どもたちがお互いのことを思えたらと思うこの頃です。
僕は「みんながつくる学校」が理想です。
ですがいきなりは変われない。まずは僕ができることは、みんながつくるクラス、学年ができていったらと本当に思います。
そのために、クラスの子への対話をなくさず、一人一人が繋がるように、もっと子どもたちを繋げることにチャレンジします。
僕は子どものそばにいられる先生になります。
子どもが学ぶ 子ども同士が学び合う
みなさん、卒業生の言葉はどのように感じられたでしょうか。
コロナ以降は様々な講演会の場で、「みんなの学校」を観られた先生方から次のような質問をよく受けます。
・離席したり声を出したり暴力をふるったりする子の周りにいる子どもたちは我慢していませんか?保護者からクレームが来ませんか?
・支援員が足りないので、同じ教室に支援の必要な子がいると授業は進まないし、周りの子どもたちがかわいそうに思うのですが……。
いかがでしょうか。
「授業」の目的を問い直す必要がありますね。大空小での9年間の研究テーマは「子どもが学ぶ 子ども同士が学び合う授業をつくる」でした。毎年見直しをするのですが、9年間テーマは変わりませんでした。その理由は、テーマが完結しないからです。どうすればこのテーマに近づけるのかと悪戦苦闘の繰り返しでした。
ある時、私が職員室で「いつになったらこれでいいと思えるのかな……」とつぶやいたときに、当時の養護教諭が驚いて私の顔を見て「これでいいと思った瞬間に大空小は崩壊しますよ!」と言い、叱られたことを思い出します。
