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学年末、不登校の子に寄り添う~学校に来られない子の卒業と進級で、教員ができること~

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

卒業、そして進級。いずれの場合も、不登校の子にとっては、年度が終わることへの安堵と、不確かな将来への不安が入り混じる、とても揺れやすい時期です。
その心に寄り添い、卒業証書授与式から新年度の引き継ぎまで、気になる子が少しでも前に進んでいけるよう、担任が今できる支援のあり方を、見つめ直してみましょう。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

不登校の子の小学校卒業イメージ

不登校児の卒業は、それぞれの卒業の形を温かく受け止めよう

卒業証書授与式といえば、全員が体育館にそろうイメージがあります。しかし、不登校の子どもが増えている現在では、登校という結果を目指すのではなく、一人ひとりの歩みを大切にしようという価値観へと転換してきています。卒業の形もまた、子どもの個性に合わせた色とりどりであっていいはずです。

友だちと一緒にいるエネルギーが足りない子はモニター越しに

クラスメイトと同じ空間にいるのは、今の自分には少しだけエネルギーが足りない。でも、自分なりに数年間の区切りはつけたい……。そんな子には、別室や相談室、保健室のモニター越しで卒業式に参加しても良いのではないでしょうか。教室へ行けなかったことを避けてしまったと捉えるのではなく、今の自分にできる精一杯のやり方で参加したんだ、とその歩み寄りを温かく受け止めたいと思います。

式典に来られなくても、校長室で個別に…

別室でも卒業式に参加できなかった。そんなときは、是非とも後で保護者とともに学校を訪問してもらい、校長室に来てもらいましょう。担任と校長、そして本人と保護者という、最小単位で執り行われる濃密な式典です。
証書を学校で手渡されることで、本人が学校に対して「自分なりに折り合いをつけた」と感じてもらうことができます。不登校の子にとっては、学校とは途切れることない不安の象徴です。しかし、卒業という行事を実際に体験してもらうことで、「ものごとには終わりがある」という心理的な境界線を引くことができ、少なからず将来に対する意識の変容を期待できます。

普段着で来ても良いのです

卒業証書授与式という舞台、大抵の子はびしっと決めた衣装や新しい制服で参加します。その一方で、いつものパーカーやジーンズのまま現れる子がいます。私たちはつい、正装の子に意欲を感じ、普段着の子にやる気がないのかなと誤解してしまいます。でも、普段着で来る子は、着慣れた服でなければ、式典に参加する勇気が出なかったのかも知れません。そんな子どもたちにとっての私服は、不慣れな視線や空気から自分を守るための、切実な境界線なのです。どのような姿であれ、校門をくぐったというその一歩を、ありのまま丸ごと受け止めること。それが担任にできる、最初で最大の贈りものです。

心に残る言葉をプレゼントしよう

言葉は、一生を支えるお守りにもなります。不登校児童へのメッセージで最も大切なのは、評価を捨て、その存在そのものを祝うことです。状況に応じた言葉のあり方を考えていきます。

本人が来校したとき  会えた喜びをそのまま伝える

ただ再会できたことへの、うれしい気持ちを言葉にします。

「〇〇さん、よく来たね。会えて本当によかった。その服、とても似合っているね。この証書には、あなたが悩んだり考えたりした時間のすべてが詰まっています。学校に来られた日も、来られなかった日も、あなたはずっとクラスの一員でした。卒業おめでとう!」

ポイントは、学校に来られなかった期間を何もなかった時間とするのではなく、自分と向き合ってきた大切な時間として受け止めることです。そうすることで、あの子は自分の歩みに自信を持てるようになります。

保護者だけが来校したとき、その気持ちによりそってあげるには

保護者だけが、卒業証書を受け取りに来ることもあるでしょう。そんなときは、アドバイスではなく、共に悩み、歩んできた一人としての正直な気持ちを伝えましょう。

「お母さんがここまで〇〇さんを支えてこられたことを、心から尊敬しています。本来なら私の力で、あの子をこの舞台に立たせてあげたかったのですが……。力になりたいと思いながらも、自分の至らなさを感じる一年でもありました。本当に申し訳ありません。けれど、家という安心できる場所で自分をじっくり見つめた時間は、〇〇さんの次の一歩につながる大切な過程です。この証書は、学校に通った日数ではなく、ご家族が今日まで諦めずに歩んできた『絆の証』です。どうぞ、そんな気持ちを込めて届けてあげてください」

担任が自分の正直な思いを伝えることは、保護者の不安を和らげ、心を支えることに繋がります。あなたと共に歩めてよかったという温かな共感が、担任として届けられる最後の大切な支援になります。

児童にも保護者にも直接会うことが難しいとき

本人にも保護者にも会えない状況では、言葉の一つひとつに心を込めることがより大切になります。そんなときは。是非、手紙をつけてお渡ししましょう。

「〇〇さん、卒業おめでとう。直接お祝いを言えないのが寂しいけれど、あなたの新しい門出を応援している人間がここにいることを伝えたくて、手紙を書きました。家で大切に過ごしてきた時間も、自分の好きなことに熱中した瞬間も、すべてが今のあなたを作っている大切な宝物です。学校という枠組みにとらわれることなく、〇〇さんが自分らしく歩んでいくことを、私は心から信じています。返事はいりません。ただ、ここがあなたの母校であること、そして私がいつでも味方であることを、心のどこかで覚えていてくれたらうれしいです」

あえて「返事はいりません」と書き添えるのは、相手の負担を少しでも軽くしたいという、担任としての優しさです。学校を離れる瞬間に「味方がいる」という安心感をそっと手渡しておくこと。それは、あの子がいつか再び外の世界へ一歩を踏み出そうとしたとき、心を支える小さな光になるはずです。

在校生の年度末支援 は、 安心のバトンをつなぐ気持ちで

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