「子どもの意見表明」とは?【知っておきたい教育用語】
子どもには、自分自身について自由に意見を表明し、その意見が尊重される権利があります。子どもの意見表明に関する制度上の裏付けや、その環境整備について見ていきます。
執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛

目次
子どもの意見表明とは
【子どもの意見表明】
子どもの意見表明は「子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)」の第12条に規定されている権利で、子どもが自分自身に関係することについて、自由に意見を表し、その意見が年齢および成熟度に応じて正当に考慮される権利を指す。「こども基本法」(2022年)の制定によってその権利や理念の具体化がより一層求められるようになった。
「子どもの権利条約」は1989年に国連で採択され、日本は1994年に批准しました。この条約は、子どもを「保護の対象」から「権利をもつ主体」として位置づけ直す転換点となりました。一方で日本では子どもを「大人に従う存在」とみなす考えが残り、子どもの意見が軽視される場面も少なくありませんでした。背景には、学校や家庭、施設などで子どもの意見が十分に尊重されなかったり、貧困や虐待に苦しむ子どもたちが自らの意思を伝える場を持てなかったりする現実があります。
こうした構造的課題を踏まえ、国際的な人権保障の流れに沿って、子どもの権利を包括的に守る「こども基本法」が2022年6月に成立しました。同法は、子どもの権利条約の理念を具体的に実現することを目指し、子どもが自らの意思を表明し、社会の一員として尊重されることを基本理念としています。さらに2022年の児童福祉法改正により、児童相談所が子どもの意見を聴き、それを措置(支援内容)に反映することが明文化されました。
意見表明権の内容
意見表明権とは、子どもが自分に関わるあらゆる事項について自由に意見を述べ、その意見が年齢や成熟度に応じて考慮される権利です。国連「子どもの権利条約」第12条では、次のように定められています。
第12条
外務省「児童の権利条約(全文)」
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。
条文にある「意見(views)」は、言葉による発言に限らず、態度やしぐさなどの非言語的な表現も含まれます。例えば乳幼児は泣くことで自分の意思を伝え、大人はその表現から思いを推察する必要があります。また、子どもの意見を反映させるためには、発言の場だけでなく、意見を聴く大人の理解や支援、適切な表現手段の保障が不可欠です。
学校や福祉施設では、子どもが安心して話せる環境づくりや、発言を否定せず尊重する態度が求められています。さらに、家庭や地域での体験活動や参加型プログラムを通じて、子どもが自らの意見を社会的に活用する経験を持つことも重要とされています。
