「学校の先生」を幸せに続けるための条件
板書や折り紙のアイデア、日々の仕事の葛藤と喜びを本音で綴るInstagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生の新連載。第一回目の今回は、教師という仕事を志した時のお話です。どんなに大好きな憧れの仕事でも、それだけでは続けられないこの過酷な仕事をサバイブするために必要なこととは!?
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
目次
ずっと憧れていた「学校の先生」
私が「学校の先生になりたい」と初めて思ったのは、小学生のときでした。そのことを母に打ち明けると、
「お母さんも先生になりたかったんだよ」
と、とても嬉しそうに話してくれたことを覚えています。
英語が好きだった母は、英語の先生になりたかったのだそうです。しかし、裕福な家庭でなかったことから、教師になることを諦めて、高校を卒業してすぐに就職しました。
その仕事の話もたくさんしてくれて、いつも楽しく聞いていたものの、私は時折、「母が英語の先生になっていたら、どんな話を聞かせてくれたのだろう」と想像したものです。
母は、先生になるために歩みだした私をずっと、応援し続けてくれました。途中、反抗期でうまく話せなくなってしまったときもありましたが、母はいつも私の味方で、ほっとさせてくれる存在だったのです。
毎日が新しい可能性で満ちあふれる仕事
2008年春。私は、ついに憧れ続けた「学校の先生」になりました。
学校は、私にとってかけがえのない居場所となっています。この仕事が好きで、とてもやり甲斐を感じています。
子どもたちに必要とされながら、成長を近くで見られることは、何にも代えがたい喜びです。1日として平凡な日はありません。毎日が新しく、毎日が可能性で満ちあふれています。
教育現場が過酷だという話を耳にして、先生になろうか迷っている学生さんにもぜひ伝えたいです。
子どもは可愛く、職場の人は優しく、保護者の方もよくしてくださる方が多いこと。生活は安定し、休日は自分の時間を過ごすことができること。この仕事は本当にやり甲斐のある仕事だということを。
先生を続けるために必要なこと
そんな私でも、悩んで苦しくなったり、うまくいかなくて逃げ出したくなったりすることはあります。
先生という仕事は、一人ひとりの責任が重く、多くの資質や能力が要求されます。突然、目の前が真っ暗闇になることもあります。
そう、「先生」は、憧れだけでは続けられない仕事なのです。
きっと、私のように憧れを持ち続けて教師になった人でも、教職の道を諦めた人が多くいるはずです。現場で働きながらも、辞めるか続けるか究極の選択を迫られている人もいるかもしれません。
そんな人に私は伝えたいのです。
そんなときは、いちばん安心できる人に相談してください。
みなさんにとっては、誰でしょうか。心の中に浮かびますか。
私にとっては、長年の間、母親がそうでした。私が「学校の先生になりたい」と打ち明けたあのときから、母はずっと私を信じて応援してくれているからです。
そして、仲の良い同期にも恵まれ、よく相談していました。夢や願いを語り合い、共に努力する…。時には弱った気持ちを聞いてもらったり、共有したりすることで、苦しいときに助け合える大切な存在となっていくと思うのです。
先生になって13年が経つ今、母に相談することはほとんどなくなり、悩みはだいたい夫に聞いてもらうようになりました。
先生という仕事は、いくら経験を積み重ねても、誰かに支えてもらわないと時には不安になってしまうものなのです。
あなたは誰に相談しますか。頼れる友達はいますか。趣味はありますか。自分をさらけ出せる場所はありますか。
暗闇を乗り越えるのは、一人では難しいのです。自分の心を解放できる人、場所をつくっておいてください。そうすれば、この素晴らしい「学校の先生」という仕事をきっと続けていける、私はそう思います。
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書)ほか。編著・共著多数。