学習意欲を高め、学級生活を豊かにする「掲示物の工夫」【学ぶ意欲と力を育てる 学習指導の極意⑪】

子供たちの学ぶ意欲と力を育てるためには、教師はどのような指導をしていけばよいのでしょうか。学級経営を長年、研究・実践してきた稲垣孝章先生が、全15回のテーマ別に学級経営の本流を踏まえて、学習指導の基礎基本を解説します。第11回は、教室環境の中で重要な役割を担う掲示物について解説します。
執筆/埼玉県東松山市教育委員会教育長職務代理者
城西国際大学兼任講師
日本女子大学非常勤講師・稲垣孝章
学級は子供たちにとって、学習の場であるとともに生活の場でもあります。よい教室環境は、子供たちの学級生活を豊かなものにし、落ち着いた学習の雰囲気を醸成します。教室環境の中でも、掲示物は重要な役割を担います。
ここでは、窓側以外の教室「前面」「側面」「背面」に分割して取り上げます。特に、よい教室環境となる掲示物を作成するにあたって、次の3つのキーワード「年間の掲示計画の構想」「更新する掲示物への指導」「掲示物作成上の留意点」でチェックしてみましょう。
目次
CHECK① 年間の掲示計画の構想
教室内の掲示物は、年間を見通した掲示計画を構想することが求められます。特に、学校教育目標や学級目標のように常時掲示しておくものと、定期的に更新したり、必要に応じて更新したりしていくものがあることを踏まえて、計画を立てる必要があります。まずは、教室全体を見渡して、教室の「前面」「側面」「背面」に分けて掲示計画を立案しましょう。
教室の「前面」「側面」「背面」の掲示計画を立案します
教室の「前面」の掲示物は、ユニバーサルデザインの視点から最低限にしていくことが大切です。これまで、時間割表や発表の仕方など多くの掲示物を貼っている学級を見ることもありました。しかし、多様な特性のある子供たちのことも配慮した掲示にするためには、学校教育目標や学級目標程度の掲示にしたいところです。現在では、学校教育目標だけの掲示にしている学校も多く見られるようになりました。
教室の「側面」は、子供たちの手で掲示物を更新しやすい高さにしている学級が多く見られます。可能な範囲で、更新しやすい掲示物のスペースにします。ただし、オープンスペースの教室等では、側面に掲示することが困難な場合もあるので、その場合には背面を有効に活用することが求められます。
教室の「背面」の掲示物は、一般的には習字や学級活動コーナー、道徳コーナー等の設置が見られます。子供たちが、落ち着いた雰囲気の中で学習でき、学習の成果や豊かな学級生活を創造できるような掲示環境を整備していきましょう。
CHECK② 更新する掲示物への指導
学級内の掲示物には、学校教育目標等の常設するものと、学校だより等の1か月程度で定期的に貼り重ねていくものがあります。また、学習コーナーや係活動のように不定期に掲示物を更新していくものがあります。なかでも、子供たち一人一人の個人目標は、1か月程度で目標の達成状況を見直して更新していくようにしましょう。
個人目標は定期的に見直して更新します
学校教育目標を受けて設定した学級目標は「実現目標」です。その実現を目指し、「知育(頭づくり)・徳育(心づくり)・体育(体づくり)」の視点で設定するのが個人目標です。個人目標は、一人一人の子供が具体的に実践できたかどうかが分かるように設定する「達成目標」です。
例えば、「漢字の力を付けるために、新出漢字を毎日10文字ずつ練習する」と目標を立てた場合、この目標が高すぎた場合には目標を下げることも考えられます。すでに目標を達成できていた場合には、数値を上げたり、目標を他の教科に変えたりすることも考えられます。個々の子供が立てた目標が単なる飾りにならないように、1か月程度で目標を見直して、修正・改善していくようにしましょう。

