自分の思いをうまく伝えられない子に親ができることは?【保護者相談】
話すことが得意ではない子どもは多くいます。
そんな子どもを育てる保護者の悩みに、先生ならばどのように答えますか?
30年以上の現場経験をもち、現在は全国の小学校で教員育成、保護者の悩みにも答えている大ベテラン、多賀一郎先生ならばどう答えるでしょうか? 著書『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』よりお届けします。
追手門学院小学校講師・多賀一郎
Q うちの子どもは話し下手で、いろいろ考えてはいるのに、それをうまく相手に伝えられないのですが、どうしたらよいでしょうか?
このようなご相談を、これまでたくさん受けました。
これは2種類の場合があると思います。
一つには、ふだん友達と話しているときはぺらぺらと話せるのに、授業での発表がなかなかできないという場合。
もう一つは、友達との間でもなかなか自分の思いを話すことができないという場合です。
前者は、高学年にいくほど多くなります。ぼくはこういう子はあまり心配していません。大人になったときにも人前で発表できなければ困るというようなことは、めったにないことだからです。ほとんどの仕事で、大勢の前で話せないと困るということはありません。
あるとすれば、面接のときぐらいでしょうか。でも、それはそのためだけに練習すればよいことです。友人と話すコミュニケーションができている子どもなら、そこはなんとかなるでしょう。
後者は自己表現ができないし、自己開示、つまり「自分を他者に開いていく」ことができないことですから、少し心配です。
こういう子どもの場合、書くことなら自己表現できる場合があります。
手紙を書いたり、日記をつけたりすることを促してみて、様子を見てください。
全くそうしたこともできないのならば、もしかしたらコミュニケーションに障害のある可能性もあります。専門医に相談することも必要な場合があります。
でも、その前に先生に学校での様子をよく聞いてみてください。保護者の知らない子どもの姿を学校では見せていることって、けっこうあるものです。そして、他の生活態度で優れた姿を見せているのなら、「話せない」こと一つにこだわって直そうとする必要もないとぼくは思います。
●多賀一郎(たが・いちろう)。追手門学院小学校講師。神戸大学附属住吉小学校を経て私立小学校に30年以上勤務。「親塾」を各地で開いて保護者の相談に乗ったり、公私立小学校での指導助言や全国でのセミナーを通して教師を育てることにも力を注いでいる。 著書に『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』(小学館)『危機に立つSNS時代の教師たち―生き抜くために、知っていなければならないこと』(黎明書房)『全員を聞く子どもにする教室の作り方』(黎明書房)他多数。
『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』
著/多賀一郎
定価:本体1100円+税 (小学館)
ひとりで悩まなくても、先生と一緒に子育てできるんですよ!
30年以上の現場経験を経て、全国で教員育成&保護者相談にあたる著者が、現代の小学生保護者が幸せな子育てをするために必要な知恵を伝授。小学校生活についてのあらゆる疑問から、家庭でのちょっとした悩みまで、きめ細かくユーモアたっぷりのアドバイスがあります。読めば読むほど、子育ては「学校と一緒にできる」ということに気がつき、子育てに閉塞感を感じている人はそこから解放されるでしょう。新一年生の保護者はもちろん、どの学年であっても、いま心の中にある不安を解消する手立てが見つかる本です。
『学校と一緒に安心して子どもを育てる本』試し読みはコチラ