小・中学校の図工(美術)で、絵の下描きってするべきなの??


絵を描くに当たって、鉛筆による下描きはとても重要です。しかし、小学校現場で下描きが必要かと言われると、一概には言えません。どこで下描きが必要となるのか、小学校現場に適した下描きの方法などを今回の記事では考えていきます。
題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一
連載【いちばん楽しいアート】#20
小学校現場において下描きをどう捉えるか
一般的に絵を描く場合、下描きはとても重要で、省かないほうがいいものだと言えます。
プロの画家や漫画家など、いかに書くことに慣れている人であっても、下描きなしで絵を描いて、と言われると震えるでしょう。下描きをすることで、今自分が何を描こうとしているのか、どこにどのように描いたら素敵に見えるだろうかという漠然とした思考を画用紙上で整えることができます。真っ白の紙に絵を描くより、大まかな形や場所の目印がある紙に絵を描く方が不安が少ないですよね。そのため小学校現場での下描きは、
「絵を描きやすくするための目安」
として捉えるのがよいと思います。細かい部分を描く必要はありません。
これは、図工の授業においては気をつけなければならない点で、私を含め多くの人が、指導しているうちに陥りやすいです。
① 下描きをすることで、「技術も向上すべき」と目的が変わってしまう
② 下描きに時間をかけすぎてしまい、時間が足りなくなる
というものです。
①に関しては、指導をしている教師側が特に気をつけてほしい部分です。細かく下描きをすることで、例えば建物のパースや遠近感、レイアウトなど、書き手の技術のあるなしが見えてきますが、それらを向上させるための下描きではありません。あくまで、児童が絵画による自己表現を、よりやりやすくするための手立てだと捉えましょう。作品完成に至るまでの見通しを与えるきっかけとしての下描き、ということです。
②に関しては、特に絵が好きな子が陥りやすいです。結局下描きが終わりませんでした、とならないように声掛けが必要ですね。これについても後述します。
このような特徴があるということを念頭に、下描きを取り扱うことをおすすめします。
小・中学校の各学年で、下描きをどう扱うか
各学年の下描きの必要性は、
●低学年→必要ない
●中学年→必要ない
●高学年→必ずしも必要ではない
●中学校→指導したうえで推奨する
と経験上考えています。
特に、小学校の低学年、中学年については、
「作るってこんなに楽しいんだ、描くってすごく面白いことなんだ、絵の具を使ったら素敵な色ができるんだ、材料の組み合わせでこんな作品が出来上がるんだ」
というような体験をさせることを優先してください。
下描きが必要になるような絵が描きたい子は、こちらが指導しなくても自分で工夫し始めます。
高学年は、下描きはあってもいいですが、指導をした上で「時間は10分だけね」というように多く時間を掛けないようにすることで、作品の未完成を防ぎましょう。
中学生になると、描きたいイメージがかなりはっきりしてきますので、下描きが「絵を描きやすくするための目安」であるということへの納得も得られると思います。生徒には、描き込み過ぎないように気をつけよう、と伝えた上で推奨するとよいでしょう。