図工で、先生は子どもたちといっしょに作品を作ってますか? それとも見てるだけ??


授業中に児童と同じ題材で作品を作ったことがありますか。作品を作っている最中は指導ができないのではという考え方もありますが、その心配を補って余りあるほどのメリットがあります。
題字・イラスト・執筆/埼玉県公立小・中学校教諭 坂齊諒一
連載【いちばん楽しいアート】#18
図工の授業でも、もちろん児童にたくさん声をかけることが最優先です。技術の指導などではなく、こちらが絵や作品を見たときに見つけた「素敵」をたくさん伝えてあげてください。
しかし、ある程度声をかけたら、児童が「作品と向き合う時間」も必要です。意図的に教師が声をかけない時間を確保し、その時間を使って、先生自身も子どもたちと同じように、作品を作ってみてください。個人的にはメリットしかないと思っています。
そして、作品づくりにおいては、以下の点を覚えておいてください。
●作っている最中は「作品作りを楽しんでいる人同士」として接すること。
●決して、子どもたちの見本になるような、上手な作品ではなくていいということ。
●高い技術なども不要であるということ。
●完成しなくても構わないということ。
① 図工が楽しいという気持ちが伝わる
授業が楽しい、何かを作るって良いな、という気持ちはどんな声かけや授業準備より、教員自身が楽しんで作っている姿に表れます。「百聞は一見に如かず」とことわざにもあるように、どれだけ言葉で楽しく作ろうねと言ったところで、教師が思っている半分も伝わっていないでしょう。
私は異年齢が集まってキャンプをしたり、雪山に遊びに行ったりするボーイスカウトのような団体に所属していました。そこでは最終日前の夜に、グループで考えた出し物を見せるイベントがありました。その出し物のお決まりで、最後に指導員(教員のような立場の人)が出し物をしてくれました。そこでは指導員が自分の得意なことを全力で披露してくれました。そしてその得意なことを見た他の指導員がお互いを褒め合い、盛り上げ、楽しんでいました。大の大人がまるで子どものように、和気あいあいと全力で取り組み、楽しんでいる姿に非常に魅力を感じたことを今でも覚えています。そして教員として子どもたちを前にした今、その気持ちは確信に変わっています。
「大人が全力で楽しんでいる姿には、周りを動かす力がある」
ということです。好きな先生が全力で楽しんでいたら尚更でしょう。
「今、制作がいい感じなんだよね!こう作りたくてたまらない。皆に声かけている場合じゃないや!笑」のような冗談を飛ばしながら、作品を作る姿を見せています。
② 作品作りのヒントや想いを散りばめられる
授業の導入時につい話しすぎてしまう、ということは珍しくないですね。活動前に話せば話すほど児童の表現の幅が狭まり、集中力が削がれ、活動時間が短くなってしまいます。
授業中に作品を作れば、導入時に話しきれなかった作品を作るにあたって使ってほしいテクニックや、このように作ってほしいという想いを視覚的に示すことができます。
また、教師が作っているものを見て真似をし始める児童が出てくることでしょう。これはとてもいい兆候です。学ぶことは真似をすることから始まります。真似をしても全く同じになることはありません。真似る過程で自分なりのエッセンスが入り、新しい表現になることがほとんどです。素敵な表現と出合えることを楽しんでみてください。