多様な視点で評価する通知表作成のポイント|新任教師のための学級経営講座 #5


初めて学級担任になった新任教師にとって、「学級経営」は不安なもの。そこで、学級経営の基本が学べる連載をお届けします。毎月の準備や進め方などをその月の学校行事なども絡めながら紹介。鳥取県の公立小学校で、若手教師の育成に尽力してきた友定章子先生が、新任教師でも分かりやすいように解説します。今回は、子供の評価と通知表作成について取り上げます。
執筆/元鳥取県公立小学校教頭・友定章子
目次
事前に個々の子供のデータをまとめておこう

そろそろ学期末の成績を付ける(通知表作成)時期になりました。小学校の時の評価がきっかけで、「先生に歌をほめられたから歌手になりたいと思った」という子がいたり、「算数の成績がよかったから、理系に進んでエンジニアになった」という子もいたりします。そう考えると、子供たち一人一人について評価することの責任を感じずにはいられません。
小学校の成績は、ほとんどが3段階評価です(1年生の1学期は、教科ごとというより、項目ごとに評価する学校が多いかもしれません)。
いざ、成績を付けようとした時、何をもとに付けますか? もちろん、テストの結果だけで付けることはないでしょう。学校によっていろいろな成績評価の仕方が示されていると思いますが、担任として個々のデータを整理しておく必要があります。
私が付けていたデータを紹介します。一人一人の子供について、Excelを使ってデータを整理していました。学習面や生活面について、頑張っていることや課題をまとめます。頑張っていることは、具体的な場面を書き加えておくと、懇談の時に保護者に伝えることができます。友達関係についても項目を挙げて書き留めておくこともあります。

ところが、30人の表を作っても、空欄が目立つ子供がいます。メモが書けないということは、日ごろ観察していない子です。6月の中旬以降は、観察がたりなかった子を重点的に観察し、具体的な場面を書き込みます。2学期・3学期と継続することで1学期と比較しながら成長をほめることができ、通知表の所見欄に書くことの重複も避けられます。また、学年末に記載する指導要録の記述も容易になります。
相対評価と絶対評価ー通知表は絶対評価で作成
小学校の通知表には、教科ごとに「知識・技能」「思考・判断・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点があり、それぞれ3段階で評価します。テストの点数は、「知識・技能」を評価するものが多いです。問題によっては、「思考・判断・表現力」を評価するものもありますが、問題数が少ないです。
文部科学省の学習指導要領には、教科別に目指すべき学習内容に到達しているかどうか判断する「評価規準」が示されています。注意すべきは、「評価規準」が“基準”ではなく“規準”であることです。
毎学期の評価は、人数の割合に応じて評価する「相対評価」と、評価規準に基づく「絶対評価」があります。
学級の人数と割合を考えて評価する時「相対評価」を用います。この点数以上をA、この点数以下をC、その間をBとする。つまりは、2本の評価基準線によって成績を付ける方法です(図1)。

ただ、文科省が示している「評価規準」とは「絶対評価」としての評価規準です。この学習内容に到達したかどうかが問われています。つまり、その目標に到達していれば全て「B」となります。到達していなければ「C」です。その上で「B」の中で、特に「主体的に取り組む態度」や「思考・判断・表現力」が優れていると評価した場合「A」を付けます(図2)。
「知識・技能」については、テストの点数で評価できると考えます。しかし、「思考・判断・表現力」や「主体的に取り組む態度」はどう評価すればよいのだろうと考えてしまいますよね。そこで、必要になってくるのが、日ごろからの子供の学習状況を観察したデータです。
私は、次のようなデータを取っていました。「主体的に取り組む態度」は、日常の家庭学習のテーマや授業に対する予習復習、学習意欲についての観察記録、友達に優しく教えているなどの関わり、読書記録等。日頃の子供たちの様子を観察して、メモをたくさん取っていました。
また、「思考・判断・表現力」は、日ごろの授業の中での話し言葉、説明の仕方、音読、ノートなどを記録していました。それらの結果を鑑みて「B」の中から特に「思考・判断・表現力」「主体的に取り組む態度」が優れていると評価した子供を「A」としました。結局、評価するためには、テストの点数だけでなく、日ごろからの観察記録が大切になります。
観察記録は、◎、○、△などの簡易な記号で記録していました。しかし、日ごろから記録を取ろうと思っていても、なかなか全員を記録することは難しいものです。だからこそ、記録があまりない子供について、6月中旬から着目する子を決めてしっかりと観察し、もう一度評価することが大事になります。評価する時、教師としての私の判断でよいのだろうかと不安は付きまとうものです。しかし、一つ一つのデータがたとえ主観的に見えても、たくさんのデータは客観につながります。評価するには、エビデンスとしての多面的で多様なデータが必要不可欠なのです。