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「p4c」とは?【知っておきたい教育用語】

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【みんなの教育用語】教育分野の用語をわかりやすく解説!【毎週月曜更新】
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皆さんは子どものための哲学「p4c」をご存じでしょうか。今回は子ども同士の対話を実践するp4cについて、その概要と方法、身に付く力などについて解説します。

執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム

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p4cとは

【p4c】
子どものための哲学。「Philosophy for Children」を略した言葉で、「p4c(ぴーふぉーしー)」と呼ばれる。子ども哲学や子どもの哲学などとも訳され、対話を通して子どもの論理的思考力を養成する教育的アプローチである。

p4cは1960年代にアメリカの哲学者であるマシュー・リップマンによって、「子どもの哲学」の理念を土台とした「哲学対話」の授業実践として開発されました。1974年に、子どもの哲学推進研究所(IAPC)が設立されたことで世界的に普及し、日本では2010年代に首都圏の私立小学校・中学校を中心として導入が進みました。

また、2011年の東日本大震災を契機に、文部科学省が掲げた「復興教育」の教育実践の一つとしても取り上げられ、2013年から宮城県仙台市の小中学校で「子どもの哲学」として取組が始まりました。

身近なテーマや物語を軸に、子どもたち自身が自ら問いを立て、その問いについて対話し考えを深めることがp4cの主題であり、子どもたちが将来、民主主義社会において自立的な市民になることができるよう、論理的思考力を涵養することを目的としています。

p4cの実践方法

p4cの実践には様々な方法がありますが、基本的な流れについては以下の通りです。

Step1 円になって座る
参加者同士がお互いの様子を確認しながら話せるよう、円をつくります。

Step2 問いを立てる/選ぶ
問いは子ども同士で候補を出し合い多数決で決めたり、教師が事前に用意した問い(3つほど)のなかから子どもたちに選んでもらったりするなどして見いだしましょう。このとき、教師はなるべく意見せずに、子どもたちの意思を尊重し、自ら考えることができるよう導きましょう。

Step3 コミュニティボールを用いて対話する
毛糸などを丸めてつくったコミュニティボールをお互いにパスし合いながら、問いについて対話します。開始前には子どもたちがルールを理解できているようにしましょう。

〈ルール〉
●ボールを持っている人だけが会話できる。
●自分の話を終えたら、次に話したい人へボールを渡す。
●考えがまとまらず発言できていない人に催促したり、発言を強要したりしてはいけない。
●人を傷つけるような発言をしない。             
●人の発言によく耳を傾ける。

教師は質問したり、問いに対する具体的な例を考えるよう提案したりするなどして、対話をより深いものにできるようアシストしましょう。

Step4 振り返る
最後に対話の評価をします。評価方法は教師が「対話に参加することができましたか?」「どのような対話ができましたか?」といった質問を問いかける対話形式での評価方法や、プリントに評価を記述する方法などがあります。

p4cの主役は子どもです。教師はあくまでも「ファシリテーター(伴走者)」としての役割を果たせるよう動きましょう。

また、p4cの実践において大切なことは「相手を批判・否定しない」ことです。たとえ子どもに偏った考えがあったとしても、「本当にそうかな?」「別の視点はないかな?」とメタ認知を促すことで、子ども自身が考えを修正できるような指導を心がけましょう。

p4cによって身に付く力

p4cを通して論理的思考力のほかに、他者を思いやる力や道徳性を育てることも期待されます。それは「他者の発言を否定しない」「自分の発言を受け止めてもらえる」という環境が「セーフティー」をつくり出し、子どもたち同士でケアできるようになるからです。また、子どもたちが主体となり問いを立てたり選択したりするなかで、知的好奇心も育まれます。

まだ日本では認知度の低いp4cですが、主体的・対話的で深い学びの実践方法の一つとして、道徳や生活、総合的な学習の時間などで取り入れてみてはいかがでしょうか。

▼参考資料
p4c in schools KANSAI-japan(ウェブサイト)「子どものための哲学
EDUPEDIA(ウェブサイト)「子どものための哲学とはなにか~HP『p4c-japan』紹介~」桝形公也、2018年9月8日
静岡大学(PDF)「道徳科における『子どもの哲学』(P4C:Philosophy for Children)の導入:『哲学対話』授業の基本原理の検討と授業案・カリキュラム・評価の開発」藤井基貴、土屋陽介、2018年6月26日
(PDF)
宮城教育大学(PDF)「子どもの哲学(p4c)の意義について―ー震災からの復興に向けて/クリティカル・シンキングとの比較を中心に」川﨑惣一、2015年
山梨学院短期大学(PDF)「子どもとする哲学(p4c)とは何か? ー共に考え、主体化するための教育理論とその実践ー」川上英明、2023年2月17日

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