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1時間の授業というよりも単元全体をどう構成するかが大切 【全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり #28】

連載
全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり

宮崎県には、教科等の指導力に優れた先生を、スーパーティーチャーとして県教育委員会が委嘱する制度があります。そこで、今回からは中学校英語のスーパーティーチャーである、宮崎市立東大宮中学校の遠目塚由美指導教諭に、自身の単元・授業づくりの考え方やめざす生徒像、そのような考えを象徴する単元や授業の実例を紹介してもらうことにしましょう。
初回となる今回は、まず3年生の単元Unit 6 “Beyond Borders”(NEW HORIZON English Course 3「東京書籍」)で、本文の題材・内容自体に直接関わる目標と、単元の文法事項を含んだ言語活動に焦点を当てたタスクで構成された単元について紹介していきます。

遠目塚由美指導教諭
宮崎県宮崎市立東大宮中学校・
遠目塚由美指導教諭

自分ごととして考える力も身に付けさせたい

遠目塚指導教諭は、やはり資質・能力を育んでいくためには、1時間の授業というよりも単元全体をどう構成するか、単元デザインをどうするかが大切だと話します。そして、その単元構成の手順から、具体的な3年生の単元、“Beyond Borders” の単元構成について、次のように説明をしてくれました。

「私が単元デザインをするときには、当然のことですが、まずゴールでの生徒の姿を明確にします。この単元の学習を終えたら生徒はどんなことが言えて、どんな姿になっているかを明確にし、それは何をもって達成できたというのか、評価規準も整理します。そこから、生徒たちがワクワクしながらその単元で出てくる言語活動に取り組むには、どのような導入にして、どんな問いを追究していけばよいかを考えています。

そうしたゴールの姿や言語活動、学習過程については、生徒が自らの学びを調整できるよう、単元の導入である1/9時で説明をしています。この単元、“Beyond Borders” では、単元の最後の時間に生徒全員が歴史上の人物の中で推しの人物1人をALTにプレゼンテーションし、その中から、特に現代によみがえらせたいと思う人物を8人選んでもらうという学習活動を行うことを説明しています(資料1参照)。生徒たちは、自分の推しをALTに選んでもらいたいので、その魅力を生き生きと語ります。

【資料1】単元計画

資料1

ちなみにこの単元は、内容としては国際協力キャンペーンについて学ぶわけで、国際理解自体も『思考力、判断力、表現力等』や『学びに向かう力、人間性等』の目標としてきちんと整理し、国際協力キャンペーンに対して自分なりの意見をもつことができるようにさせたいという願いがあります。それと同時に、この単元で学習した仮定法過去 “I wish〜” や “If I were〜, I would〜” の用法を理解し、歴史上の人物について、例えば、彼や彼女が現代にいたらというように、架空の状況を交えながら紹介することができることも『知識及び技能』の目標としているのです。教科書の内容を生かして、どのような目標やタスクであれば、生徒たちは生き生きと学ぶことができるか、そして生き生きと学ばせるためにどのような単元構成がよいのかを考えています」

この単元ではまず1/9時から『歴史上の推しの人物を紹介する』というゴールに向かって学習を進め始め、その過程で文法事項として仮定法過去について学習(1/9〜2/9時)した後、自分が興味ある歴史上の人物について、仮定法過去の用法を使って架空の状況を交えながら紹介する活動を行います(3/9時)。

そこから、学んだ文法事項も生かしながら本文を使って学習を進め(4/9〜8/9時)、「国際協力キャンペーンについての文章を読み、国際協力に関する自分なりの考えをもつことができる」という目標を達成していきます。「ここで、本文(読み物)を通して読む力を育成するだけでなく、自分ごととして考える力も身に付けさせたい」と遠目塚指導教諭は話します。

そのような学習過程を通して、文法事項に関する「知識及び技能」もより確かなものにしつつ、単元の最後(9/9時)にその力を生かして、改めてALTに歴史上の推し人物についてプレゼンしていくというわけです。そのプレゼン内容は、単元を通して、情報追加・修正・改善を図っています。

「教科書本文の内容理解に加えて、アウトプットとして全員がスピーチやプレゼンを行うとなると、時間がいくらあっても足りないことになってしまいます。ですから、この教材を通して力を付けていく上で重要な部分はどこなのかを明確にして、削ぎ落とす部分は削ぎ落としながら、ねらいに沿った単元計画を作成する必要があります。そのためには十分な教材研究が欠かせません」と遠目塚指導教諭。

授業の帯活動として、自分自身のことについて10項目伝える活動も行う

【資料2】指導案

資料2

この単元では、3/9時の授業を公開したという遠目塚指導教諭。ごく簡単に、授業についても紹介をしてもらいました(資料2参照)。

「まず、授業の最初に帯活動を行っていきます。この授業では、Wham!(ワム!)の『Last Christmas』を歌った後に、自分自身のこと(夢、目標、経験、興味・関心のあることなど)について10項目を伝える『10の私』を行いました。

ここから前時(2/9時)までに、文法事項の学習とともに、自分が推したい歴史上の人物について紹介する準備をします。

そして本時の『めあて』を確認した後、改めて自分の推しの人物について、ペアでやり取りをしながら内容を整理して、その段階で、机間指導を通してよいと思った表現を全体に紹介して共有し、その後、自分の紹介文を修正しながらワークシートに記入していきます(資料3参照)。

それができ上がったら、今度は席を移動し、やり取りをしながら、その中で最初に整理した紹介文に修正を加え、これを繰り返しながら最終的に人物紹介の完成版を作成していくのです。

また、教科書本文を読んでいく過程で、当該文法事項だけでなく紹介文の内容についても修正を図りつつ、最終的には単元の最終時(9/9時)でのALTへのプレゼンへとつなげていきます」

【資料3】ワークシート

今回は、生徒が学習に生き生きと取り組むための単元の目標と単元計画の例を紹介しました。次回は、そのような単元・授業をデザインする遠目塚指導教諭の意図、あるいは英語教育を通して育みたい力などについて紹介します。

【全国優秀教師にインタビュー! 中学校編 中1〜中3を見通す! 「高校につながる英・数・国」の授業づくり】次回は3月28日公開予定です。

執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之

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