朝の健康観察を工夫して、教室が明るく大盛り上がり! 学級作りにもオススメです!

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マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
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元山形県公立学校教頭

山田隆弘

朝の時間は、児童と担任にとって1日のスタートを決める大切な時間です。特に健康観察は、児童の体調や心の状態を把握し、学級の雰囲気づくりにも関わります。しかし、形式的なやり取りになりがちで、児童が退屈することもあります。そこで、健康観察を楽しく、ユーモアのあるものにする工夫を紹介します。朝の時間を活気づけ、児童が笑顔で1日を始められるようなアイデアを考えていきましょう。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

1 健康観察の意義とは?

健康観察は単なる出欠確認ではなく、児童の健康状態を把握し、必要に応じた対応を行うことが目的です。しかし、それだけではなく、学級全体の雰囲気づくりにも大きく関わります。
わたしは、かつては健康観察を早く終えて授業に入りたかったため、「元気かどうか」の返答を聞きチェックし、元気でない児童のときだけ顔を上げるという方法を取っていました。しかし、ある日、体調が悪いのに「元気」と答えた児童が、後から調子を崩してしまうことがありました。この経験を機に、児童一人ひとりの顔色や様子をしっかり観察することの重要性を再認識しました。
健康観察には、次の3つの重要な意義があります。

⑴ 児童の健康状態の把握

発熱や体調不良を早期に発見し、適切に対応することができます。特に感染症が流行する時期には、クラス全体の健康を守るための大切な時間となります。

⑵ 児童の精神状態の確認

元気がない児童や普段と様子が違う児童に気づき、声をかけることで、心のケアが可能になります。メンタル面のチェックは、児童の安心感を高め、より良い学習環境をつくる上で欠かせません。

⑶ 学級の一体感の形成

朝のやり取りを温かく楽しいものにすることで、児童が安心感を持ち、学級全体の雰囲気が和らぎます。担任が児童一人ひとりと向き合うことで、信頼関係が築かれ、学級の結束力も高まります。

このように、健康観察は児童の心身の健康を見守るだけでなく、学級経営の基盤をつくる重要な時間です。形式的なやり取りに終始せず、児童の表情や声のトーンなど細かな変化を見逃さないようにすることが大切です。

2 一日を元気と笑顔でスタートしよう

健康観察が形式的になり、児童が「ただ答えるだけ」の状態になってしまうと、せっかくの朝の時間が単調になりがちです。本来、健康観察は学級の雰囲気を温かくし、児童同士や担任との関係を深める絶好の機会であるべきです。しかし、機械的なやり取りが続くと、児童にとっては退屈な時間になり、担任にとっても単なる確認作業に終わってしまいます。
以前、地域のライオンズクラブ主催の表彰式に児童引率として参加した際、クラブの会員が「○○ライオン」とお互いを呼び合う姿を見て、「これはおもしろい!」と感じました。この経験をヒントに、学級でも楽しめるやり取りを取り入れることを考えました。
楽しい健康観察を工夫することで、以下のような効果が期待できます。

⑴ 学級の活気が増す

朝から笑顔があふれ、ポジティブな雰囲気で1日をスタートできるようになります。児童の表情が明るくなれば、クラス全体の雰囲気も良くなり、学級経営にも良い影響を与えます。

⑵ 児童の参加意識が高まる

「元気です」と答えるだけでなく、自分なりの表現を工夫することで、児童が主体的に関われるようになります。例えば、「今日の気分を天気に例えて答える」「動作をつけて表現する」などの方法を取り入れることで、児童一人ひとりが考えながら参加できるようになります。

⑶ 担任と児童の距離が縮まる

ユーモアを交えたやり取りをすることで、児童が担任をより身近に感じるようになります。担任も児童のちょっとした変化に気づきやすくなり、関係性が深まることで、より安心して学校生活を送ることができる環境が整います。
また、児童にとって「楽しみな健康観察」となれば、朝の教室に来ること自体が楽しくなり、登校のきっかけになることも考えられます。特に、朝の会に参加することに抵抗を感じている児童にとって、少しでも「行ってみよう」と思える要素があれば、不登校や遅刻の防止にもつながる可能性があります。

このように、健康観察を単なる健康確認の時間ではなく、学級づくりの一環としてとらえ、児童が楽しめる工夫をすることが大切です。

3 おもしろ健康観察あれこれ

健康観察を楽しくするためには、おもしろいやり取りが一番です! 児童の関心が高まり、学級の雰囲気も明るくなります。ここでは、わたしが実践してきたものや、今後試してみたいと思っているアイデアをいくつか紹介します。

⑴ 時代劇風(武士バージョン)

担任:「○○殿!」
児童:「元気でござる!」
★アレンジ 具合が悪い場合は「拙者、本日は戦(いくさ)支度ならず…」

⑵ 宇宙人風

担任:「○○星人!」
児童:「ピコピコ! エネルギーチャージ完了!」
★アレンジ ★アレンジ ちょっと元気がない日は「燃料不足…補給中…」

⑶ 映画のセリフ風

担任:「○○、君の名は?」
児童:「元気です、君の名は?」(リレー形式で次の児童を呼ぶ)
★アレンジ 元気が出ない時は「旅の途中で休憩中、君の名は?」(冒険映画風)

⑷ 動物の鳴き声風

担任:「○○パンダ!」
児童:「もぐもぐ! 竹食べて元気です!」
★アレンジ ほかの動物もOK!
<例>
「○○ペンギン!」→「よちよち! 氷の上で元気です!」
「○○ゾウ!」→「パオーン! 力がみなぎっています!」

⑸ ヒーロー風

担任:「○○マン、エネルギーチェック!」
児童:「変身完了! 元気100%!」
★アレンジ 元気が半分の時は「エネルギー50%、充電中!」

⑹ スポーツ選手風

担任:「○○選手、コンディションは?」
児童:「絶好調! 試合開始!」
★アレンジ 疲れ気味の時は「今日はリハビリモードです…」

⑺ 忍者風

担任:「○○丸、忍びの準備は?」
児童:「はっ! 元気に準備万端にござりまする!」
★アレンジ 調子が悪いときは「本日は修行不足…回復の術を…」

⑻ 歌手・アイドル風

担任:「○○スター、調子はどう?」
児童:「絶好調! ライブスタート!」
★アレンジ いまいちすっきりしない時は「今日はバラードモードで…」

このように、児童の興味を引くユーモアを取り入れることで、健康観察の時間が楽しみなものになります。日替わりでテーマを変えたり、児童自身に新しいやり取りを考えてもらうのも面白いです!

4 学級の雰囲気に合わせたアレンジ

健康観察を楽しい時間にするためには、学級の雰囲気や児童の性格に合わせた工夫が大切です。児童が楽しめる形にアレンジすることで、毎日の健康観察が活気に満ちたものになります。

⑴ 学年に応じたアレンジ

① 低学年(1・2年生)
簡単な掛け声やリズム遊びを取り入れる
低学年の児童は、リズムに乗ったやり取りや繰り返しのある遊びが大好きです。担任の問いかけに対し、みんなで同じリズムや動作をすることで、楽しく健康観察を行えます。
<例>
「○○くん、元気?」➡︎「元気モリモリ、いち・に・さん!」(手拍子付き)
「○○さん、今日はどんな気分?」➡︎「晴れ晴れハッピー!るんるん♪」(軽くジャンプしながら)

② 中学年(3・4年生)
役になりきる楽しさを重視する
中学年になると、少し複雑なやり取りや役になりきる遊びが楽しめるようになります。曜日ごとにテーマを決めたり上掲のようなロールプレイを取り入れると、積極的に参加するようになります。
<例>
「○○丸、体調はどうでござる?」➡︎「拙者、元気でござる!忍法・元気の術!」(忍者バージョン)
「○○師匠、調子は?」➡︎「元気100%!でもすべってませんか~?」(お笑いバージョン)

③ 高学年(5・6年生)
自由度を持たせ、児童が主体的に工夫できるようにする
高学年になると、自分たちで考える楽しさを加えると、より意欲的に取り組むようになります。テーマを担任が決めるだけでなく、児童自身がアイデアを出し合い、曜日ごとのスタイルを決めるなど、参加型の運営にするのもいいでしょう。
<例>
「今週のテーマは○○!みんなの考えたやり方でやってみよう!」
児童が毎週交代で司会を担当し、テーマを決める(「今日はアニメキャラ風で!」など)
「今週の流行語を取り入れた健康観察」など、トレンドを反映させる

高学年では、担任が決めた形式よりも、児童が楽しめる方法を自ら工夫する方が盛り上がるため、担任はサポート役に回るのが理想的です。

⑵ 曜日ごとにテーマを変えて楽しむ

曜日ごとにテーマを設定し、変化をつけることで、毎日違った雰囲気の健康観察を楽しめます。

表 曜日ごとのテーマ

曜日ごとにテーマが決まっていると、児童も楽しみながら参加できます。英語の日を設けることで、英語の学習の時だけでなく、簡単な英会話に慣れる機会にもなります。

このように、学級の雰囲気や児童の発達段階に応じてアレンジを加えることで、健康観察が単なる出欠確認ではなく、学級づくりの一環となります。児童が楽しみながら参加できるよう、工夫を重ねていきましょう!

5 健康観察の効果を最大限にするために

健康観察を楽しいものにするためには、担任によるアイディアや工夫だけでなく、児童自身が主体的に関わることが重要です。担任が一方的にやり方を決めるのではなく、児童の意見を取り入れ、参加意識を高めることで、健康観察がより充実したものになります。
また、担任自身が楽しみながら取り組むことで、自然と学級全体の雰囲気が明るくなります。健康観察の効果を最大限にするための具体的なポイントを紹介します。

⑴ 児童にテーマを考えさせる

担任が毎日やり方を決めるのではなく、「今日はどんな風に答えたい?」と問いかけ、児童自身にアイデアを出させることで、主体的に関わる姿勢を育てます。児童の創意工夫を活かすことで、健康観察が「楽しい時間」から「自分たちで作る時間」へと変わります。

①「今週のテーマを決めよう!」
週の始めに、児童からテーマを募り、投票で決定する。(例:「アニメキャラ風」「好きな動物になりきる」「スポーツ選手風」など)
②「くじ引き方式でランダムに決める!」
いくつかのテーマをくじにして、毎日ランダムに決定する。(「忍者風」「英語風」「歌手風」など)

このように、児童が自分たちで考えたテーマで健康観察を行うことで、より主体的に楽しめるようになります。

⑵ 担任自身が楽しむ

健康観察を盛り上げるためには、担任自身が楽しむことが何よりも大切です。担任が興味なさそうに淡々と進めると、児童も退屈してしまいます。逆に、担任が積極的に参加し、笑顔で取り組むことで、児童も自然と楽しくなります。

① 教師もキャラクターになりきる
例えば「今日は先生が忍者だから、みんなも忍者風に答えて!」と担任も一緒に楽しむ。
② 声のトーンや表情を工夫する
単調な呼びかけではなく、突然「○○将軍、体調はどうでござる?」とユーモアを交えて話す。
③「せんせいも挑戦!」と児童と対等に楽しむ
児童が考えたテーマに担任も従い、いっしょに楽しむことで親しみやすさが増す。

担任が率先して楽しむことで、児童も安心して参加でき、学級全体の雰囲気が明るくなります。特に低学年の場合は、最初に担任が話すとうまくいきます。

⑶ 無理のない範囲で行う

健康観察を楽しくすることは大切ですが、学級の状況や時間を考慮し、無理なく実施することも重要です。時間が足りなくなったり、負担が大きくなりすぎると、本来の目的である「児童の健康状態の把握」が疎かになってしまいます。また、表現することが苦手な児童には無理をさせないように配慮をしていきます。

① 時間を決めて行う
健康観察の時間を2~3分と決め、その範囲でできることを工夫する。
② 短縮バージョンを用意する
忙しい日(学校行事がある日など)は「元気チェックだけ」「全員で一斉に答える」など簡略化した方法を採用する。
③ 曜日ごとに形式を変える
月・水・金は楽しいやり取り、火・木はシンプルな確認など、児童の負担を考えバランスをとる。

健康観察は毎日行うものなので、無理なく継続できるよう、学級の状況に応じた柔軟な対応が求められます。

健康観察の本当の価値は、ただの習慣にとどまらず、学級の空気をつくり、児童の「自分を大切にする力」を育てることにあります。その効果を最大限に引き出すためには、「児童の主体性を育てること」「担任が楽しむこと」「無理なく続けられる工夫をすること」が鍵となります。
決められた流れをただ繰り返すのではなく、児童自身が関わり、考え、工夫できる健康観察にしていくことが大切です。「今日はどんな方法で健康チェックしよう?」「気分がすぐれないときはどう伝えよう?」といった問いかけを通じて、児童とともにアイデアを出し合いながら、学級に合った形をつくっていきたいです。
健康観察は、単に体調をチェックするだけのものではありません。日々の対話を通じて、児童が自分自身を見つめ、仲間を気遣う力を育む大切な時間です。だからこそ、楽しみながら、意味のあるものにしていくのです。「ただやる」から「生かす」健康観察へ見直してみませんか?

イラスト/坂齊諒一


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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