新年度、教務主任・研究主任と一枚岩の学校経営を目指すための「落とし文句」とは

連載
GKC(がんばれ教頭クラブ)

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

学校経営の新年度を迎え、次年度の計画を完成させる時期ですね。学校の新しい方向性を作り、教育課程や校内研究体制を整えることが重要ですが、そのためには、教務主任・研究主任を円満に任命し、早々に信頼関係を結ぶことが大切です。今回はそんな人間関係に有効な「落とし文句」を考えていきたいと思います。

【連載】がんばれ教頭クラブ

1 管理職+教務主任+研究主任。「四役」で一枚板に

学校経営の両輪といわれるものが、「教育課程」と「校内研究」です。
この二つを支えるのは、学校のミドルリーダーである教務主任と研究主任です。
校長・教頭の管理職とこのリーダーたちで「四役」を形成し、この「四役」が「一枚岩」となったとき、学校は一貫性をもった経営ができるようになると言えます。
新年度を迎え、新しい経営体制となったとき、教務主任や研究主任といったミドルリーダーたちを選任し、早々にチームアップをはかることが大切ですね。
管理職は(特に教頭は)、教務主任や研究主任に対して、その存在の重要性を強調し、「殺し文句」を使って自信を与え、彼らを本気にさせる役割があります。これにより、教務主任は教育課程を、研究主任は研究計画を…校長のビジョンを現実化するために動き出します。

2 教頭のミドルリーダー育成手法「殺し文句」

教頭が校長の夢を実現するコントローラーとして、ミドルリーダーを育成していかなければならないです。その際、その気にさせる「殺し文句」が効果を発揮します。
「殺し文句」というのは、相手の心を強く引きつける言葉やフレーズのことを指します。特に、相手が「それなら」と思うような、決定的な言葉や説得力のある言葉に使われます。言い換えれば、「これで決まり!」と思わせるような言葉のことです。たとえば、何かをお願いするときに「これを言われたら、もう断れない!」と感じさせるような言い回しです。

⑴ 教務主任への「殺し文句」

教務主任が校長のビジョンを具体化し、教職員が遂行していくため、教頭が発する「殺し文句」には、以下のような言葉が考えられます。

①「校長のビジョンを具現化するのは、あなたの力にかかっている!」
教頭が教務主任の役割の重要性を強調する言葉。教務主任の責任感を喚起し、仕事に対する意識を高めます。

②「これがあなたの仕事の真価を問われる瞬間だよ!」
教務主任の職務に対するチャレンジング言葉で、計画を実行する際に多少のプレッシャーを感じさせ、結果を出すことへの責任感を強調します。

③「あなたの作る教育課程が校長の夢を形にするんだ!」
教務主任が自分の仕事を校長のビジョン実現に結びつける言葉。自分の仕事の意義を再確認させるものです。

④「あなたの判断が学校全体に影響を与えるんだ!」
教務主任が影響力を持っていることを再認識させることで、しっかりとした判断を求めるメッセージを伝えます。

⑤「学校の未来を作るのはあなただ!」
教務主任が学校の方向性を決定づける役割を持つことを強調し、その責任の重さを自覚させます。

これらのフレーズは、教務主任が校長のビジョンを具現化するためにしっかりと責任を持ち、計画の実行に取り組む動機付けとなります。

⑵ 研究主任への「殺し文句」

研究主任が校長のビジョンを教職員が理解し、さらに保護者や地域コミュニティに広めるため、教頭が発する「殺し文句」には、以下のような言葉が考えられます。

①「あなたがその理念を広めなければ、学校全体がその方向に進むことはない!」
研究主任の役割の重要性を強調し、その行動が学校の方向性を決定づけることを再認識させるフレーズです。

②「あなたが校長の夢を信じて、全員を巻き込むことで、学校が一丸となるんだ!」
研究主任が校長のビジョンを教職員に広め、共感を得る役割を果たすことを強調し、その力を自覚させます。

③「あなたの言葉が全員の意識を変えるんだ。あなたが納得させることで、全員が動き出すよ!」
研究主任が教職員や地域を巻き込むためのコミュニケーション力に焦点を当て、その影響力を強調します。

④「あなたが橋渡しをすることで、校長の夢が現実になる!」
研究主任が校長と教職員・地域をつなぐ重要な役割を担っていることを伝え、責任感を与える言葉です。

⑤「あなたが本気で校長のビジョンを伝えることで、みんなが一つになるよ!」
研究主任が本気で校長の夢を広めることで、全員の意識を変え、共感を得られることを伝えるフレーズです。

これらのフレーズは、研究主任が校長のビジョンを広め、学校全体を巻き込むために自信を持って動き出すための強い動機付けとなります。

3 「例年どおり」が通じない時代に

近年、教育現場には多くの課題が浮上しています。教室内の児童が揃わない状況、流行り病等による児童の学び方の変化、そして一人一台のタブレット端末の導入といった新たな環境が進行中です。QRコードが付いた教科書が普及し、学習方法や教材の形態が大きく変わりつつあります。
さらに、若手教員の大量採用が進む一方で、教員不足も深刻化し、教育現場は多方面にわたって急速な変化を迎えています。
また、今後は授業時間がフレキシブルになることも想定され、これらは全て、まさに「パラダイムシフト」の時期であることを実感させます。

このような時期において、「昨年度と同じ」ような従来の方法で対応していては、学校運営は立ち行かなくなる危険性があります。普遍的な価値や大切な教育の本質をしっかりと守りながらも、現状の課題に対応した新たな教育課程の編成や、校内研究体制の見直しが急務となっています。
このような変革を進める上で特に重要なのは、ミドルリーダーの積極的な活躍です。彼らの力を引き出し、活性化させるためには、教頭のリーダーシップが欠かせません。教頭は、どのようにしてミドルリーダーたちを引き寄せ、モチベーションを高めていくかという点で、非常に重要な役割を果たします。

現在、教育現場におけるミッションマネジメントをどのように進めるかは、最も重要で緊急な課題の一つです。学校が効果的に変革を遂げるためには、リーダーシップを発揮するための明確な戦略と、柔軟かつ迅速な対応が求められます。今後の教育環境を支えるために、どのような方針で行動していくか、教育現場のリーダーとしての手腕が試される時期に差し掛かっています。

写真AC


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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