学習指導要領【わかる!教育ニュース #60】

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中澤記者の「わかる!教育ニュース」
#60 わかる!教育ニュース
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先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第60回のテーマは「学習指導要領」です。

文部科学省は新しい学習指導要領を2030年度から実施する考え

2024年12月25日の中央教育審議会の総会で、次期学習指導要領についての諮問があり、本格的な議論が始まることになりました(参照データ)。学ぶ内容を定めており、教科書や教育課程の基になる、指導要領。文部科学省は26年度中にも答申を受けて新しい指導要領を定め、30年度から実施する考えです。どんな学びが構想されていくのでしょうか。

「これからの我が国を担う子供たちは、激しい変化が止まることのない時代を生きる」。諮問ではまず、子供を巡る状況をそう表現しました。その上で、労働市場の変化、社会のグローバル化やデジタル化、技術の発展を踏まえ、自分で考えて変化を乗り切る力や、個々の可能性を開けるようにする重要性を説きました。

現状の課題も挙げています。不登校や外国籍など様々な個性や特性、背景をもつ子への対応、学んだ知識を現実と結び付けて理解できる子の少なさ、1人1台端末などデジタル学習基盤が効果的に活用しきれていないなどです。

審議事項でのポイントは学校裁量の拡大

そんな現状分析を踏まえて中教審に求めた審議事項でポイントになるのは、柔軟な教育課程に向けた学校裁量の拡大です。多様になった子供たちそれぞれに適した教材や学習方法を選べる環境づくりや、時間割や授業時間を弾力的に編成できる特例制度の活用促進について議論を求めました。1コマあたりの授業時間の見直しと、そこから生み出される「教師の余白」が、教育の質を上げる可能性も示唆しています。

学習内容や授業数を増やした近年の改訂からの、転換姿勢も明確にしました。今以上に増やさない前提で、年間の標準総授業数に関する議論を求めたのです。他にもデジタル化の進展を踏まえ、情報活用能力や情報モラルを高める方策について意見を促しました。

指導要領はどの学校でも一定水準の教育をするため、学校で教える最低限の内容や年間の授業数を定めたものです。国が子供たちに身に付けさせたい力を表しているとも言え、社会の変化を見据えてほぼ10年ごとに改めています。

「試案」としてつくられた1947年は「教員の手引き」でしたが、次の1958~60年改訂で、教える内容を示した「国の基準」になりました。その内容が増え、やがて詰め込み教育と批判が起きると、1977~78年でゆとり路線を掲げて「減らす改訂」に。すると今度は学力低下が叫ばれ、2008~09年改訂で「増やす改訂」に転じました。

そんな変遷から、「詰め込みか、ゆとりか」で語られがちな指導要領。ただ、現場の考えが入る隙のない、過密で画一的な「基準」では、教員の工夫や思いが生きる授業ができない上、「基準」に添えない子は取り残されてしまいます。

今回の審議では、学ぶ当事者である子供への聞き取りを初めて行います。その意見がどう反映され、大人があれこれ言い合って決めた従来の改訂とどんな違いが出るか、見定めたいところです。

【わかる! 教育ニュース】次回は、1月30日公開予定です。

執筆/東京新聞記者・中澤佳子

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