「リフレーミング」で教職ライフをポジティブ変換しよう~職員室や教室を笑顔にし、なにより自分が楽になれます~

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

学校現場は、日々の忙しさやストレスの中で多くの困難と向き合わなければならない場所です。ときには、問題を解決しようと努力しても、ネガティブな感情や固定観念にとらわれてしまうことも多くあります。そんな時こそ活用したいのが、「リフレーミング」の考え方です。職員室全体で取り組むと一層効果があがります。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

1 リフレーミングとは?

教務主任のUせんせいは、いつも明朗快活で、ポジティブ思考で行動していました。
Uせんせいの勤務校では、保護者対応や危機管理などで、常に大きな事案が発生していましたが、Uせんせいの一言によって、皆がその問題に正対する気持ちになり、進んで助けの手をさしのべようとしていました。U先生の周りには常に笑顔があり、温かなエネルギーが感じられました。
当時の校長も毎日明るくてエネルギーが沸いてくる! と言い、わたしもその中でとてもいい仕事をすることができました。
当時、このUせんせいの力は一体何なんだろうと思いましたが、あとで「リフレーミング」の考え方だということに気づきました。
「リフレーミング」とは、物事を異なる視点から捉え直し、ポジティブな方向へ考え方を転換する手法を指します。この技法はもともと家族療法の中で確立され、家族間での悪循環を変えるために利用されてきました。学校という「小さな社会」においても、同様に有効な考え方として注目されています。
わたしが経験したリフレーミングを通じて「教職ライフをより楽に、より豊かにする方法」を探ってみます。どのように日々の課題をポジティブに変換できるのかです。

教育現場でのリフレーミング活用例

教育の場面では、こんなリフレーミングができます。

⑴ 生徒指導の場面

児童の行動を前向きに捉えることで、指導が円滑になります。

「児童の反抗」➡︎「自立心の表れ」
「成績が伸び悩む」➡︎「新しい指導法を試す機会」
「問題行動」➡︎「指導の必要性の発見」
「遅刻」➡︎「生活背景を知る機会」

⑵ 保護者対応の場面

保護者とのやり取りも、信頼関係を築くチャンスに変えられます。

「クレームを受ける」➡︎「改善点を見つける機会」
「保護者が協力的でなかった」➡︎「自力での解決力を養うチャンス」
「保護者との対立」➡︎「パートナーシップ構築の機会」

⑶ 授業運営の場面

授業での失敗や課題を次回の改善材料として活用しましょう。

「授業が時間内に終わらない」➡︎「時間配分を改善する機会」
「失敗した授業」➡︎「次の機会のための学び」
「児童の無関心」➡︎「授業改善の余地」
「授業準備に追われた」➡︎「 効率的な時間管理の必要性」

⑷ 職場環境、同僚との関係の改善

職員間の連携や職場環境の整備も、リフレーミングの力を借りて改善できます。

「役割分担が不明確」➡︎「チームの連携を強化するきっかけ」
「意見の違い」➡︎「多様な視点を持つ機会」
「摩擦が生じた」➡︎「意見交換の場に」
「関係がぎくしゃくした」➡︎「人間関係の再構築」

⑸ 個人の成長と健康管理の場面

自身の課題や健康管理も、成長の糧としてとらえられます。

「忙しさに押しつぶされる」➡︎「充実した日々の証拠」
「ストレス」➡︎「成長の機会」
「自信を失った」➡︎「新しい挑戦の機会」
「プレッシャー」➡︎「自己成長の促進」
「体調を崩した」➡︎「健康管理の重要性を再確認」

⑹ 時間管理の課題の場面

時間の制約に悩まず、効率化や優先順位の見直しのチャンスに変えていきます。

「時間が足りない」➡︎「効率の見直し」
「時間の制約」➡︎「優先順位の見直し」
「児童と話す時間が短かった」➡︎「時間の使い方の見直し」
「スケジュールが詰まっていた」➡︎「タスクの整理整頓」

⑺ その他の転換機会

困難や予期せぬ出来事を受け入れ、柔軟な対応力を育むことが成長の鍵となります。

「厳しい批判を受けた」➡︎「改善のヒントを得る機会」
「提案が通らなかった」➡︎「他の方法を模索する機会」
「結果にこだわること」➡︎「過程を楽しむこと」
「感謝されなかった」➡︎「無償の愛を学ぶ機会」

リフレーミングの思考法

リフレーミングを実践する具体的な方法を5つの観点からみていきます。

⑴ 考え方を変える

物事のとらえ方をほんの少し変えるだけで、大きな違いが生まれます。

「大変だ」➡︎「成長のチャンス」
「失敗」➡︎「学びの機会」
「ストレス」➡︎「課題解決のきっかけ」
「孤独感」➡︎「仲間とのつながり」

⑵ 感情を変える

感情をコントロールすることで、冷静な判断や余裕が生まれます。

「怒り」➡︎「冷静さ」
「不安」➡︎「期待感」
「悲しみ」➡︎「感謝の気持ち」

⑶ 行動を変える

行動を見直すことで、効率的かつ建設的な結果を得られます。

「残業」「居残り仕事」➡︎「効率化」
「文句」➡︎「提案」
「逃避」➡︎「向き合う」

⑷ 環境を変える

物理的な環境を整えることで、働きやすい空間を作り出します。

「暗い部屋」➡︎「明るい部屋」
「雑多な机」➡︎「整理された机」

⑸ 人間関係を変える

相手の立場に立ったり、多様性を受け入れることで信頼関係を築きます。

「批判」➡︎「共感」
「競争」➡︎「協力」

このような心の持ち方をすることで教職ライフが少しずつ変わってきます!

リフレーミングのメリット

リフレーミングは、物事を違った視点から捉え直すことで、単に「気分を良くする」だけに留まらない、実生活に役立つ多くのメリットを持っていると言えるでしょう。

⑴ ピンチや変化に強くなる!

リフレーミングを活用することで、困難な状況や予期せぬ変化を「乗り越えるべき挑戦」や「成長のチャンス」として捉えられるようになります。このような捉え方は、以下のような実用的な効果をもたらします:

① 問題解決能力の向上
学校で起きるさまざまな困難や課題を冷静かつ前向きに分析し、新たな解決策を見つける力が養われます。

② 行動力の強化
自信を持って行動できるようになり、逆境にも積極的に取り組む姿勢が身に付きます。

③ 柔軟性の向上
物事に対する見方が多面的になることで、変化にも柔軟に対応できるようになります。

⑵ 心の安定と人間関係を改善する!

リフレーミングは自分の気持ちを前向きにするだけでなく、そのポジティブなエネルギーが周囲にも良い影響を与えます。これにより、以下のような効果が期待できます。

① 自己肯定感の向上
自分の価値や能力を再評価でき、心の安定が保たれます。「わたしも教員という職をやっていていいんだ!」と思うようになります。

② 他者への共感力の強化
ポジティブな姿勢は、他者つまり同僚や児童、あるいは保護者への理解や思いやりを深め、コミュニケーションを円滑にします。

③ 信頼関係の構築
同僚や保護者など周囲からの信頼を得ることで、より良い人間関係が築かれます。

⑶ 生きるのが楽になる!

ストレスやプレッシャーを抱える状況でも、リフレーミングを活用することで心に余裕を持てるようになります。生活の質の向上につながります:

① ストレスの軽減
困難をチャンスとして捉えることで、精神的負担が軽減されます。

② 目標の明確化
ネガティブな感情を和らげることで、本当に大切なことに集中できるようになります。

③ 日常生活の充実
気持ちにゆとりが生まれることで、小さな幸せや達成感を実感しやすくなります。

リフレーミングは、物事の捉え方を変えるだけで、教職ライフだけでなく人生そのものにに大きな影響を与えるパワフルな技法です。どんな状況でも「新しい視点」を探し出す練習をすることで、自分自身の感情や行動をよりポジティブに導く力を持っています。この小さな変化が教職ライフ全体を豊かにし、最終的には児童や同僚にも良い影響をもたらします。これが職員室全体で実施できるようになれば、効果倍増です。学校全体が、暖かい空気で満ち溢れるでしょう。

イラスト/イラストAC


山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。


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