冬休みに入ったら!3学期リスタートで失敗しない「年内準備」完全ガイド

連載
学級経営「失敗しない」完全ガイドシリーズ
関連タグ

埼玉県公立小学校教諭

紺野 悟

2学期が終わり、ホッと一息つきたい冬休み。しかし3学期の準備もしっかりしないと……。そんなジレンマを抱える先生方に向けて、埼玉県公立小学校の紺野悟先生が「緩やかで確かな準備」のコツを伝授します! 「明日はこのリュックさえ持っていけば大丈夫!」と安心して過ごせる3学期初日の準備術や、電車の中や待ち合わせまでの隙間時間を活用した「準備の準備」のアイデアなど、リフレッシュしながらも着実に新学期を迎えるための工夫が満載。心に余裕を持って3学期をスタートさせるための、実践的なガイドをお届けします!

執筆/埼玉県公立小学校教諭・紺野悟

年明けの新学期を穏やかに迎えるために

いよいよ冬休みになりました。長い2学期が終わり、少し仕事のことを考えないで過ごすことのできる貴重な期間です。

年末は地元に帰省して懐かしい友人と再会したり、初売りに行って新しい服を買ったり、遠くまで旅行に出かけたりと、普段はできないことができる時期です。夏休みは研修や会議があるので、実質休むことができる期間は冬休みの方が長いという人もいるかもしれません。一方、出勤日がなく、すぐに始業式を迎える学校もあります。ですから、仕事から一度離れて、リフレッシュの時間を過ごしつつも、着実に準備をしておくことが大切です。そうすることで、3学期が始まるにあたって、気持ちに余裕がある状態で始められます。

そのために早めにやっておきたい大切なことは、以下の3つです。

① 3学期初日の準備を詳細に書いておく。
② スキマにできることをリストアップしておく。
③ 出先でもできることはスマートフォンで行う。

これらを行いながら、ゆっくりしつつも、確かな準備をして新学期も穏やかに楽しい日々にしていきましょう。

早めに3学期1日目の想定をしておこう!

3学期の準備を進めていく際に、詳細に準備しておく必要のあるものは、3学期1日目の流れです。もし、忙しくて他のことができなかったとしても、最低でも1日目の流れだけは準備しておきましょう。その理由は次の3つです。

冬休み中に仕事モードに切り替えて考えるのは大変だから。

2学期の終わりに考えておけば、子供の顔が浮かびやすいから。

「この流れで進めれば初日は大丈夫」と心理的に余裕が生まれるから。

もう冬休みモードになっている人も大丈夫です。遅くても12月中に準備をしておきましょう。それだけでも気持ちの余裕が生まれますから。

「どうやって新学期初日を過ごそうか?」と考える際に、私の場合、様々な書籍や過去に使ったスライドに目を通すことから始めます。そこで様々なネタや方法などの「やり方」と出合います。そして、それに対する目的や意義など「考え方」と往還させます。さらに、今担任している学級の実態という条件と照らし合わせて、何をするか(やり方)、何のために行うか(考え方)を見出していきます。

*「やり方」「考え方」については、詳しくは阿部隆幸著『「学び合い」が機能する学級経営』(学事出版、2015年)をご覧ください。

じっくり時間をかけて考えるので、それなりにまとまった時間が必要です。ですが、紅白を見て、箱根駅伝に盛り上がり、東京ドームでプロレスを見た後に、「よし考えるか!!」となると、どうしても「やらなきゃいけない感」「やりたくないのにやらないと……」といった感覚になります。それよりも、終業式が終わってできるだけ早い段階で、「今の学級の状態なら3学期はどうやって始めようか?」と考えて始めれば、つながりの中で心理的な負担感を軽減させることができます。

紅白を見て、箱根駅伝に盛り上がり、東京ドームでプロレスを見た後に、コーヒーでも飲みながらそのノートを見返す。年末年始に参加したセミナーや書籍で得たエッセンスを取り入れて修正して、よりよくしようとする心持ちで取り組めるのではないでしょうか。まさに、「明日はこのリュックさえ持っていけば大丈夫!」というような、安心感が得られます。つまり、早めの準備が自分の気持ちを上向きにしてくれるのだと思います。

スキマ時間に「準備の準備」をしておく

冬休みは、夏休みと比べて出勤日が少ないのが特徴です。忘年会をしたり、新年会をしたり、楽しい時間がたくさん待っています。そんな中で結局何もできなくて不安になるなら、スキマ時間にちょっとだけ準備をすると良いでしょう。準備の準備です。

電車移動の途中、待っている最中、そういった小さな5分~10分で、できることをリストアップしておくのです。あれもやろう、これもやろうと考えても、案外できないかもしれません。できることはそんな多くはなくて、こんなことです。

  • 「みんなの教育技術」で次の単元の例を読む。
  • 動画資料を見る。
  • 手帳に予定を書き込む。
  • 学習指導要領を読む。
  • 本を読む。

何より「ちょっと」がポイントです。「時間があれば、こんなことをしておこう」というものをぜひリストアップしてみましょう。例えば僕の場合、冬休みにできたらいいなと思うちょっとしたことリストは、下記のような感じです。

  • キャッチバレーの慣れの運動を考える。
  • キャッチバレーのルールを考える。
  • ありの行列を読む。
  • モチモチの木を読む。

私の担任する3年生では、1月に「キャッチバレー」の単元が予定されています。この単元は、バレーボールではなくキャッチバレーボールです。「どんな内容でやれば学級のみんなが楽しく、技能を身に付けていけるのか。考えておこう」これが、私が時間があったらやろうと思っていることです。

「みんなの教育技術」の記事や文部科学省などの実技動画で見る

まずは「キャッチバレー」がどんな運動なのか理解しなくてはなりません。そこで「みんなの教育技術」の記事を読んだり、文部科学省の動画を視聴して、キャッチバレーがどのような運動なのかを理解します。わからないなら調べる、勉強するしかありません。

気づいたことをメモする

記事や映像からわかったことを書き出します。スマートフォンのメモに、こんな感じで書き出していきます。

  • ラリーが続くことで面白さを感じられる。
  • まず、ラリーが続くことを目的にして、最後にそれを手段にしてゲームするとよいかも。
  • 基本の動き(アタック、キャッチ)を習得するのは、練習する時間が必要。
  • これができるとラリーが続いたり、ゲームが行えるようになるだろう。
  • バレーボールのレシーブをキャッチに変えることで続けやすくなる。
  • テンポよくできるようにするには人数を調整したり、コートの広さを調整する。
  • ボールを変える、風船バレーなどの遊びから学習に入ることも効果的である。
  • ルールを考えてアレンジしたゲームを行いたい。

メモを書いたら、キャッチバレーの基本的なルールを考えたり、授業の進め方を具体的にイメージしたりします。ここまでをスマートフォンを使って電車の中で行います。

③慣れの運動でアンテナを立てる

「慣れの運動」とは、主運動につながる動きを毎時間10分程度取り組み、技能を習得していくためのドリル型の運動です。この活動を毎時間続けていくことで、技能が向上しゲームが楽しくなっていきます。

新学期の準備も同じです。例えば、先ほど紹介した「みんなの教育技術」の記事にもいろいろなアイディアが掲載されています。年末年始のテレビ特番で行っているアクティビティにヒントがあることもあります。こうしたアイディアにヒットするかどうかは、休み中でもアンテナが立っているかどうかです。

④学習指導要領を読む

学習指導要領解説を読んで、該当する項目を読んで、学習すべき内容を確認することも可能です。体育なら、指導要領を読めば、どういう運動を行い、どんな知識・技能を身に着け、どんなことを考えて取り組めばいいのかイメージがわいてきます。難しい言葉で書かれていますが、よく読めば内容を理解することは容易です。

⑤読書で本質を学ぶ

本質的なことを改めてじっくり考える時間がとれるのも冬休みだからこそです。冬休み中にじっくり本と向き合ってみる。考えをノートに書き記してみる。そういう時間は、直接的な影響は見えなくても必ずあなたの教育活動にプラスの作用をもたらしてくれます。

学級メンテナンスを見据えた振り返り

学級を見返して、大きく修正したり取り組みを加えたりするのは、冬休み明けの時期が最後のチャンスです。大きく修正する必要がそもそもあるということは、よっぽど学級がうまく機能していない状態ですが、微調整をしてメンテナンスをする程度はどの学級でも必要な場合があります。

日々、小さな修正や調整を加えながら進んできた今、一度立ち止まって冬休みのうちに振り返ってみましょう。記憶が新しいうちにできたらよいので、できるだけ早めに行っておくことが良いと思います。隙間時間に行うというより、まとまった時間に落ち着いて振り返った方が見えてくることがあります。可能なら同僚やサークルの仲間と一緒に振り返ってみると、気づきが多くあるはずです。

例えば、以下のようなポイントで振り返ってみましょう。

【振り返りの視点】
● 朝の準備は時間内にできていますか?
● 朝の準備が遅い子はなぜ遅いのでしょう?
● 給食の準備は何分かかりますか?
● 歯磨きなどしていない児童はいますか?
● 忘れ物は誰が、何を忘れそうですか?
● 授業中の様子はどんな様子?
● 専科の先生の授業とはどう違う?
● 伸びたと思えるところは?
● 時間に関すること
● 人間関係

3学期の初めは、4月のスタートの頃と同じようにとまではいかないまでも、新年を迎えたことも相まって、もう一度学級で始めていこう!という気持ちになります。だからこそ、2学期での学級の1日をよく振り返り、修正すべきところを見つけておけば、年明けにすぐ修正することができます。給食当番や掃除当番の見直しを行うのであれば、ちょうど良いタイミングでもあります。

良い冬休みにしましょう!

さて、冬休み。良い冬休みってどんな冬休みなのでしょうか?

ここまで大変だった。やっとここまで来た。本当につらかったという先生にとっては、一度忘れることが吉。ここに書いたことを全員がやる必要はありません。みなさんのメンタル状態、気持ちを大切に過ごしてください。

私みたいに準備しておくことで安心できる先生、私みたいに前もって行うことがなかなかできなくて、あとで大変になって困っている先生方、私みたいに冬休みに遊びすぎて仕事に気持ちを戻すのが苦労した経験がある方にとって、この記事が少しでも助けになれれば幸いです。

では、良い冬休みを、みなさんお過ごしください。


執筆者:紺野悟(こんの・さとる)
埼玉の教育サークル clover 代表。イベントを数多く企画・運営し、価値ある教育情報を広めている。共著『全単元・全時間の流れが一目でわかる!社会科 6 年 365 日の板書型指導案』(明治図書出版)他多数。

大好評! 紺野悟先生の『完全シリーズ』はこちらからご覧ください。
●失敗しない新学年スタート「1日目」の完全シナリオ《1時間目》
●失敗しない新学年スタート「1日目」の完全シナリオ《2時間目》
●失敗しない新学年スタート「1日目」の完全シナリオ《3時間目》
●先生のための失敗しない「1回目の授業参観」完全ガイド
先生のための失敗しない「学級懇談会」完全ガイド

●山場の「魔の6月」を乗り越える!学級メンテナンスの手立て完全ガイド
●夏休み直前! 失敗しない1学期「学級納め」完全ガイド
●夏休み明け!2学期リスタートで失敗しない「事前準備」完全ガイド
●夏休み明け!失敗しない2学期リスタート「一日目」完全ガイド
●失敗しない!10月「折り返し地点」の学級経営完全ガイド
●冬休みまであと一歩! 失敗しない12月の学級経営3つのポイント

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
学級経営「失敗しない」完全ガイドシリーズ
関連タグ

学級経営の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました